寮生は姫君がお好き1023_身バレ確認

宇髄を寝室に残して錆兎は再度リビングへと戻ると、その場で待っていた自分以外の5人に事の次第を説明した。

「…ってことでな、小郎を切ることに賛同して引き込むかどうか、引き込むなら誰までなら顔晒して良いかの確認を早急に取りたい。
切るのに賛成な奴は?」
と挙手を求めれば、即手を挙げる他寮組の二人。

「お前らは反対か?」
と、理由はあとでと言いつつ挙手していないモブ三銃士に声をかけると、3人は口を揃えて
「俺らは皇帝の物語のモブなので、皇帝の意志が俺らの意志です。
だからもし皇帝が賛成なら賛成、反対なら反対と思って頂ければ幸いです」
と言う。

それに不死川が
「銀狼、もう羨ましいすぎるくらいには訓練されてねェ?
身内が一番信用できないうちの寮と交換して欲しいわ」
と、大げさな動作でため息をついた。

それには苦笑で応えながら、錆兎はとりあえず自分の判断材料としても知りたいから…と、賛成の3人にその判断の理由を求めた。

それに最初に答えたのは無一郎だ。

「悩むことなんてないんじゃない?
裏切る確率がある人間は排除できるならするのがリスク管理上理想だよ」

その言葉に実際にそれで苦労しているだけにうんうんと頷く不死川。

「俺的にはもうこれ以上いつ裏切るかわからねえ爆弾抱えるのは勘弁だァ。
そんなのうちの寮生だけで腹いっぱいすぎだろォ」

「あとは…リスク管理と言う意味では…排除できるのは理想なのはもちろんだけど、排除に失敗した際に先頭に立ったのが自分じゃないと言う形を取ることができるのはさらに理想だよね。
今回、その責任を銀虎が負ってくれるって言うなら、僕達はさらにリスク回避をできるからいいんじゃない?」
と、実に愛らしい笑顔で言い放つ無一郎。

見た目通りの愛らしいだけの姫君ではないことがすでにわかってはいるのだが、そのえげつないまでのシビアさに、うっわあぁぁ…とあとの5名がそれぞれ生温かい目で声をあげた。

「姫君の皮を被った軍師って感じ、マジやべえなッ!
もうリスペクトしかねえ」
と不死川が苦笑。

それにも無一郎は澄まして
「うちは村田が少し素直すぎるからね。
まあ今回に関しては協力してもらえる条件がそれだったって言えば、二正面戦になる確率が減って良いよね」
と真剣な顔で頷く。

「…というわけで、錆兎が反対でないなら、金竜の寮長排除は銀虎の寮長の判断で、それが銀虎が協力する条件で、僕達はそれを受け入れただけという形を崩さないということで受け入れても良いと思うよ。
今回のこれに対しては、うちは最初に村田が被害被っているし、うちは何かあると銀狼に逃げ込む弱小の寮だから、僕がここにいて諸々の相談をしているということまでなら宇髄さんに知られてもいいよ?
それ以上の僕個人のことに関してはもう少し時間が欲しいけど…」

最終的に無一郎がそう言えば、モブ三銃士も
「もちろん、俺達は銀狼の寮生で寮長に従うのは当然の立場なので、今回の作戦とのかかわりがあると名と顔を出されても、当たり前ですけど全く問題はありません!」
とピシっと手を挙げて言う。

そこで錆兎はそれに頷きつつ、視線は残った不死川へ。

「ということで、銀狼寮は寮を挙げて今回の争いに身を投じることになる。
当然寮としてだから、全員一蓮托生だ。
で?お前はどうする?
事情もあるだろうし、表立つのはまずいかもしれないが、全体に対してはおいておいて、宇髄には顔を明かすか明かさないか。
宇髄が信用できない、あるいはぎりぎりの保険をうっておきたいと言うなら別に明かさないという選択肢をしても、俺と銀狼寮が間に入る」

それに不死川は少し不安げに錆兎に視線を向けた。

そして
「錆兎からすると、宇髄は大丈夫そうかァ?
なんつ~か…この状況で錆兎が矢面に立つのに俺一人コソコソ逃げ隠れしてんのは卑怯だっていうのはわかってんだけどよ、俺は我妻守ってやんねえといけねえ立場だから、下手は打てねえ」
と吐き出すその言葉は、実に実直な不死川らしいなと錆兎は思わず笑みをこぼす。

そして、個人的見解だが…と前置きをしたうえで言った。

「宇髄は自寮の姫君に害を与えない限りは裏切らないと思う。
というか、陥れるとかそういう形でない限り、姫君自身も並の相手なら返り討ちにできるしな。
色々な意味で銀虎は余裕があるから変な方向に流されることはない。
宇髄個人に関しては良い意味でしたたかで策略家で…しかも自分の感情すら客観視するレベルの理性だから、誰かに操られる心配もないと思う。
少なくとも敵が学園の伝統を踏みにじって姫君に害を与える気も満々なのが確かな時点で敵側につくことはないし、じゃあ銀虎だけ特別に害を与えないからと言って味方に引き込もうとしても、そんな約束は信用できないってわかるくらいの知能はある。
さらに言うなら、姫君の煉獄自体が曲がった事の嫌いなやつだからな。
万が一があっても不正はゆるさんだろ」

「…つまり…信用できそうってことでいいかァ?」

「俺はそう思っている。
だが俺も神様ではないからな。
俺の判断を信じるかどうかはお前次第だ」

錆兎の言葉に不死川はふぅぅ~~…と彼にしては長い長いため息をついた。
そして顔をあげる。

「わかったっ。
俺の…っつ~か、我妻の事情も晒していい。
味方にすればすげえ強力なのは理解したし、なにより、味方を増やしていかねえと自寮に刺客がいんだから俺だけじゃどうにもならねえ」

…でも悪いがいざとなったらお前んとこの姫さんの次で良いから我妻のことも守ってやってくれェ、と、真剣な顔で付け足す不死川。

こうして全員一致で宇髄の条件を受け入れつつ彼に身バレすることを了承したところで、錆兎は再度寝室へと戻っていった。










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