時を少し遡って宿に向かう車の中…
──まずは部屋だよな……
と、ハンドルを握りながら錆兎は少し考え込むように眉を寄せていた。
その様子に小さくため息を漏らして
──聞いてるか?杏寿郎
と漏らす錆兎に、杏寿郎は別に意識をしているわけではなく素で圧のある目をガッと見開いたまま、
──聞いてはいないなっ!考えるのは君の仕事だろうっ!方針が決まったら教えてくれっ!
と、丸投げする気が満々なのを隠すこともなくそう言うと、饅頭を口に放り込んだ。
それにまた大きくため息をつく錆兎。
そしていつもそうであるように、相方が聞いていようが聞いていまいがお構いなしに、自分の脳内をまとめるために考えを口にする。
「今回の宿は二人一部屋らしい。
だから俺達二人がそれぞれ被害者と加害者と同室になれればいいんだが…。
どちらが…と言えば、センシティブなんだろう被害者をなるべく気遣うという意味で、被害者側には俺が、とにかく相手が傷つこうがなんだろうが止められればいい加害者側には勢いで押し切れるお前が理想だな」
そう言う錆兎の言葉を一応聞いてはいたらしい。
「わかったっ!それでは部屋割りはくじ引きか何かで決めさせようっ!
細かいやり方は君に任せるっ!」
と、杏寿郎はそこでいきなり口をはさんだ。
「…幹事でもないのにどうやって?」
一見むちゃくちゃなことを言っているように思える杏寿郎の言葉に、しかし錆兎は驚きも戸惑う様子も見せることはない。
素朴な疑問…と言う風に、淡々と質問を返した。
「うむっ! 今の時点で部屋割りが発表されていないと言うことは、これから変更も可能だろう!
それならそのあたりは勢いで押し切るっ!
それは俺の方が適任だろうから任せろっ!
もちろん後押しは入れてくれるとありがたいが…」
「了解した」
幼馴染だけに相手が出来ること出来ないことの把握は限りなく正確に出来ていると自負する錆兎は、杏寿郎ならやるのだろうとそれ以上色々聞くこともなく、その案をそのまま受け入れる。
そうと決まればあとは部屋割りのくじ引きの細工を考えるだけだが、まあそれはなんとでもなるだろう。
ということで、二人の最終打ち合わせはそうして
「「まあ俺達二人が本気になれば不可能なことはないなっ」」
の一言で終了したのである。
大丈夫でしたか?続きは楽しみですが、無理なさらず、お大事になさってください。
返信削除お気遣いありがとうございます😊
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