青い大地の果てにあるものsbg_第84章_凡人百舞子との邂逅

──あ~…モブ子さんですか……

義勇を蜜璃に預けたあと、アポを取ろうと思ってブレイン部に連絡を入れれば、応対に出た職員はモブ子のことはしのぶに聞いてくれと言われた。

何故しのぶ?
ブレイン本部長で極東の医療部長の義勇の姉とも親しいカナエならわかるが…と思っていると、そのカナエが電話を代わって、忙しい自分の代わりに妹に託したのだと言う。

「…極東が落ちるというのは内々で言われていたことでね…。
百舞子ちゃんは蔦子ちゃんが義勇ちゃんのメンタルのフォローのためにって一緒に送ってきた子なのよ。
でも極東が落ちると言うことは、彼女も身内を失うということになると思うしね。
しのぶは言葉はきつい子だけど、私達姉妹も両親を亡くしていて身内を亡くす痛みはわかっているから…」
とのこと。

それを聞いて、ああ、そうだよな。そいつもフォローが必要な身の上なんだよな…と錆兎は今更ながらに気づいた。

なかなかにデリケートなことになってきた…と思いつつも、かといって挫折するわけにも行かず、仕方なしにしのぶに連絡をする。

しかし返ってきたのは
──百舞子さん?あ~…今はやめておいた方がいいかも…
と言う言葉。

まあ、当たり前だよな。
自分も同じ立場なわけだから義勇のことどころじゃないだろう…と、それに錆兎が理解を示すと、電話の向こうで、はああぁあぁぁああ~~~~~~…ととてつもなく長く深いしのぶのため息が聞こえた。

「そういう意味ではなく……今彼女は無駄にやる気なので…。
私は錆兎兄さんが巻き込まれることを良しとは思えず抑えているわけなのですが…」
と謎なしのぶの言葉に
「??
別に俺が巻き込まれて済むようなことなら全く構わないぞ?」
と首をかしげながら答えると、
「後悔しませんね?
私は知りませんよ?」
というさらに謎な言葉と共に、百舞子に会えるようアポイントを取りつけてくれた。

そして錆兎が向かったのは約束の場所…数多くある鍛錬室の中の一つ、一番端の部屋。
いつもなら鍛錬室に来ると女性陣に囲まれてしまうので、こっそりこっそり目立たない端っこの部屋なのである。


ノックをすると中から──どうぞ…とのしのぶの声。
それに安堵しつつドアから身を忍び込ませると、目の前にはしのぶともう一人、見慣れぬ妙齢の女性。
彼女が例の百舞子なのだろう。

なんというか…影が薄い。
一緒にいるしのぶが超絶美少女なのでインパクトがあるというのは確かなのだが、それを別にしても今こうして対峙しているのに後ですれ違っても見過ごしてしまいそうなレベルの影の薄さだ。

しかししかし、インパクトがないのは外見だけだったようだ。
錆兎はそれからずっと忘れることができないでいる。

鍛錬室に入ってきた錆兎に気づいた彼女は、カッ!!と目を見開いていきなり言ったのだ。

──とりあえず脱いでくださいっ!!
…と。










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