──善逸の実家を潰すのは避けたいところじゃなぁ…
次の日、学園を休んだ不死川が一足先に入手してきた映像を見終わってため息交じりに呟く桑島老。
だからむしろ協力した特権で他に出回る前に映像を入手出来たことは特別に報酬を出してもいいくらいの快挙だ。
自分の事なら後輩のためにやった事だと断るところだが、田舎で不自由をさせている家族を思えば不死川もそれを断るという選択肢はない。
謝礼としてかなりの額を受け取り、それはしかしそのまま全部家族へと送る。
そんな家族思いの不死川の行動に、桑島老も自身の育て子を託すのに信頼に値する人物だと言う気持ちを強くした。
なので、そのまま報告だけ受けて即返すことはなく、その後の対応まで相談をしている。
JSコーポレーションに依頼したのは善逸の父親の実家であるのはもうこれが各所に出回れば隠しようのない事実で、たとえ大財閥と言えど世界中の要人となっている藤襲のOB達を敵対されれば潰されるのは避けられない。
では流すのを待ってくれと頼むかというと、それも無理だ。
銀狼寮の錆兎個人は了承してくれるかもしれないが、協力者の一人が学園の創始者の跡取りである無一郎で、彼の目的はJSコーポレーションの依頼を受けて学園に実行犯を送りこむことに協力した、最終的に学園の乗っ取りを企んでいる理事をあぶりだすことである。
全世界がそれに協力してくれるであろうこの機会を逃すとは考えられず、不死川と無一郎という同じ立場の協力者の利害が違う場合、理は無一郎側にある以上、錆兎が不死川を優先するということはありえない。
唯一…善逸の実家を残す方法があるとすれば現在の同家の当主である善逸の亡き実父の正妻の息子と中枢を担う側近達を退陣させて彼らとは全く違う人間…つまり善逸を当主につけることくらいだが、善逸の養い親である桑島がそれを提案したとしても、彼らは受け入れはしないだろう。
そもそもが優しく育ち過ぎた善逸が今回のことが実は自分の殺害のために親族が起こした騒動だと知れば、実家を潰すことを避けて自分が継ぐということを潔しとはしないということは想像に難くない。
それどころか下手をすれば自分の親族なのだから自分も学園をやめて連座して謝罪すると言いかねない気がする。
難しい顔でつらつらとそんな言葉を零す桑島に、自分自身の働きについては褒められはしたものの、不死川もニコニコはしていられない。
確かに半年ばかりではあるが誰よりも近くで見て来た後輩は臆病だが本当に優しい性格で、自分が巨悪の組織の黒幕の一人の親族だと知れば親族だけを切るより連座コースだろうと思う。
あ~これマジ面倒くせぇっ…と、そちらが厄介すぎて幼馴染の裏切りや処分など諸々について落ち込む余裕もなかった。
というか、自分よりも遥かに金持ちで力もある桑島老ですら善逸の実家を救う手立てがみつからないと落ち込んでいるのを見ると、なんとなく自分も落ち着かない。
「…あ~……これ見たら皆マジで錆兎のこと拝むと思うんで…OB達に頭すげ変えて家を残すようにって説得は錆兎に頼めばいいんじゃねえかと思うんすけど?
善逸の実家の方も育ての親の桑島さんが説得したら利害あるってなるけど、錆兎ならねえから、あっちの家のトップとの交渉もどうせなら錆兎に。
でもって…善逸は錆兎んとこの姫君とマジ仲いいし、そっちの説得は銀狼姫で無問題じゃねえかと…」
と、提案してみると、桑島老は
「ほんっとに銀狼寮頼みな計画じゃのお」
と呆れた顔をするが、結局そうするのが一番色々の成功率が高いのは確かなので、
「わかった。
金も物品も人材も必要ならわしのほうで負担するし、今回協力してくれれば恩は必ず返すと言って依頼してくれるか?」
と、最終的にはGoサインを出した。
「わかった!じゃ、俺は戻るからっ!」
と、これから錆兎の説得が大変だと思いつつも、出来れば画像が世界に出回る前にそのあたりを了承してもらうべく、不死川は桑島の別宅を出て学園へと舞い戻る。
そうしてまず向かう先は銀狼寮……ではなく銀竜寮だった。
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久々の誤変換報告です_(^^;)ゞ「不死川に同行できる」→~どうこうできるor どうこう出来る...かと。お暇な時にご確認くださいませ(*ov.v)
返信削除ご報告ありがとうございます。
削除修正しました😊