学園警察S&G_第13章_宇髄、詳細を語る

「よし。じゃ、そういうことで、何が聞きてえんだ?」
なんでも好き勝手させてくれるようでいて、自分的一線は絶対に譲らない、宇髄はそういう男のようだ。

それはもう割り切るしか無いだろう。いつまでも拗ねていても仕方ない。
義勇は頭をそう切り替えて、少し脳内の考えをまとめ始めた。

「学園祭の打ち上げで容疑者から渡されたジュースを飲んで被害者が死んだこと、残りのジュースの入っていたペットボトル、氷を入れたピッチャー、ジュースを注いだ紙コップからは毒が検出されず、被害者のカップからだけ毒が検出された事は知ってる。
だから細かい状況が知りたい」

どうせ嫌われているにしても少しでも錆兎の役にたちたい。
義勇はそう思い直して錆兎が知りたがっていたあたりのことを脳内で反復した。

特別に色々できるわけでもないと自負している義勇だが、錆兎の言葉、表情など、錆兎に関しての諸々は一言一句、一瞬のものでも覚えている自信がある。
そう、錆兎に出会ってからの義勇の脳は全て錆兎について記憶するためだけに存在していると言っても過言ではないのだ。

今回はそれが役に立つと思う。


「わかった。
まずジュース。
2ℓのペットボトルが全部で10本用意されていた。種類はコーラとウーロン茶。
全部未開封で被害者が飲んだのはその中のコーラだ。
コーラとウーロン茶どちらが飲みたいかは被害者が選び、被害者の目の前で容疑者が開けている。
氷は寮内の冷凍庫で作られたもので、これも10個くらいのちっちゃいピッチャーに入ってた。
カップはコンビニによく売ってる20個くらい入ったやつな。
これも未開封で被害者の目の前で加害者が開けている」

「開けて注いで渡して飲むまでの状況は?」

「まず用意したのはさっきの教師浜田哲也。
これはまあ1年A組の担任だからで、毎年恒例。
で、まずその時の主席と担任が乾杯するのもうちの学校の恒例な。
だから浜田がたまたまそこにいた3位の天野にジュースを用意するように言ったんだ。
で、天野が教師浜田と被害者の一位の宮川の二人分のジュースを作ってそれぞれに渡した。
それで二人は乾杯。
浜田は減った分の宮川のジュースを注ぎ足してやるよう天野に言って、天野がそうしたんだが、そこで宮川が前回までトップだったのを入れ替わったことで天野を馬鹿にした発言したらしいんだな。
で、天野がキレて、宮川に掴みかかりそうになって、危うく乱闘騒ぎ。
ま、浜田や周りがすぐ天野を押さえつけたから宮川には指一本触れられなくて、その代わりその騒ぎでテーブルが倒れかけて、ピッチャーいくつかひっくり返っておじゃん。
浜田がテーブルに置いた紙コップも転がったから捨てたけど、中身飲んだあとだったしな。
あと開けてあった紙コップが床に転がったから、ビニールに包まれてなかった上の2個ほどはゴミ箱行き。
ピッチャーは床におちたのに関しては片付けた。
その後、天野の方が謝罪させられて、さらにずっと横について酌させられてて、開始から30分くらいたった頃か…いきなり宮川が血を吐いて倒れて死んだって感じだ」

「…途中処分したものには毒は?」

「入ってない。
紙コップは事件後ゴミ箱から回収して調べたし、ピッチャーは氷は床に転がったから仕方ねえから捨てて容器は洗ったから、調べられないっちゃ調べられないけど、教師が同じモン飲んでるしな」

「わざわざ片付けて洗ったのもしかして宇髄なのか?」
「あ~だって皆それぞれ一緒に打ち上げ祝いたい奴いるだろ?
俺はほら、一人でも十分楽しいから、別に飲みモンと食いモン残ってる範囲なら別に遅れてもかまわねえしな」

宇髄はどうもその近寄りがたい外見と物腰で損をしているように思う。
こんなにいい奴なのにな…と義勇は少し悲しくなった。


「他に毒が検出されたものは?」
「容疑者のポケットに被害者が飲んだものと同じ毒薬の包みがあった」

ここまで揃うともう決定の気もするんだけどな…と、笑みを消して考え込む宇髄を前に、義勇は視線をベッド横の窓から外へと移した。

「動機…出来てから毒用意するって時間的に無理だよな…」
「ああ、でも元々揉めてたからな。
ずっと携帯してて、それが最後の一押しになったんじゃって言われてた」

「普通の高校生が…手品師でもないのに、そんな皆が見てる前で誰にも気づかれずに毒入れられるもんかな?」
「まあ…練習してた可能性も?」

「そもそも…ずっと横で酌してるなら、被害者が持ってるコップの中に毒を混入するなんて被害者にも気づかれるような方法取るよりは、ジュースのペットボトルの方に毒入れた方が確実な気がするよね…」

「あ~まあそれはそうだけどよ…」

ふああとあくびをする宇髄に釣られて、義勇も大きくあくびをする。

「とりあえず…明日ちゃんと図解でもして状況洗いなおしてみっか」
今日は寝ようぜ、と、言う宇髄の提案に異論は無い。

事件について色々考えていて気がそっちにいっているのと人肌の心地よさで、沈んでいた気持ちはすっかり眠気へと移行しつつある。

「ん……とりあえず…あ…す…」
と返した時には義勇は半分夢の中だった。

その頃外ではどれだけ大変な騒ぎになっているかなど、思いもしないで、義勇は夢の世界へと旅立っていった。








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