こうして無一郎が抜けて、義勇と善逸、そして炭治郎の4人でお茶会を再開する。
そうして20分ほど経った頃だろうか…。
「こんな時間に何の用事だったんだろうね?」
と、不安を隠せない様子の善逸。
普段なら若い女性教師が訪ねて来たなんてことになったら真っ先に飛び出していく善逸だが、今回は不穏なことばかりなのに加えて、こんな夜にいきなりということもあり、女性が来て嬉しいというよりも怖い。
金竜がリアル姫君戦争バリな事態になっていると言うこと、それに加勢するために金竜寮へと向かう際の銀狼寮の面々が学校イベント時など比べ物にならないほどにガチな武装をしていたことなど、自寮の出来事なら泣きわめいて布団にもぐりこんでいるところだ。
本当に…不穏な予感しかしない中でこの中で一番頼りになりそうな炭治郎に視線を向けると、炭治郎はそれほど不安を感じている様子もなく、
「もしかして…金竜の事とかだろうか?」
と首をかしげる。
しかしそれに対して善逸が
「いや、でもさ、彼女新人でしょ?
寮内で学生が揉めてるとかならもっとベテランが対応しない?」
と言うと
「それはそうだけど…じゃあさらに何かこんな時間に訪ねて来なければならない問題が起こったのかもしれないな」
と、恐ろしいことを普通に口にした。
「いやあぁぁ~!!!これ以上何が起こったって言うのっ?!」
と、そこでとうとう善逸は泣きだす。
「なんかあったかぁっ?!!」
と、その泣き声に部屋の外で待機していた不死川がドアを開けて飛び込んできた。
そうして部屋の中を見て状況を把握すると
「紛らわしい泣き方してんじゃねえっ!!」
と善逸に拳骨を落とす。
するとそれを見た炭治郎が
「自寮の姫君になんてことをするんだっ!!
それでも寮を代表する皇帝なんですかっ!!」
と怒りだしてあわや一触即発の状況に……
そこで善逸が今度は
「違うのっ!!
これは軽いコミュニケーションだからっ!!
不死川さんは心配してくれただけっ!!
ごめんねっ!紛らわしくてごめんねっ?!」
と慌ててその間に入って仲裁を試みる。
そして…一人そんな周りの様子も気にすることなく、
「う~ん…確かに普通に挨拶とか顔を見に来たとか言う時間ではないよね。
こんな時間に何をしに来たんだろう?
と飽くまでマイペースに口を開く義勇。
「あ~まあそのあたりは…無一郎が戻ってきたらわかるんだけどなァ、遅いな…」
と、とりあえず不死川は未だ義勇の性別を誤解していて最優先で守るべき存在と思っているだけに炭治郎の怒りよりもそちらを優先で、対する炭治郎もやはり自寮の姫君の気持ちが最優先なので矛を収める。
そして義勇は義勇で相変わらず錆兎以外のいかなる他人の都合も顧みることはない。
何か込み入った話なのだろうか…。
それなら余計に自分が直接聞くより自分よりは姫君としての判断基準がしっかりしている無一郎に任せて正解だったかもしれない。
そんなことを思いながらも、それぞれに減った皆のカップに紅茶を注ぎ足し、不死川の分も茶をいれようとするが、不死川はそっと自分の前に置かれたカップを手で塞いで
「サンキュー、姫さん。
だけど俺、ちょっと様子みてくるわ」
と言って席を立つ。
そうして不死川がひらひらと手を振りながら退室してさらに数分。
遠くはないあたりからいきなり絹を裂くような悲鳴が聞こえた。
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