「いらっしゃいませ」
バスから降りると宿の女将や中居さん達ににこやかに迎えられる。
風情があってとても良い宿で、お着き菓子から始まって夕食、朝食に至るまで、とにかく出てくる食べ物が美味いのがお気に入りだ。
旅館は貸切でチェックインは14時。
参加者の集合時間は15時。
現地集合なので錆兎と共に前日から現地入りした杏寿郎は二人で色々準備をする。
介入するからには何か攻撃が向けられるとしても相手は義勇ではなく自分達に向くように。
しかし身近で攻撃が行われるのも気持ちの良いものではないだろうから、出来れば不死川には気づかれることなく、そっと義勇を隔離したい。
元々杏寿郎と錆兎は杏寿郎の父である槇寿郎が休日だけ営んでいる剣道の道場の兄弟弟子で幼馴染。
そしてその槇寿郎の剣道の師匠は、リタイア後の現在はここ、信州に居を構える錆兎の祖父である鱗滝左近次という間柄だ。
そんなわけで二人は小学生の頃からよく信州の錆兎の祖父の家に遊びに来ていたし、かつて知ったる土地ということで、色々地元民ならではの計画と言うのを練っておく。
そうして準備万端で迎えた当日。
二人揃って錆兎の車で旅館入り。
──さあ、作戦決行だなっ!
──おう!!
と、互いの手をパンっ!と鳴らすと、筋肉と正義をこよなく愛する脳筋達は笑顔で旅館へと足を踏み入れたのだった。
集合が15時だったのでその10分前。
当日入りしていた人間がほとんどで、そのためか皆少し早めに到着していたらしく、二人が着いた時にはほぼ集まっていた。
(…不死川もいるな…)
(…ああ、幹事の宇髄と一緒に来たんだろ。となると結構早めに着いてたんじゃないか?)
(…冨岡は…まだだなっ)
(…もしかしたら俺達と同様に前日入り組かもしれないぞ?)
普段はどでかい声の二人だが、必要となれば当然小声で話すことだってできる。
というか、普段の音量が音量なので、小声で話していると本当に気づかれない。
それをいいことに二人してまるで獲物を狙う肉食獣のような目で、しかし口元には笑みを浮かべながら状況把握に努めていた。
(…そろそろ5分前だが…)
(…来たっ!)
腕時計をチェックする杏寿郎。
錆兎の方はその間も玄関に注意を向けていて、元々大人しくて目立たないというのもあるのだろうが、あるいは意識的に気配を消しているのでは?と思わないでもないほど静かに義勇が旅館内に入ってきたのに気づいて、杏寿郎に告げた。
更新ありがとうございます😊
返信削除首を長くして待っていました🎶
脳筋コンビがどの様に義勇さんを捕獲するのか、
今後の展開がとても楽しみです(^o^)
読んでいただいてありがとうございます。
削除力と技と勢いの脳筋コンビが突っ走るのにこれからもお付き合い頂けると嬉しいです😄