学園警察S&G_第21章_今っ?!この場でっ?!

──これから既成事実を作るぞ!

………
………
………好きな子からそう言われた時のDKの正しい反応は?


錆兎は割合となんでも他人よりできるため緊急事態でも他人よりもずいぶんと色々に対応することができる。
だから慌てたりすることはあまり多くはないのだが、義勇に関しては本当に振り回されっぱなしだ…と、まずそんなことを思う。

何故いきなりそういう話になるのかが全く理解できない。
いや、義勇に関してはかなり理解できないこと驚かされることが多い。

確かに好きだとは言った。
先日の喧嘩の謝罪をまだしていなかったなと思って謝罪して、自分が成り行きで義勇と一緒に居るという勘違いを未だに完全に払しょくできていない義勇の考えを正し、一緒に居るのは好きだからなのだと、そんな流れの話だったはずである。

それが何故いきなり既成事実を作るという話に??
しかも…今?!
外で?!
犯人が来るかどうか見張っている最中に?!

どう考えても無理だろうと思うわけなのだが、変なところで悲観的なところのある義勇は変な応対をするとまた落ち込む気がする。

事態を把握するのにあまり待たせればまたそれはそれで落ち込むのでとりあえず、
「…気持ちはとても嬉しいし俺も異存はないんだが、今ここでというのは場所も場所だし時間もなくないか?」
と気持ち的には嬉しいが現実的ではないと打診してみる。

肯定から入ったのは結果的に正解だったのだろう。
実質、結論としては今ここでは無理だと言う否定なのだが、それによって落ち込みはしなかったらしい。
…というか、否定だと気づいていない可能性がある。

返ってきたのは大変無邪気な笑顔で
「大丈夫っ!すぐ済ませればいいっ!」
という言葉。

すぐ済ませる??
え?俺はそんなに早いと思われている?
いやいや、それ以前にここで??
誰がくるともわからない…というか、犯人がいつ来るかわからない状況で??

ああもうとりあえず犯人を含む他人が来るかもという不確定要素は置いておいたとしても、初めてなのにいきなり外の地面でするのか?

「…痛くないか?」
と思わず思いついたことが口から零れ出ると、義勇はやっぱり笑顔で
「大丈夫っ!痛くなんてしないからっ!」
と言った。

ここで錆兎の脳内はさらに混乱を極めた。

え?ええ??
痛くなんてしないって……
もしかして俺が下かっ?!!

いやいや、義勇だってこんなに可愛くても男なわけだし、そういうことをするとなったら上になりたいとか主導権を握りたいとかあるのかもしれないが……やっぱり俺は上がいい!!

そんな主張をどう伝えるべきか、錆兎はこれまでの人生でこれ以上なかったくらいに真剣に考え込んだ。

時間にすればほんの一瞬。
彼にしては他のことが目に入らないくらい真剣に……

………
………
ふにゅっ
………
………

気づけば義勇の愛らしい顔が目の前にあって、閉じた瞼を縁どる睫毛が同性とは思えないくらい豊かで長いな…と思った次の瞬間に、唇に柔らかいものが押し当てられた。

それでも唖然としていると、まるで幕があがるように長いまつげに縁どられたまぶたがあがり、そしてその下から綺麗に澄んだ青い目が現れる。

水面に吸い込まれるような錯覚に陥っている錆兎に
──神父様はいないけど…効力は同じだからね?誓いのキスをしたんだからもう錆兎は俺のだよ?
と、ひどく真剣な面持ちで言う義勇。

誓いの…キス??
あ~!!既成事実ってこのことなのかっ!!

わかると一気に力が抜けた。
そうか、そうだよな。
義勇だもんなっ。

肩の力を抜く錆兎に義勇は
「錆兎?えっと…これは急いでしないといけない契約みたいなものだからっ!
ちゃんとしたのはもっと雰囲気のあるところでするから大丈夫だよ?」
と何かまた…いや、今回は言わんとすることはわかるのだが、義勇らしい勘違いをしているらしい発言をして、錆兎はさらに力が抜けてしまった。

「うん、そうだな。
何か義勇が気に入るようなシチュ考えとくな」
と、なんだかがっかりしたような安心したようなそんな脱力した状態で言った錆兎は、しかし次の瞬間、ハッと緊張感を取り戻した。








0 件のコメント :

コメントを投稿