青い大地の果てにあるものsbg_第63章_役割分担

「もういいじゃない、いざとなったら錆兎が義勇ちゃんの恋人って事にしておけばっ。
それでまだ本部に慣れてない極東組はそれぞれフォロー役がつくでしょ?
錆兎が居れば極東ブレイン支部長みたいな輩も出てこないし、天元君はそういう輩は自分で追い払えるだろうから、むしろ人間関係でのごたごたは善逸君がフォロー。
で、ぶっ飛ばした方が早そうな輩が出てきたらあたしに相談ね?
最初からあたしがつくと、逆に他の女の子達と揉めそうだし」

真菰がパンパンと手を叩いてジャスティス全員の注意をひきながらそう宣言をする。
戦闘や仕事面での統率や上への交渉は錆兎、メンタルや交流、それに生活面での統率は真菰とだいたい役割分担されているので、今回の仕切りは真菰だ。

元々宇髄の役に立とうと思っていた善逸と無関係なしのぶと蜜璃はそれに『は~いっ』と片手をあげて了承する。

しかし残りの二人、錆兎は『真菰、俺の人権は?』と、炭治郎は『なんで錆兎なんですか?俺は長男だから面倒をみるのは得意なので俺が入りますよ』とそれぞれ異を唱えた。

それに了承組の3人は苦笑。
真菰は自分より大きい二人を見下ろすためだろうか…立ち上がって腕組みをして二人を上から見下ろして言った。

「錆兎、カナエちゃんに頼まれたよね?
あんた、それ了承したよね?
でもって…蜜璃ちゃんと一緒に居た時の食堂での一件みたよね?
ああいう輩が殺到した時、全員瞬時に張り倒せるのはあたしかあんただけだからっ!
てか、ああいう輩が素直に諦めるにはあんたの恋人ってことにするのが一番手っ取り早いでしょっ!
でもって炭治郎っ!」
と錆兎を撃破した勢いで今度は炭治郎にターゲットを移す真菰。

それに
「はいっ!」
と炭治郎が思わず姿勢を正してしまうのは、彼らの間にある圧倒的先輩後輩関係によるものだ。
普段は呼び捨て推奨、普通に気の置けない様子で接するように言ってくる古参組も、何か指示を与える時は厳しい。

なので神妙な様子で見上げる炭治郎に真菰は言い放つ。

「まず恋人役があんたじゃ周りを圧倒できない。
錆兎ほどの実績がないのもあるし、フリーダムとの関係もまだ薄すぎ。
フリーダム部員達からの絶対的な信頼と畏怖を築けるようになるまで行かないと暴走は未然に防げないよ?
でもって暴走した場合…あんたじゃ多人数を吹き飛ばせないでしょ?
最低限土俵にあがりたいならまず、全フリーダム部員からさねみんと同程度には信頼されるくらいの関係を築くことと、少なくとも10人くらいは瞬時に吹き飛ばせる力をつけることっ!
前者は即できることじゃないし、とりあえずあんたがやるべきことは?!」

「はいっ!鍛えて鍛えて鍛えることですっ!!」
真菰の言葉にピシッと手を挙げて答える炭治郎。

うわぁぁ~~~でたよ、脳筋兄弟弟子…と顔を引きつらせる善逸としのぶ。

蜜璃は
「炭治郎君、頑張ってっ!!」
と心の底から応援し、錆兎は
「今の時間ならフリーダム部員も飯の奴多いし、鍛錬室選びたい放題だぞ」
と素なのか面倒ごとを避けるために炭治郎の退場を促したいのかわからないが、さりげなく誘導している。

そして
「ありがとうっ、蜜璃さん、錆兎っ!
俺、頑張ってきますっ!!」
と、素直な性格の炭治郎はそう言って食べ終わった食器のトレイを手に立ち上がって、トレイを片付けたあとに鍛錬室へと駆け出して行った。


それを見送る古参組。
そして炭治郎が完全に居なくなった時点で、錆兎が、さて…と口を開いた。

「で?最終的に炭治郎にバトンタッチということでいいか?」
と真菰に問いかける言葉に異論を唱えたのは義勇である。

「嫌だっ!錆兎がいいっ!」
ぷくぅ~っと膨れる義勇。

それに苦笑しつつ
「ごめんな?俺は正直忙しい。
何か難しい任務があれば真っ先に駆り出されるのもあって常に一緒に居てやるということができないんだ。
俺と常に一緒にいるということはその厳しさ忙しさを共有することになる」
とその頭を撫でた。

「それなら俺もそれについていくっ!
任務が忙しいのも厳しいのも極東で慣れているっ」
と義勇はそれを消極的な錆兎ではなく与しやすそうな真菰の方に訴える。

それに真菰はうんうんとわかってるよと言わんばかりに微笑みながら頷いて答えた。

「極東は支部で一番の広範囲をたった二人で担当してたジャスティス一の働き者だからね。
そのあたりは大丈夫だよ」

「…なら何故炭治郎を煽るようなことを言ったんだ?」

初めからそこら辺の人選を変えるつもりがなかったらしい真菰に錆兎は弟弟子が気の毒だとばかりに眉を寄せる。

「うん…実際にはね、炭治郎が錆兎並みにフリーダムから一目置かれるのは無理だと思うんだ。
あんたとフリーダム部員との関係は、そもそもがジャスティスになった時期とフリーダムのボスのさねみんとの関係性から来てるところもあるからね。
で、どうしてそれでも炭治郎を煽ったかというと……」

真菰は腕組みをしたままストンと腰を下ろして、う~ん…と少し考え込んだ。
そして蜜璃としのぶを少し気にする様子を見せる。

そこで空気を読むしのぶが
「蜜璃さん、デザート取ってきませんか?
真菰さんの分も取ってきますね。
何がいいですか?」
とさりげなく蜜璃を離席方向に誘導する。

「あ~。しのぶちゃんのそういう気の付くところ大好きっ。
あたしあんみつがいいなっ!」
と真菰が笑って言ったのは、”両方の意味”からだろう。

「ほら、義勇ちゃんももらっておいで?
ここの食堂はデザート食べないって選択肢はもったいなくてありえないから。
あ、錆兎はね、甘い物があまり得意じゃないけど唯一塩大福好きなんだよね。
悪いけど煎茶と一緒にとって来てやってくれる?」
と義勇に声をかけたのは、義勇もこれからの話を聞かせたくない組に入っているからなのだろう。

「じゃあ宇髄さんの分が何が良いかは義勇さん、教えて下さいな。
あなたしか宇髄さんの好みは知りませんからねっ。
さあ行きますよっ」
と、急かすしのぶ。

義勇も錆兎の分をと言われればなんだか嬉しいらしくいそいそとしのぶについていく。










0 件のコメント :

コメントを投稿