学園警察S&G_第12章_話すためのルール

「……あのな…一緒に転校してきた奴…俺のために転校してきてる」

自分も誰かに言いたかったのだと思う。

仕事の部分に触れないように、委員会の方から与えられた設定から出ない範囲で…でもなるべく真実に近いように……

義勇はそう思って口を開いた。

「…ストーカーか何か…か?」
少し眉を寄せる宇髄に義勇は静かに首を横に振った。

「以前…俺はそいつと同じ学校に転校してきたんだ。
ちょうど家族全員が事故で亡くなったあとで俺はずいぶんと参ってて、そいつは優しいから色々面倒をみてくれて…。
その時に突然一人ぼっちになった俺があまりに参ってたというのがあったんだと思うけど、ずっと一緒にいて面倒をみてくれるって約束してくれたんだ。
たぶん…今もそれを律儀に守ってくれてる。
それすごく申し訳ないって思ってるんだけど、でも俺はそいつと一緒に居たくてもう構わないで良いってずっと言えないでいたんだけどさ…。
でもさ、さっきとうとう忍耐が限界に来たらしくて、見限られたっていうか……」

そこまで言って嗚咽がこみ上げてきた。

「あー…優しかった…しかも自分の側は好きな相手に冷たい目で見られるのはきついよな?」

普通なら泣くなとか、気にするなとか、相手が悪いとか、嫌なら離れられて良かったじゃないかとか、色々なぐさめの文句がでてくるだろうに、宇髄は正確に義勇の思っているところを読み取ったように思える。

それにびっくりして視線を向けると、目があって、目があうと宇髄はまた笑みを浮かべて義勇の頭をなでた。

「気にすんなっつ~のも無理だろうしな、相手が落ち着くまで出来るだけ相手といる時間減らして、一人で居にくかったら俺んとこ来いよ。
まあ色々言われっかもしれねえけど、そいつと一緒にいて冷たくされ続けるよかお前の精神衛生上的にはいいだろ?」

優しさにまた泣けてきた。
宇髄は泣くなとは言わなかった。
ただ、
「よくそんなに枯れずに涙が出るよな。
ま、でも水足りなくなるだろうし、これ飲んどけ」
と、備え付けの冷蔵庫からミネラルウォータのペットボトルを出して渡してくれた。

それを遠慮せずに受け取ると、義勇は遠慮なしついでに、今日はここで話をして過ごしたいと言い、宇髄は了承した。

寮は入る時にタイムカードが記録されて、その後の寮内での行動は自由なのだ。
遅くまで寮内の図書室や友人の部屋で勉強を教えあったりする生徒が少なくはないためである。

「そう言えば…殺人事件の事だけど…」
「ああ?」
「実は…知人が今回の事件は冤罪事件なんじゃないかって話聞いてて……わかる範囲で調べて欲しいって言われてるんだ…。
だから宇髄がもし調べてるなら一緒に…」
「ストップ!」
とりあえず部屋に戻りたくないといったので宇髄が貸してくれたパジャマを着て、二人してベッドに潜り込みながら義勇が言うと、宇髄は指先で義勇の口を塞いだ。

「俺、別にお前が犯人とか思って無いし、別にそのためじゃ…」
慌ててそういう義勇に、宇髄は苦笑する。

「そういうことじゃねえ。それはわかってる。
じゃなくてな、俺が知ってる事教えてやんのはいい。
そこで色々想像すんのもかまわねえ。
でも絶対に動くな。
俺以外の奴にも聞いてまわったりすんなよ?
知りたいことがあるなら俺が調べてやるから俺に言え。
もし本当に冤罪なんだとしたら…犯人がまだこの学校にいるっつ~ことだからな。
危ねえから」

「あの…俺だって特別に弱いわけじゃ…」
「それが条件!」

ピシっといわれて義勇は黙って頬を膨らませた。
一応学園警察なんてものに所属してる分、調べるのは一般の学生である宇髄より適任のはずなんだが…それ自体をバラすわけにはさすがにいかないので、不承不承了承した。










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