学園警察S&G_第3章_会いたかった

──お前は脳内変換が激しすぎだ…

なんだか止まらなくなって泣いて泣いて泣いて…泣き疲れるまでずっと胸を貸してくれて、あまつさえなだめるように背をさすっていてくれた錆兎に泣いていた理由を聞かれて正直に答えると、再度のため息と共に降ってきたのはそんな言葉だった。

続いて
「俺はお前と再会できるのを楽しみにお前が任務に就くのをずっと待っていたんだけどな。
なかなか話が来なくて焦れていたくらいだ」
とまで言ってくれる。

「…でも…錆兎には迷惑かけ続けてる…
最初の学校だって名門校だったのにやめる羽目になったし…
俺のこと嫌にならないか?」
と、それでも確認したくなって見上げると、錆兎は猫舌の義勇に程よく冷めた先ほどのフレーバーティの入ったマグを持たせて飲むように促した。

──…甘酸っぱい……美味しい…
こんな時なのに思わずそう零すと錆兎は笑う。

──会えない間、どんなことでお前が喜ぶだろうと色々考えていた。その一つだ。
──これが…?…ほんとうに?ほんとうに会いたいって思っててくれた?

甘い桃の香りのフレーバーティーに甘酸っぱいシロップに付け込んだ氷砂糖。
年の離れた少しばかり少女趣味なところのある姉と一緒に育った義勇が確かに好きな味だ。

錆兎はカッコいいけど真面目だし女子 (…いや、義勇は女子ではないのだけれど、姉の影響もあって女子のような好みなものも多い) が好きそうなものなんて熟知していそうにない。
だから確かに義勇のためにわざわざ色々調べて今回再会すると知って用意しておいてくれたのだろう。

錆兎に出会った頃…姉のストーカーに一家惨殺された直後の初めての任務で色々ボロボロだった義勇が慣れない転校先で戸惑っていた時、隣のクラスだと言うのに同じクラスの生徒達よりも優しくしてくれた。
錆兎は悪意はないが何も出来ない、普通なら遠巻きにされるような人間を疎んじたりしない優しい少年なのだ。

…と、義勇のために巻き込まれているのにこんなに優しい錆兎にほわほわした気持ちになっていると、やっぱり上からため息が降ってくる。

そして義勇の考えていることを正確に察したようだ。
錆兎はやや呆れ顔で
「俺は悪人ではないしどちらかと言えば善人だと思うが、どうでもいい人間を色々気遣うほどには優しい人間ではないからな?
義勇、お前は可愛らしい顔をしているというだけじゃなくて、色々な人間を惹きつけてしまうような雰囲気がある。
ただ放っておけないとか面倒をみてやりたいとかそういう類ならまだいいが、なかには不埒な思いで近づいてくる奴も居るからほんっとうに気をつけろっ」
と今日再会してまだ1時間ほどだがもう何回目かわからないくらいのため息をついて言う。

「…えっ?」
「…えっ?!じゃない。
それでなくともこんな仕事していて危ない人間に近づかないとならないことも多いんだから自覚を持てっ」

自覚?
なんの自覚?
と義勇は小首をかしげて考えて…考えて…考えて…結論。

「えっと…俺、錆兎が惹きつけられてくれるなら嬉しいよ?
ほんとうはずっと一緒に居たい。
潜入する時に同じ学校からの編入ってなると目立つからダメだって言われたけど、本当は錆兎と一年365日、一日24時間、おはようからおやすみまで一緒に居るのが俺の夢なんだけど……」

「…義勇、お前……そういうとこだぞ…」
と錆兎は片手を額にあててがっくりと肩を落とした。

「…え?…だめ?」
「………だめ…じゃない」

もう錆兎がこんな義勇に敵うはずがない。

「出会った瞬間なんだか気になって隣のクラスまで行って世話を焼いて、とうとう学校まで変えた俺がダメと思うわけがないだろう」
「…それはごめん…迷惑かけて…」
「そうじゃないっ!」
と錆兎はまた謝罪しかける義勇の言葉を遮って言う。

「わかった。
産屋敷総帥に言っておく」
「…何を?」
「お前は一応家族を失くしてから総帥の遠い親族ということで総帥に引き取られたことになっているから…俺は親が海外だし、同じく遠い親族ということにしてもらって、どうせなら年が近いから一緒の方が保護しやすいからということで一緒に暮らして一緒の学校に通わせることにしているということにしてもらう。
それでいいな?」
「いいのっ?!」

錆兎の言葉に思わず前のめりになる義勇に
「ダメなら提案はしないだろ」
と冷静に答える錆兎。

「やった~!!」
と手放しで喜ぶ義勇を少し目を細めて眺めながら、それはそうとして…と、いったん自分に注意をむけさせる。

そして
「とりあえず要望を通すなら実績をあげないとな。
ということで、今回の仕事の分担の説明に入るぞ?」
と念のため現状と役割、そして注意点を話し始めた。










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