青い大地の果てにあるものsbg_第93章_3つ目のイレギュラー

全ての巡り合わせが悪かったと言って良いと思う。

「とりあえずもう一度だけ確認するぞ~。
俺の詠唱が敵に入ったらまず俺が第二段階になって敵に突っ込む。
しのぶはそこから左側のイヴィルを引っ張って少し離れろ。
間違うなよ?左側だ。
混戦になると見失いがちだから、俺の詠唱中にずっと目で追っとけ。
で、しのぶが完全にイヴィルを取ったら善逸もしのぶの側のイヴィルに攻撃をしかけろ。
これも間違うなよ?
しのぶの側のイヴィルな?
タゲを取ってる人間をかばう形の専業盾と違って俺は自分に引き付けておいて初めて機能する盾だから、タゲ奪われると奪い返しにいかねえとだからキツイ。
だからな、攻撃に入るタイミングはゆっくりでもいい。
そのかわり攻撃対象は間違ってくれるなよ?
俺が詠唱して敵に着弾。
しのぶが左側のイヴィルを取る。
しのぶが殴り始めたら善逸がしのぶが殴ってる敵を攻撃する。
いいな?」

宇髄が最終確認をいれると、
「了解です。
胡蝶しのぶ、左側の白いイヴィルを確認。
宇髄さんの魔法が着弾後、跳躍して接近。
攻撃に入ります」
としのぶが言われた条件を復唱する。

善逸の方はというと、いよいよ最終確認をして戦闘に…ということで緊張に涙しつつ
「…しのぶちゃんが攻撃したら…最後に俺ね…。
うん、わかった…」
と震えながら頷いた。


「じゃ、そういうことで行くぞ~!」
と宇髄は即詠唱に入る。
緊張のためか割合と長い詠唱のはずなのに、敵に着弾するまでの時間が善逸には一瞬に思えた。

そして詠唱後、着弾を待たずにすでに前方へと駆け出している宇髄はすでに第二段階に入っていた。
金色に弾ける光をまとった3節棍。
最初の攻撃であと瀕死な物が数匹ほどに減った敵を綺麗な棒さばきでうまくかわしている。

宇髄が敵のただなかにつくかつかないかくらいのタイミングで
──胡蝶しのぶ、行きますっ!
と今度はしのぶが前方へ跳躍。

そして計ったような動きで左側のイヴィルに接近し、それを蹴り飛ばして自分がタゲを取ると、イヴィルを交えて乱戦になっている宇髄の傍から担当の敵と共に離れて行った。

普段と違う戦闘に慣れていないなど嘘のように、宇髄に言われた役割を綺麗なまでにきちんとこなすしのぶに善逸は感心してしまう。

その正確さはまるで機械のようだ…と思って、善逸は暢気にそんなことを考えてしまっていた自分を反省し、そして改めて前方に目を向けて…そして青ざめた。

これは…まずいかもしれない……。

そう、善逸はこの時気づいて…宇髄はおそらくもっと早い段階…突入したあたりで気づいていたと思う。

しのぶが言われたことを正確無比にこなせているのはおそらくそれに気づいていないから。
彼女は敵を見て推し量ることに長けた遠隔系ではないから気づいていないのだ。
それが幸いなのか不幸なのかは善逸にはわからないが…。

とにかく、イレギュラーはメンバー、敵数だけではなく、あと一つ、”敵の質”でもあったようだ。

これだけ重なるなんて運が悪すぎる…と嘆く時間的そして精神的余裕もなく、善逸は半ばパニックになりながらも誰からも指示が得られない中、自身がどう動くかの判断を迫られることになった。









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