──まあ僕は可愛い性格はしていないから、電話でも録音はしておくけどさ
と言いながら、無一郎が見せてくれたのは、たった今、柏木亜子から来たメールだった。
から始まるそのメールは、しかし謝罪と言うよりは非難の色の強いものだ。
『亜子がまだ学校に慣れていないからということで村田君が学食に案内してくれるって申し出てくれたから、つい厚意に甘えてしまいました。
でも、それが寮長さんが無条件に優しく優遇しなきゃいけないことになっている副寮長さんをそんなに怒らせることだって知らなかったの。
他の寮の寮長さんにまで苦情を言って怒りに来られるなんて本当に思っていなくて、そこまで副寮長さんのプライドを傷つけてしまったことは、申し訳なかったと思っています。
本当にごめんなさい。
村田君の善意の申し出に甘えてしまったことでいきなり錆兎君にすごく怒られてしまって、申し訳なさと怖さと…色々ショックで涙が止まりません…』
と、まあそんな文章が長々と続いているのだが、一通り斜め読みをして、錆兎は嫌そうに眉をしかめ、不死川はムッとしたように表情を険しくし、無一郎はと言うと呆れたように笑った。
「まあ…万が一他に見せた時に言い逃れができるように、遠回しには言ってるけど、ようは…勝手に村田を使ったことに対する謝罪にみせかけて、姫君だからって寮長を好きに使っていいなんて普通ないよね?我儘だよね?それで八つ当たりで他の寮長まで巻き込んで嫌がらせなんてされて、すごく傷つきましたって言うことだよね?」
と言いつつ、無一郎は念のため…とそれをモブ三銃士も含むその場にいる全員に転送する。
「それこそ洗脳されて頭がいっちゃってる状態じゃなきゃ、藤襲の学生ならこれがずいぶんと失礼で姫君に喧嘩売りまくっている性格の悪いメールだって思うだけなんだけど…。
うちの学園のシステム理解してないか、よほどの馬鹿かどっちだろう?」
にこやかに言う無一郎に、
「両方じゃね」
と不死川は答えると、念のため…と善逸にメールを送り始める。
「うちのは自己肯定感地の底まで低くてメンタル激弱だから、こんなメール来たら病みそうだしな。
柏木亜子が性格悪い馬鹿女で、現在薬も使って学生達を洗脳中で、さらにそのために学生の敬愛を集めている姫君達が邪魔だからって片っ端から喧嘩売るメール送ってるみてえだから、柏木からメール来ても開くな。開いて読んじまったとしても気にすんな。お前がどうこうという問題じゃねえからって送っておくわ。
まあ寝てるから見ねえだろうけど、もし目を覚ました時に柏木のメール見る前にフォローいれておいてやんねえとな」
と言う彼の言葉で、錆兎がガタっと立ち上がった。
「ちょっと義勇のとこに行ってくるっ!」
と、こちらは直接行った方が早いと他の返答も聞かずに部屋を飛び出していった。
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