青い大地の果てにあるものsbg_第77章_それぞれの戦闘開始

そうしてそれぞれに色々な思いを抱えて現場に到着。

こうなればもう些末な思いは振り切って、出来る出来ないも考えず、やらねばならぬと自分に強く強いるのみである。

──さあ、行くぞっ!!
と気合を入れて車を降りて腕をブンブン振り回す。

しかしそこで服の後ろに重みを感じて振り返れば、またなんだか泣いている義勇。

──第三段階って…危ないんでしょ?使わないとダメ?死んじゃやだっ…
といやいやと言うように首を横に振るので、錆兎はその手のことは兄貴に任せようと視線を不死川に。

そこでアイコンタクトで任された不死川は苦笑しながら錆兎の隊服の上着の後ろを掴んでいる義勇の手をそっと外させて言った。

「安心しろォ。こいつは特別な奴だから。
昔なァ本当にまだ子どもだった時分に俺がミスって使うはめになった時でもちょっと寝たら回復して戦線復帰してっからなァ。
大人になった今ならちょっと使うくれえならぜんっぜん大丈夫だぞォ」

真菰もそうだが不死川も長い付き合いだけあって、錆兎が伝えたいと思っていることをわかりやすく言葉にしてくれるのが本当にありがたい。

「…ほんとに……?」
と、不死川の言葉に半信半疑の義勇に
「ああ。ただ他のフォローまでは入れる余裕がないからここで実弥と大人しく待っててくれ」
と頷いて、今度は不死川に
「実弥、敵の位置。大まかでいい」
と声をかける。

「前方320mから半径17.5mの範囲に虫…かまきりかァ。
数は30前後。それに混じってイヴィル3人。
イヴィルのうち一匹は棒持ってるから遠距離かもなぁ」
今回は状況把握をしてくれる遠隔がいないため、自前の双眼鏡で不死川が確認する。

「了解っ。実弥、義勇を頼むなっ」
言って錆兎は能力を発動させた。

そうして飛び出そうとする錆兎に、今度は義勇が
──待ってっ
と声をかけて有無を言わさずジュエルの力を発動させて強化をかけ始める。

そして光(防御)緑(速さ)炎(力)と3種類かけ終わると、その様子をみていた錆兎が少し目を細めた。

「回復だけじゃないのか…。
強化は俺だけじゃなくてみんな助かるな。
全体の底上げができるし本当にありがたい」
錆兎の言葉にそれまでずっと涙目だった義勇がぱぁっと顔を上げて嬉しそうな笑みを浮かべる。

「ほんと?!本当に?!
俺、錆兎の役にたつ?!」
と前のめり気味に言う義勇に
「ああ、すごく助かる」
と錆兎はもう一度繰り返すと、笑って日本刀を軽く振った。

そしてすぐ、
「じゃ、これから完全戦闘モードに入るから、隠れててくれ」
とすっと表情を厳しくし、指を二本刀の柄に置いてつぶやいた。

「変形…羅刹っ!」
空気がビリビリと振動し、燃え上がる。
赤く光った日本刀が炎をまき散らしながらくるくると回り、パカっと二本に割れた。

それがそれぞれパシっと左右の手に収まると、
「行ってくる」
と言いおいて跳躍した。

「あれは…やばいやつだね…」
錆兎が離れた瞬間、義勇が呟いてふるりと身を震わせた。
気迫に押されて手がかすかに震えている。
そして
「…実弥…」
とその義勇を守るように前に立つ不死川に声をかけた。

「おう、なんだ?」
不死川はその声に後ろの義勇を振り返る。
すると義勇の口から出てきたのは
「これから第二段階を使おうと思う。
だからもう少しだけ前方に出たい。
俺はイヴィルどころか魔導生物とすら戦えない攻撃力0のジャスティスだから敵が来たら死ぬけど実弥を信頼してるから…頼める?」
という言葉。

「お、おう。
どんくらいだ?」
真剣な様子の義勇に少しばかり押されながらも、不死川は視線を前方の錆兎と後方の義勇に交互に向けた。

「えっと…錆兎が俺から200メートルくらいの範囲に収まるくらい?」

「200…かぁ…」
少し悩む不死川。

だが、最終的に
「お前もジャスティスだもんな。
リスクと天秤にかけても必要なメリットがあるんだよな?」
と義勇に確認を取り、義勇がそれに頷くと、
「わかったァ!何かまずったら俺があとで錆兎に殴られてやらァ」
と言って、
「じゃ、進むぞォ。
俺の後ろからは絶対に出んなよ」
と自分が先に進み始めた。

そうしてソロソロと100mほど前進したところで止まると、義勇は手の中のサファイアの球を掲げて
「チェンジ、エンジェルボイス」
と唱える。
すると、手の中の水晶は形を変えて小さな羽の形になると義勇の首にチョーカーとなって収まった。

「おおっ?!」
と、不死川が確認のために一瞬振り返って声をあげれば、義勇はやや得意げにニコリと笑う。
そしてそのまま義勇の唇からメロディがこぼれでて風のってあたりに広がった。











0 件のコメント :

コメントを投稿