学園警察S&G_第17章_色々解決?

「でも…義勇になにもなくて本当に良かった…」
と、そのあとホッとしたように漏らした言葉に、宇髄は改めて錆兎を観察した。

昨日遅くまで話していて寝不足で、さらに自室で着替えるため大急ぎで制服をはおって廊下に出たため義勇も大概ひどい格好だったかもしれないが、目の前の錆兎もそれに負けず劣らずだ。

目の下には隈。
寮中と言っていたがどこまで探し回ったのか、髪には蜘蛛の巣やらほこりやらがついている。
どれだけ必死に探したのかと思う。

「お前もシャワってくれば?髪とかすごいことになってるし」
と、宇髄が自分の髪をつんつん指差すと、錆兎は己の髪に手を当てて初めて蜘蛛の巣や埃に気づいたらしく、
「あ~、本当だな。こんなんで隣歩かれたら義勇も嫌だろうし」
と言って着替えを持って備え付けのシャワー室に急いだ。

身綺麗にする理由もそれかよ、と、呆れると同時に、昨日あれだけ見限られたと泣いていた義勇に教えてやりたいと思う。

こうして待つ事ほんの5分でシャワー室から出てくる錆兎。
早すぎだろっと思うものの、頭をタオルでガシガシ拭きながら出てきた時の第一声が

「義勇は?まだ来てないのか?」
だったので、なるほど、それで急いだのか、と納得した。

「あ~まだだけど…あのな」
「なんだ?」
「お前そこまで好きなら告白とかしねえの?」

もうしてやれよと思うわけだが、錆兎は当たり前に
「日々好きだとは言っているぞ?信じないだけで」
とどきっぱりと言った。

逆に言い過ぎてダメだったのか…と宇髄は肩を落とした。
そしてふと気づくと目の前の男もしょぼんと肩を落としている。

「義勇は俺があいつのために色々してやってきたと思っているから恩のようなものを感じているのだろうし、そういう状況で俺の方があまり強く出ると強制になりかねないから強くはでれないんだけどな」

そういう様子は最初の殺されるかと思ったような迫力は微塵もない。
叱られて途方にくれる小さな子どものようだ。

「それを強制と取るようなら…見限られたって泣かねえと思うけど?」
「そうだろうかっ?!」
「…と、俺は思う」

そんなやり取りをしていると、当の義勇が遠慮がちに部屋に入ってきた。

「宇髄…どこまで言ったんだ?」
と上目遣いに睨むのに、錆兎が隣で可愛い…と呟いている。
ああ、もうこいつには何をしても可愛いんだろうな、と、宇髄は内心ため息をついた。

「ああ、全部?
つか、見限るどころか熱烈に愛してる話とか、朝っぱらから聞いちまってんだけど?」
「あ、…愛してるって…宇髄いきなり告白されたのかっ?!」

「「ちっが~~~う!!!!!」」
と、そこには二人揃って突っ込みをいれ、そのあと錆兎がマシンガンのようにだ~っとしゃべりはじめる。

「なんで俺がこんな男に告白しなきゃならないんだっ!!
お前に決まっているだろっ、お前にっ!!
もう本当に本気にされてないみたいだけどなっ!
よほど好きじゃないと学校辞めてまでこの仕事につきあっていないだろうがっ!
昨日だってあれから即お前の部屋に謝ろうと思って行ったらお前が居なくて、寮中探し回ったんだぞっ!
本当によもや事件にでも巻き込まれたかとかめちゃくちゃ心配して、地下室から屋上まで、生徒が立ち入れる場所は全部探して回ったあげく、屋上のフェンス登って下に人落ちたりしてないだろうなとか、確かめてみたりとかする程度には、めいっぱい本当に死ぬほど心配したんだぞっ!!」

「………」
あまりの勢いに声も出せず、ただネコのような大きく丸い目を見開いたままの義勇の顔がさ~っと赤く染まっていく。

あ~人間てこんなに急に顔色変わるもんなんだなぁ…と、宇髄がしみじみ感心する程度には……。


「……錆兎…って……俺のこと本当に好きだったのか…?」

真っ赤になって震える声で言うのは確かにDKとは思えない可愛らしさだが、突っ込むところはそこからなのか?と、宇髄は指摘してみたくなる。

しかし突っ込まれた当人はとりあえずはそれも重要らしく、自分も赤くなりながらも
「当たり前だろうっ!そうでなきゃ今の状況はどう考えてもおかしいと思わないかっ?!
お前、俺のことどういう人間だと思っているんだ」
と、こちらはやや呆れたような声音。

もうなんというか…自分ここにいない方がいいんじゃないだろうか?という気分になってきたのだが、タイミングを逃して消えるに消えることが出来ず、宇髄まで複雑な表情に。

「………さびと……」
消え入りそうな声でそう言うと、そのまま羞恥で目を潤ませてうつむく義勇の様子に、色々いっぱいいっぱいになったらしい錆兎が、

「義勇、昨日はすまなかった。
でも本当に危ないから一人で出歩かないでくれ。
何かあれば真夜中でも連絡くれたら俺が出向くから…」
と、いきなり抱きしめる。

ああ…俺ホント消えたいんだけど?
と、だんだん死んだ魚の目になっていく宇髄。

そんなカオスな空気を破ったのは、軽いノックと共にいきなりドアを開けた一人の男だった。

「おっはよ~。結局どうだった…の…」
と、おそらく昨日のことを知っていたのだろう。
そう聞きかけて目の前で繰り広げられている光景に何か納得した村田。
そのままドアを閉めようとするその手を、宇髄が掴んだ。

「おま、逃げんなっ!!」
「え?俺は様子見に来ただけだよっ?!
知人のそういう風景を眺めるなんて趣味ないよ?!」
“みんなで”朝食だよなっ、ここはっ!!!」
「いやああぁああーーー!!!!」

そんなやりとりをしている二人に、またすごい勢いで抱きつぶされている義勇がワタワタと助けを求める。

「お~い!!だから加減してやれっ!!義勇が潰れるっ!!!」
と、そこで村田の腕は逃げられないように掴みながらも、宇髄は錆兎に声をかけた。
そこで錆兎が慌てて腕の力を少し緩める。
そうしてようやく呼吸が出来るようになった義勇は今度は懲りずに自分からぎゅうっと錆兎に抱き着き、カオスな空気のまま何故か4人で朝食のために食堂に向かうことに相成った。









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