青い大地の果てにあるものsbg_第83章_ミッション開始

とりあえず…義勇が起きる前にとかけた電話の向こうでは、宇髄に
──甘やかさねえでも良いから。俺らは色々慣れるしかねえってのを誰よりわかってる。
と断言された。

いやいや、義勇は泣いてたけど?と言えば、
──あ~あいつは泣くことは泣くぞ?でもきちんと動くから大丈夫。
と笑われて錆兎は眉を寄せる。

笑い事じゃない。
こういうことが平気になるようにさせるのはダメだと言うと、宇髄の笑いがやんだ。

そしてなんでもないことのように
──え~?俺らは総帥様のために死ねって育てられてるんだけど?
と言われて言葉に詰まった。

それを言われると言葉がない。
錆兎自身が言ったことではないにしても、宇髄達が錆兎のために死ねと言われて育ったのは事実だ。

でもここで自分がそれを謝るのはどうなのか…と悩んでいると、
──悩んでる悩んでるっ
とまた宇髄の笑い声がした。

そしてなんだか淡々とした先ほどとは違い、やや柔らかい声音が聞こえる。

「あのな、お前が言ったわけじゃねえ言葉でお前が謝んのは違うだろっ。
むしろお前は俺らが集まった時に自分のために死ぬとかやめろってその言葉を否定したしな。
……それでも、俺…はとにかくとして、俺の兄貴や河骨のあたりとかな、勝手にお前のために生きて死にてえって思ってるわけだ。
親とか兄弟とかさ、そのあたりよりも大切なあたりが居れば、たぶん里が滅んでも奴らは平気。
お前が生きて何かを目指してて、自分がその役に立てると思えば死なねえ。生きていける。
義勇もな、それとはちっと違うけどな、実家の諸々とは別に大切なものが出来て、必要とされているってわかれば泣くけど死なねえし、生きて動く。
でもって…うちの一族の同世代が皆心酔してこいつのために生きてえって思ってる総帥様の一番傍に居られてるわけだから?
まあ…上手に頼ってやってくれや。
お前にあいつが必要だって思われているって自覚出来れば、泣きながらでも立ち直るから」

言われてなるほどと思った。
いや、自分がそこまで大した人間だとは言わないが、義勇は今目の前で自分を必要としている人間が居れば悲しくとも相手を助けてやろうと思えるような優しい人間だと言うことなんだろう。

宇髄の言葉は素直ではないとは思うが、まあ有意義な情報で大切なことを教えてくれた。

なので
──助かった。ありがとう、天元。
と言うと、少し離れたところで

──…総帥様って…錆兎から?
という善逸の声が聞こえる。

──そうそう。落ち込んでる義勇の取り扱い方についてな。同じく極東なんだから俺の心配もしろっていうんだよなっ。
──仕方ないよ。ほら、宇髄さんのことは俺が心配するからさ。錆兎にはちゃんと答えてあげて?
──もう答えた。で、わかったと思うぜ?
──そっか、良かった。
と、そんなやりとり。

ああ、そうか。
善逸は戦闘については消極的だが、こういう役割については頼んだ以上にきちんとこなしてくれているらしい。

そんなことを思って温かな気持ちになっていると、
──義勇と蔦子については極東から来た百舞子ってのが今ブレインに居るからそいつに聞くとたいていわかるぜ?
と、宇髄からさらに一言。

──そうか、わかった。訪ねてみる。色々ありがとうな。
錆兎は最後に礼を言って通話を打ち切ると、百舞子を訪ねる間義勇を預けるべく、蜜璃に連絡を入れることにした。









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