──嘘~~!!!
と叫んだのは善逸だけではない。
それまで気丈に頑張る宣言をしていたしのぶもであった。
──こ、これ、どうしましょう??
──逃げるに決まってるじゃんっ!!
慌てる二人。
そこに唯一冷静な宇髄が言う。
「これ…潰しとかないと基地に向かう奴じゃね?
最悪あっちの移動速度が早かったりして直線距離行かれたら、俺らが車で回り道してる間に今絶賛ゼロジャスティスキャンペーン中の基地が攻撃されるかもなぁ」
「「そんな…」」
ガリガリと頭を掻く宇髄に、善逸はもちろん、しのぶまで涙目になった。
「とりあえず…カナエに連絡するから待て」
と、たった今出てきた車に戻って車内に置いておいた電話でカナエに事情を説明する連絡を入れる宇髄。
イヴィルが予定よりも1体多かったことと、しのぶ達に言ったのと同様、戻る間に最悪基地に向かう可能性が0ではないことを告げると、電話の向こうでふぅ……とため息一つ。
一瞬の間のあと
『…天元君…なんとかできないかしら?
足止めで良いの。
他の3班のうち1班が戻ってきたら最悪即撤退してくれてもいいんだけど…』
と申し訳なさそうな声が返って来て、宇髄は
「俺は平気だけど?」
と即答した。
実際、イレギュラーな敵に援軍なんて皆無で対応しなければならないことなど極東支部ではざらにあった。
そんな中でやってきたと言う自負はある。
ただ…それは自分に関してのみだ。
あとの本部組の二人はどう見ても大丈夫そうには見えない。
まあ宇髄の場合、これまでも相方はヒーラーの義勇なので、攻撃という意味では一人で戦ってきたようなものだと言うのもあるし、問題がないと言えばないのだが…。
この天元の”俺は”という言い回しにカナエもおそらく気づいている。
気づいているが他に選択肢はないと思うのだろう。
『じゃあ本当に申し訳ないけどお願いできる?』
とお願いという形の命令を下した。
その本部の判断を伝えると、しのぶは一気に青ざめて、それでも
──確かに本部にやるわけにはいきませんものね…わかりました…
と頷いたが、善逸は
──無理っ!無理だよっ!基地に戻って炭治郎を待とうよ~!!
と泣きわめく。
──それでは間に合わないから今回の判断なんですっ!
とそんな善逸に自分も明らかに余裕のないしのぶが半ギレで返した。
二人がそんなやり取りをしている間に宇髄は作戦と役割を考え直している。
本部組は二人とも余裕はない。
任せて失敗されることを考えれば任せない方が安全だ。
戦闘に慣れるまでは全く戦力にならないことを考えて自分が時間稼ぎをするしかないだろう。
最悪倒せなくてもいいのだから自分だけで敵を引き付けて時間になったら撤退もありだ。
それでも今回の任務は上層部的には古参組や専業盾などこれまで任務に出る時は必ずと言って良いほど一緒に居たあたりと離れて、慣れたフォローが入らない環境での戦闘に慣れさせるということを目的としているようなので、完全に車で待ってろと言うわけにもいかないだろう。
──あ~、とりあえず聞け
と、苛つくしのぶと泣きわめく善逸に向かって、宇髄は淡々と口を開いた。
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