青い大地の果てにあるものsbg_第74章_呼び出し

それは食事がほぼ終わって義勇が煎れてくれた煎茶をすすっていた時だった。
和やかな時間を楽しんでいると、いきなり鳴り響くサイレン。

それまでほわほわした表情で錆兎の正面でお茶を飲む錆兎を眺めていた義勇が、それに瞬時に反応して立ち上がったが、錆兎はその腕を掴んで制する。

「お前は一昨日来たばかりなのに昨日出動したんだからゆっくりしてろ。
他に任せとけ」
と義勇に言うが、錆兎の言うことには大抵ニコニコと頷いていた義勇がこの件に関しては
「ダメだっ。一応集合するだけは集合しないと。
出動するかどうかは勝手に決めていいものじゃない」
と強固に主張した。

別に錆兎だって常に戦場に出たくないという善逸のそれとは違い、行かないで良いと判断する理由はある。

自分たちは命の危険のある仕事をしているのだ。
だから無駄死にしないためには体調管理は何より大事である。
出るしかない場合を除いては疲れを貯めていいことはない。

そして…本部にはたくさんのジャスティスが居るのだ。
錆兎自身はその代わりになる人間が居なくて出るしかない場面が多いのは確かだが、義勇は今まで本部にはいなかったヒーラーなのだから、居れば楽になるが、居なくては困ることはないはずだ。

そう主張したのだが、義勇は今度は
──錆兎は俺が役に立たないというのか…?
とぷくりと頬を膨らませながら上目遣いに睨んでくる。

そうは言っていないだろう…と言いつつも、意外に頑固な義勇は譲る気はないらしいし、ここで揉めるよりはブレイン本部に連れて行った上でカナエに出動メンバーから外すようにさせた方が早いだろうと錆兎は仕方なく義勇と連れ立ってブレイン本部へと足を運ぶか…と考え直した。

が、そう判断をして遅ればせながら部屋を出たところで、
「特に錆兎く~ん、至急ブレイン本部までお願いっ」
と言うカナエの声が放送で流れる。

「ご指名…らしいね?」
少し上目づかいに言ってくる義勇に、
「これは…もういつものことだけどな」
と、錆兎は諦めのため息をついた。



こうしてブレイン本部へと向かうと、珍しくジャスティス全員が勢ぞろいしている。
まあ一部…炭治郎にしっかりと腕を掴まれた善逸のように、逃げようとして逃げられずに引きずられてきたメンツもいるにはいるが…。

「錆兎がご指名だったみたいだけど…錆兎には義勇ちゃんもいることだし、あたしが代わりに出る?」
と、まず気を利かせて言う真菰。

最初に極東支部のジャスティスのフォローを頼まれた時にその他の錆兎の負担は出来る限り自分が被るからと言ったその言葉を、有言実行してくれるつもりらしい。
そのあたりは誠実で良い相方である。

パチンと目配せと共にウィンクを送ってくる真菰に視線で礼を言う錆兎。
通常ならだいたい真菰が出来ることなら錆兎もできるし逆も然りと言うことで、じゃあそれで…となるところだが、カナエは少しばかり考え込んでいる。

「えっとね…出来れば早い段階で義勇君込みの戦闘を客観的に見たいのよ。
天元君は昨日錆兎君としのぶと出して報告を受けたから。
昨日義勇君と出た蜜璃ちゃんは状況報告が得意じゃないし…
ということで、義勇君と出すなら真菰ちゃんより錆兎君でしょ?」

「あ~、そういう事情かっ」
と真菰も錆兎も納得だ。

しかしそれはそれとして…と錆兎はカナエに物申す。
「別に急ぐ必要はないだろう?
いずれ嫌でも出動することになるし。
なにより義勇は一昨日に本部に来て昨日すでに出動しているから、今日くらいは休ませるべきだ。
俺と真菰以外には過重労働をさせないで良いくらいには本部にはジャスティスがいるだろう?」

その錆兎の正論にカナエは非常に困った顔で微妙な笑みを浮かべた。
それで真菰はカナエは早急に義勇の戦闘の確認をしたい理由があるらしいと察する。

「うん、まあいいんじゃない?
が~っと任務についてそのあとが~っと思い切り休みをもらえば?」
とカナエを後押しするように間に入った。

…が、その直後である。

バン!!とドアが開いて、血相を変えた不死川が駆け込んできた。
そして叫ぶ。

──極東が落ちたぜェっ!!





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