青い大地の果てにあるものsbg_第64章_立ち位置

そうして3人が離れていくのを確認しつつ、錆兎が
──…で、この4人以外にはオフレコの話ってことだな?
と確認をとると、真菰は頷いた。

「えっとね、まず大前提。
錆兎は認識してると思うけど、順番としてね、何かあって真っ先に死ぬのはまず特攻して、撤退時には仲間を逃がす殿(しんがり)も務めるあたしと錆兎。
敵を抑えるのに一人で済むようなら粉砕したほうが早いから、撤退になった時点で二人がかりで抑えることになると思う。
で、次いでしのぶちゃんと蜜璃ちゃんね。
逆に死ぬのが一番最後なのがヒーラーの義勇君。
その次が遠隔の二人。
で、その3人を守るのが盾の炭治郎ね。
ってことで…下手をすれば全滅するくらいの時にぎりぎり生き残るだろうあたりの境界が炭治郎なわけよ」

「あ~それな。
それで新人が加わることになった時の仕切りをできるレベルまで育てたいってことか…」

「うん、そういうこと。
いつまでも古参組のあたし達の弟じゃなくてね、いずれ炭治郎があたし達みたいに仕切らないといけない日がくるかもしれないでしょ?
それには現状で満足することなく戦闘中でも他を見回して仕切りまで出来る余裕があるくらいの強さが必要だし、自分が強いだけじゃなくて一緒に現場に出るフリーダム達ともあたし達を通してだけじゃなくて自分で直接信頼関係を築いていけないと困るから」

そんな風に真菰と錆兎で当たり前に淡々と進んでいく話に善逸はショックを受ける。

だって善逸がジャスティスになった時どころかフリーダムとして鬼殺隊に入隊した時にはすでに、古参組は最強コンビだった。

自分と同い年のはずなのにブレインと対等に交渉し、時には現場のフリーダムを仕切り、徐々に加わり始めた後輩ジャスティス達を導いて戦う彼らには、同年代どころかベテラン職員達も絶大な信頼を置いていたし、彼らが敵にやられるどころか、敗北することすら善逸には想像ができない。

なのに二人は常にその日がくるかもしれないと意識していたのだろうか…

確かにこんな話を聞かされた日にはしのぶも蜜璃もショックが大きすぎて戦えなくなるかもしれない。
自分だってすでに恐ろしい。

青ざめる善逸の横でさすがに厳しい顔をしていた宇髄はしかし
──あ~…俺も殿イケるぜ?その時は俺が真菰と残るわ
と片手を軽く上げて言った。

へ??
とそれに不思議そうな顔をしたのは善逸だけだ。

古参組二人は揃って
──第二段階(か)?
と聞いてくる。

──第二段階?
聞きなれない言葉に宇髄よりまず善逸が首をかしげた。
それに錆兎が頷いて見せる。

──ジュエルをメイン以外の武器に変化させることだ。ほら、俺の槍みたいに…
──あ~!!あれかぁ…。
善逸は合点がいってポン!と軽く両手を叩いた。

「メインの武器が第一段階で次のが第二段階なわけね」
「そそ」
「でもさ、俺、弓オンリーなんだけど?
てか、錆兎の槍と真菰ちゃんの鎌くらいしか武器の形が変わるのみたことない。
二種類にできんのってジュエルによるの?」

「えっとね、全員出来るはずだよ。本当はね」
と、そこで錆兎がちらりと視線を送って、どうやら主導役は真菰にチェンジしたようだ。

「そのあたりの説明はしのぶちゃん達も揃ってから全員にしていくね。
ちょっと待ってて。
それより今は話を戻す。
てことで確認。
天元君の第二段階ってさ、盾なの?」

善逸を軽く制して真菰は話の流れを4人だけ共有するつもりなあたりに戻す。
そして宇髄はその真菰に聞かれて視線を天井に向けて少し考え込んだ。

「あ~…武器的には違うな。
三節混。
だから盾と違って当たりゃあ死ぬ。
でもそれで細かい動きで攪乱することで敵を引き付けて動きを封じたりとかして避ける形で盾役にはなる。
元々な、うちの家系が諜報担ってるから、そういう動きが得意なんだよ。
これまでは相方が義勇だったから引き付けて時間稼いでも倒す奴がいなきゃ死ぬから使うことなかったけどな。
手足がいくら生き残っても頭が死んじゃ意味ねえし、総帥様がやるくらいなら俺が殿やって頭は逃がそうぜ?」

そのために自分たちは幼い頃から鍛錬を積んできたんだ、と、宇髄は当たり前に言うが、
「天元、その考え方はいい加減捨てろっ。
鬼殺隊では…っていうか、どこでも俺もお前も対等な命だ。
実家の考え方がおかしい」
と、錆兎が心底嫌そうにそれにストップをかける。

だがいつもニコイチの古参組なのに真菰はこの件については意見が違うようだ。

「うん、命の大切さはそうだけどね。
問題はそこじゃないよ、錆兎。
集団として速やかに動くためには役割分担は大切。
確かにあたしとあんた、両方が一度に欠けたら後が大変。
天元君があんたの役割を代わりに担えるなら、そこはチェンジしよう」
と、天元の意見に同意する。


「それなら真菰が撤退で俺と天元が残る」

飽くまで自分が先に逃げるということに抵抗があるのだろう。
錆兎は強固に反対するが、それに真菰は
「それもだめ。
残るなら錆兎の方だよ。
メンタル面とかはカナエちゃんでも村田君でも本部の部長達がなんとかしてくれる。
でも戦闘の仕切りはあんたがするしかないからね。
そっち方面はあたしよりあんたが中心なんだから、残された人間に必要な物をより持っている方が一緒に撤退するべき。
なんなら次の戦闘と言わず、撤退も活路を見出すために色々戦術を練らないとなんだから」
と苦笑交じりに言う。

「でも……」
「男が『でも』なんて言葉使うんじゃないよっ!
ほら、そろそろしのぶちゃん達が戻ってくるからこの話はおしまいっ。
戻ってきたら第二段階の説明に入るよっ」

納得できない様子の錆兎だったが、真菰にそう言われてそろそろ後輩組が戻ってくるので時間切れなことを悟って黙り込んだ。








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