「ねえ…なんで俺まで巻き込まれてるのかな?」
カオスな空気とカオスな組合せに食堂中から注がれる視線に耐え切れず、寒いこの季節誰も使っていないテラスに陣取る4人。
そこで寒さにガタガタ震えながら村田が言うと、義勇と自分の隣の視線が鋭くなる。
まるで燃え上がる太陽のような熱さと凍りつくブリザードのような冷たさ…その対極にあるような二種類の視線に貫かれて、村田はプルプルと首を横に振った。
「…確かにここ今の季節は少し寒いよな…」
と、そこで救い舟のように義勇がつぶやくと、パサリと左右からその肩にかけられる2枚の上着。
「いや、別に我慢できないほどじゃない。
錆兎も宇髄も風邪ひくから自分の上着は着とけよ」
と、それに慌てて上着を返そうと肩口に伸ばそうとした手は、
「「いや、別に寒くないから、着とけ」」
と両方とも左右からつかまれ、テーブルに戻された。
こうして両手をとられたまま、隣に座る錆兎から口に運ばれる食べ物をひたすら咀嚼する義勇をよそに、昨日宇髄の部屋でされた事件についての義勇と宇髄のやりとりが錆兎と村田に話される。
事件のために来た錆兎と違い、村田には寝耳に水の話ばかりで、正直驚いた。
しかしそういわれてみれば、確かに不自然な事の多い事件なので納得する。
「つまりさ、未だに真犯人が校内にいるって事なわけね?」
自分で自分を抱きしめるように身を震わせる村田に、
「まあそういうことだな」
と、宇髄が淡々と答える。
「ちょっと…本当に勘弁してよ。
もしかしてまた毒盛られたりとかする可能性があるわけ?」
思わずスープを口に運びかけたスプーンを持つ手を止めて村田が言うと、
「原因…わかんねえし、犯人もわかんねえから、目立つとそういう事もあるかもな…」
と、宇髄は困ったように眉を寄せた。
「ね、もしかして今義勇の口に運ぶもの、錆兎が逐一味見してんのはそういうこと?」
と村田が指摘するように、錆兎は自分の皿の物をまず自分が味見してから義勇の口に放り込んでいる。
その言葉に対しては錆兎が
「当たり前だろう」
と大きくうなづいて肯定した。
当の義勇はそこまで考えてなかったのだろう、何か言おうと口を開きかけるが、そこにまた食べ物を放り込まれて咀嚼する。
しかし慌てて飲み込んでから、
「ちょっと待てっ!」
と、次を放り込もうとする錆兎の手を制して言った。
「それって俺の毒見なんてしてる場合じゃないだろ?
錆兎が危ないじゃないかっ!」
と訴える泣きそうな義勇に錆兎は笑って言った。
「大丈夫。もう犯人も手口もほぼ特定してる。
だから毒が混入している可能性は限りなく低い。
今こうしているのは念のためな?」
「「まじかっ?!!!」」
「ほんとにっ?!さすが錆兎っ!!」
宇髄と村田は驚いて身を乗り出し、義勇はと言うとキラキラした目を錆兎に向ける。
そんな風に3人に一斉に詰め寄られるが、錆兎は飽くまでマイペースに茶をすする。
そしてコトンと湯呑をテーブルに置いた。
「動機はわからない。現在残ってる証拠もない。だから立証に協力してもらえないか?」
にこりとそう言う錆兎に意義を唱えるなんて人間は当然ながらここにはいなかった。
誤変換報告です。「咀嚼」が2回とも「租借」になってますのでお時間のある時にご確認お願い致します^^;
返信削除ご報告ありがとうございます。
削除修正しました😃