青い大地の果てにあるものsbg_第76章_3人出動

こうして不死川と義勇を伴って3人で出動することになった錆兎。
正直あまり楽な任務とは言えないが、事情もわかっていて気心も知れている友人の不死川が居てくれるのは非常に心強かった。

錆兎は真菰と並んで本部ジャスティスの中では最強と言われているので、面倒だとか連勤だとかそういう任務は少なくはなかったが、その彼が不安を感じるような任務はこれまではほぼないと言って良かった。
だが、今回は違う。

そもそもイヴィル2体以上を相手にするというのは難しい。
なのに今回は2体どころか3体で、他にも魔導生物が多数と言う。
これを一人で全て引き付けて絶対に後ろに流さないようにとなると、本当に一気に片をつけなければならない。

ブレイン本部では真菰が代わると申し出てくれたが、これは真菰では無理だな、と、錆兎は思った。
自分でも普通に戦うなら無理だ。

そう…普通なら……。
しかし普通ではない方法なら無理ではない。

第三段階…羅刹。
錆兎のジュエルのピジョンブラッドの最終奥義だ。

第一段階は範囲は狭いが小回りが利く刀。
第二段階は範囲が広くなる槍。
そして第三段階は範囲による縛りもほぼなくなる多彩な戦略を可能にする二刀流だ。

自分で言うのもなんだがこれを使っている間の自分はほぼ無敵だと思う。
最強の盾にも最強の矛にもなれる。

ただし…当たり前だがリスクは大きい。
他のジュエルの第三段階もそうであるように、体に対する負担がとんでもない。

最初にこれを使ったのは初めて不死川と一緒に出た任務で、前に出過ぎて敵に囲まれて脱出できなくなった不死川を救うのに他の方法では間に合わず気づいたら使っていた。

その結果…瞬時に数十匹の魔導生物を倒したのは良いが、使ったのはほんの一瞬なのに体がボロボロで動かなくなって結果、不死川に抱えられての帰還。
その後も治療を受けてなお、寝台から起き上がれるまでに一週間、日常生活を送れるレベルまで回復するのに1週間、そして…再度任務について戦えるようになるまでに1週間かかった。

それでも錆兎の受けたデメリットは軽度らしい。
普通なら下手をすれば死ぬし、良くても後遺症が残って戦場に出られなくなる。
それがこの程度で済むなんて、とんでもなく頑丈な子だ…と、今はもう引退した前医療本部長に呆れ返られた。

…ということで、それ以来使っていないわけなのだが、前回、まだ体の出来ていない少年期だったのもあるので、しっかりと体が出来た今ならもう少しましなはずである。

おそらく戦闘不能期間は1週間ほどじゃないだろうか…
その間は申し訳ないが真菰に有言実行で頑張ってもらおう…。

まあそういうことで戦闘自体は単騎でも大丈夫だろう。
と、錆兎がそれでも少し緊張しながら考えている横では義勇がまだグスグスと泣いていて、不死川が車を運転しながらもそれに
──基地がつぶれただけでまだ人員が全滅したとかいう情報は来てないからなァ
などとなぐさめの言葉をかけていて、なんならポケットから飴を出して義勇の口に放り込んでいたりする。

不死川のこういうところが本当に兄なんだな…と錆兎は感心した。

錆兎は上に立つべく育てられていて、仕切りとかもかなりできるほうだが、こうやって泣く子を宥める術を知らない。
いつどこにいても優れ者だと称えられるが、自分は普通の人間関係において大切なものを身に着けてくることが出来なかった人間なのだと、不死川を見ていると特に思う。

まあ…色々任せられすぎている錆兎にそこまで望む人間はほぼいないわけなのだが、錆兎は勝手に思ってしまうのである。










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