学園警察S&G_第15章_翌朝の騒動

もう日もだいぶ明けて、そろそろ皆起きる時間になりそうだ。
呆然とドアの前で立ちすくんでいると、早起き組第一弾なのだろうか、少し離れたドアが開く音がする。

「ほら、とりあえず自分の部屋で着替えて来い」
という声は聞き覚えがある気がした。

確か…この声は……とぼ~っとしたままの視線をそちらに向ける。
そして一気に頭が真っ白になった。


力なく佇む自分より一回り細い人影。
錆兎が何より気に入っている大きく丸い目は泣き腫らしたように真っ赤で、いつもきちんと一部の乱れもなく着られている制服は、シャツのボタンがかろうじていくつか留められていて、だらしなくスラックスの外に裾が出ている。

「宇髄ぃぃ~~!!!!!」
何があったのか考えたくない。
だが湧き上がる怒りは紛れもなく何があったか想像できてしまったからで…

「うおぉっ!!!!!」
すさまじい形相で殴りかかってくる錆兎に気づいて、宇髄は慌ててそれを避けたが、勢いを殺すことなく突き出されたこぶしは、分厚い木のドアを叩き割った。

「ちょ、おまっ!何だよ、いきなりっ!!」
たった今自分が立っていた場所で自分の身代わりになってご臨終となったドアを横目に宇髄は冷や汗をかく。

「うるさいっ!!お前、、義勇に何したんだっ?!
絶対に許さんっ!!こいつに関してだけは絶対に許さんっ!!」
ギラギラとした目で睨み付けられて、殺気を放たれて、冷やりと冷たい汗が背中を伝う。

「あの…何の話してるんだ……」
その修羅場を前にしばし呆然としていた義勇が、そこでようやく我に返って声をかけると、錆兎は今度は義勇に視線を向けて、その腕を取るとグイっと引き寄せ胸元にその体を抱え込んだ。

「え?あのっ…?!錆兎っ?!!」
グイグイとすごい勢いで抱き寄せられてわたわたと動揺する義勇。

「俺がずっと一緒にいてやるからっ!こんなの気にするなっ!」
「…ちょっ……」
「義勇っ!!」
「……っ…」

「おい……」
どうやら自分から関心が逸れたと見て、ようやく落ち着いて状況把握が出来始めた宇髄は、錆兎の肩をトントンと叩いた。

「お前を殺すのはあとだっ!!今は義勇のフォローのほうが…」
「いや…もうちょっと力緩めてやれよ。窒息しかけてる……」
「あ、本当だっ!すまんっ義勇。大丈夫かっ?!」
その言葉にふと気づくと、義勇が真っ赤な顔で力なくぐったりしている。
そこで錆兎が少し腕の力を緩めると、義勇はそれまで吸えなかった空気を取り込もうと大きく呼吸を繰り返した。

「本当にすまんっ!大丈夫か?」
錆兎はおろおろと義勇の顔を覗き込む。

その様子を見て、
「お前らさ…なんかお互いを誤解してね?」
と宇髄が呆れたように大きく息を吐き出した。

「とりあえず義勇はシャワー浴びて着替えて来い。
なんかすげえ顔してっし。
んで、その間、こいつには俺が色々説明しとくから。な?」
言われて義勇は一瞬迷うが、宇髄が
「安心しろ。悪いようにはしねえよ」
と、にかっと笑うと、こっくりとうなづいて自室へと戻っていった。

パタンと閉まるドア。

「さて…と、俺の部屋でもいいんだけど、おかげさまでドアがご臨終だし?
お前の部屋でいいか?」
と、ここでさすがに何か思っていたのと違うとわかってもらえたらしいので宇髄がそう提案すると、錆兎は決まり悪げにうなづいて、自分の部屋へと宇髄をうながした。











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