「悪い。一発そっちにやったな」
苦笑いを浮かべる錆兎の言葉に義勇はフルフルと首を横にふり、不死川は
「そんなときのために俺がついてきたんだろうがァ。気にすんな」
と笑う。
「義勇のこれ、可愛いな」
錆兎が装備されたままの義勇の羽根の形のチョーカーを少しつつくと、義勇はちょっとはにかんだようにうつむいた。
「可愛いだけじゃねえぞォ、これは超広範囲の味方に回復飛ばせるお役立ちアイテムらしいぜ?」
と、それを隣で見ていた不死川が説明すると、錆兎はなるほど、とうなづき、そしてそこでようやく
「解除」
と能力を解除した。
「怖い思い…させたか?」
錆兎が終始無言の義勇に声をかけるが、義勇はやっぱりフルフル首を横に振る。
「お前が敵に回らねえ限り怖ぇもんなんてねえだろっ。
この数を一人でやれるなんて、敵の方がよほどお前のこと怖がってるぜぇ?」
と、不死川が冗談めかして言い、錆兎は苦い笑いを浮かべて肩をすくめた。
「天元の能力以上に限定条件つきだったからな。俺も使ったのまだ2回目だし」
「あ~、あの時は悪かったなァ。
おかげで俺もブレイン、フリーダム、医療部の3部の本部長に1発ずつ、3発本気で殴られたけどな」
「他はとにかくとして…フリーダム本部長の本気は怖いな。
俺もだけど、お前もその時それでよく生きてたな」
「全くだぜェ」
二人でそんな話で盛り上がったあと、錆兎は義勇の第二段階にも触れる。
「義勇の第二段階…あれ、すごいな。
羅刹で消費する体力が軽減どころかプラスになる勢いだった。
というか、あれがあれば常時羅刹でもイケると思う。
…あれは義勇的には長時間…というか、もっと言うなら戦闘中常時発動可能なものなのか?」
そう振られて義勇はすごく嬉しそうに眼を輝かせて、うんうんと思い切り頷いた。
「もちろん!
みんなの普通のジュエル発動と同じだし、一度ターゲティングしてしまえば俺から半径200mほどの範囲に居てもらえば勝手に効力発揮する系だから…。
…これがあれば…ずっと錆兎と居られる?」
と、期待に満ちた表情をして大きな青い目で見上げてくる様子は愛らしい。
もちろん錆兎にしたらそれを否という理由はどこにもない。
「ああ、むしろこちらから頼みたいくらいだ」
と言うと、泣きすぎてまだ少し赤い目をしながらも満面の笑み。
錆兎はそれまではカナエに頼まれたという半分義務を果たしているという気持ちが強かったのだが、そのどこか痛々しくもあるが愛らしい笑顔を見て、心の底から義勇が笑顔で居られるようにしてやりたいと思った。
「まあ、あれだなァ。
カナエは元々これからァお前達をコンビで出すつもりだったみてえだけどなァ。
それが羅刹常時発動なんてオマケつきなんざ、敵が気の毒な気がしてきたぜェ」
義勇を元気づけてやりたい…そう思ったのは同行したこちらの長子も一緒だったらしく、不死川も冗談めかしてそんな風なことを言いながら、──頑張れよォ、と、義勇の頭を撫でつつその口にまた飴玉を放り込んだ。
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