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捕獲作戦－開始－公明正大脳筋コンビ乱入

不死川実弥の想い人、冨岡義勇はコミュ障である。

実弥達は入社3年組だが、彼はいつも一人でいて、小学校から何故か同じの不死川と宇髄以外、ほぼ話しかける相手もいない。

だから自由に同室者を選べということになったら、実弥以外に声をかける人間はいないだろう。

…そう思って、

「じゃ、全員揃ったとこで、部屋は勝手に二人組作って決めてくれや」

と宇髄が言ったところですぐ、

「冨岡ァ、てめえはどうせ一緒に泊まってくれる奴いねえだろ」

と言いつつ駆け寄っていった実弥だが、そこで

「いやだっ！宇髄がいい！」

といきなり義勇が宇髄にしがみついた。

へ？

と思うものの、確かに知り合いと言う意味では宇髄も実弥も義勇の中では同等くらいの古さと距離である。

それならキツイことばかり口にする実弥よりも時にはいじってくることもあるが本格的に傷つけるようなことはしない、時にはフォローの言葉すらいれてくれる宇髄の方と一緒に居たいと言われるのは、当たり前と言えば当たり前だ。

しかし仕方ないとはいえ、宇髄の方がいいと言われれば若干…いや、かなり傷つかないでもない。

だが、そこはそれでも宇髄は実弥の気持ちを知っているのだから、譲ってくれるだろう。

と、そう思って気を取り直したのだが、宇髄は困った顔をするばかりだ。

へ？？と不思議に思う実弥。

だが、あとでその理由を聞いてみれば納得である。

宇髄もまた冨岡義勇とは学生時代からの同級で、内向的で普段は主張しない義勇が宇髄と一緒の部屋が良いと主張するのを無下に断れば義勇がひどく傷つくのは目に見えている。

となれば、敢えて嫌だとも言えないのは当然だ。

そこで宇髄は、義勇がボッチだからではなく、自分が義勇好きだから同室になりたいのだと主張しろと視線で実弥をせっつくが、それが出来るなら暴力暴言を繰り返して義勇に避けられたりはしていない。

たらりたらりと額に汗をかく実弥と苦笑にだんだん苛つきが見え始める宇髄。

そんな風に固まった空気を動かしたのは、意外なあたりだった。

──部屋割りは自由ではなく、くじか何かで平等に決めた方が良くないかっ？！

と、カッと目を見開いてどでかい声で提案したのは企画営業部のエースの片割れ、煉獄杏寿郎だった。

え？？と思いがけないあたりからの思いがけない提案に動揺する宇髄。

そこで対応が一歩遅れたのがまずかった。

「…そうだな。この旅行は情報交換や普段交流のないあたりとの交流を深めるという意味もあるから、友人同士固まるより、なかなか話す機会のない辺りと同室になった方が有意義だろう」

と、煉獄の後押しをするのは、その企画営業部のエースのもう片方の片割れと言われている鱗滝錆兎。

二人揃っていつもニコニコ公明正大、人気者の脳筋コンビと言われている。

ぱあぁっ！と華と勢いのある二人がそう主張すれば、──それもそうだな…などと言う声があちらこちらから上がってくる。

もう空気は脳筋コンビの提案、くじ一色だ。

──いや、でもよォ…

と今更ながら異議を唱えかけた実弥は、

「なんだっ？！君は確か…不死川っ！そう！不死川実弥だなっ？！

それでっ？！君は冨岡が一人になるなら同室になってもいいということだったが、心配無用だっ！

友人が多かろうと少なかろうと、くじで必ず同室者は決まるからなっ！！

それとも君は冨岡が嫌だと言っても彼と同室になりたい何かがあるのかっ？！」

と、もう空気読む気どころか、空気を思い切り破って壊して踏みつけた上で作り上げたような発言を前に、

──いや…そういうわけじゃねえけど…

と、思い切り玉砕した。

マジかぁ…マジかよ…と、さすがに宇髄も笑顔がひきつる。

今はとりあえず義勇のことよりも、がっくりと肩を落とす実弥のフォローが先だろうと駆け寄って

（…まあ…同室になった奴には俺がお前と変わってやって欲しいって頼んでやるから…）

と、小声で言いつつ肩を叩くが、そこでさらに空気を読まない脳筋コンビの片割れ錆兎のどでかい声で紡がれる言葉…

「一応言っておくっ！クジにする以上、不正はなしだっ！

俺と杏寿郎が全員分公平になるようにくじを作るし、決まった部屋割りの交換は不可とするっ！」

うああぁぁ～～！！

とその言葉に頭を抱える宇髄。

なまじっか相手が人気者な脳筋コンビで、悪気も他意もかけらもない、あるのは公平さを愛する心と勢いだけなのがキツイ。

こうなったら幹事の宇髄も止められない。

下手に止めたら全員に勘繰られて、最悪の場合には不死川に忖度しようとしていることもバレかねない。

（…これは…あとはくじで当たるように神頼みしとけ…）

とお手上げとばかりに天井を仰ぐ宇髄に、がっくりと地面に視線を落とす不死川だった。

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