学園警察S&G_第7章_疑惑の男

村田は錆兎が思ったよりも空気を大切にする人間だったようだ。

食堂の片隅の席ならいいかと思っていた錆兎だったが、思い切り込み入った話をすることになるので村田は食堂でテイクアウトのおにぎりを買って、錆兎にも同様にするよう指示したうえで空き教室に連れて行く。

ゆっくりと食事をする時間を割いてもらって申し訳ないなと思ったので昼食代は払わせてもらい、二人して空き教室の窓際の席に陣取っておにぎりを食べ始めた。

「でもさ…」
ゴクンとおにぎりを飲み込んで村田はチラリと錆兎に視線を向けて言う。
「なんでそこまで過去の事件について気になるわけ?」

普通なら一瞬迷うところだが、錆兎は即答した。

「殺人事件なんてあるところなら義勇を置いておくのは危ないだろう?」

まあ…全ての事件において言えることではあるのだが…。
義勇を事件の最中に放り込むなんて事は出来るならしたくない。
そして、どうしてもするなら絶対に自分が護衛につくと決めている。
今回も比較的真面目に取り組んでいるのは、問題が解決するまで義勇が危険だから、その一点に尽きる。
だからその言葉は真実である。

「お前ってホントに…」
呆れたような笑みを浮かべる村田の言葉をさえぎって
「で?何が起こったんだ?
さっき俺が危ないと言っていたが、義勇には影響はなさそうなのか?」
と、矢継ぎ早に問いかける。

村田はその勢いに押されたように少し黙り込んだが、
「まあもう犯人も自殺して終わったって言われてる事なんだけどね…」
と、小さく息を吐き出すと、口を開いた。

「11月の半ばさ、学園祭の打ち上げやってた時、渡されたジュース飲んで死んじゃった奴がいるんだよ。毒入ってたらしくて。
死んじゃったのは学年でトップの奴でさ、その毒入りジュース渡したのは3位の奴。
うちの学校って卒業時に成績順で卒業証書とか渡されんのよ。
で、それで主席ってわかるからさ、割と良いあたりに勤めてるOBとかがチェックしにきて、大学卒業と同時に引っ張られたりするから、みんな必死でね。
それが原因じゃないかって言われているからさ。
まあ…冨岡はそこまでの成績じゃなさそうだし?
でもお前はトップクラス…というかトップ突っ走りそうだから」

「バカバカしい。それで捕まったら就職もなにもないだろう」
「うん…だからさ…実は何か裏があるんじゃない?って校内ではもっぱらの噂なわけ」
「裏?」
「そそ。捕まったら意味無いのに自分がもろ犯人てわかるやり方で殺すのって馬鹿じゃない?
だから真犯人他にいて、3位の奴にどうやってか罪なすりつけたんじゃないかってね」

「そういう意味で言うと…1位と3位がこけたら得をするのは……」

「そ、2位の奴。
1位から3位っていつも接戦だったからさ、2学期の中間は確かに被害者が1位だったけど、1学期の間は順位入れ替わったりしてたから、今後もグルグルする可能性高かったしね」

「んで、2位の奴ってどんな奴なんだ?」
「えとね…ちょっと怖そう…というか人を見下した感じの奴で、群れないんだよね。
いつも一人で他を冷めた感じで見てるタイプ?」

「それはまた…怪しい感じだな」
「うん。例の件もそいつが起こしたんじゃないかってもっぱらの噂だから、ますます一人っていうか…ね」
「なんて奴なんだ?」
「宇髄天元。
すごいイケメンでさらに髪を銀に染めてるから、見ればすぐわかるよ。」
「…チェックいれとく」

宇髄天元…真犯人かもしれない男…。

(間違っても義勇に近づけさせられないな…)
錆兎は内心思う。
まあ義勇も人見知りするほうではあるし、とっつきにくいタイプなんだとしたら、大丈夫だろうが、接触するのは自分がしなければ。
上手く近づければいいのだが…。

こうしてその後、その現場にもいたという村田からその時の様子を聞きだした。










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