青い大地の果てにあるものsbg_第62章_目覚めにはキスをして

朝…身を起こそうとして、善逸は身動きできない事に気づく。
宇髄が自分を抱き枕のように抱えて寝ているからだ。

そこで同性でも思わず見とれてしまうくらいには綺麗な寝顔をまじまじと観察する。
少しの癖もないサラサラの銀色の髪が覆う顔は雪のように白い。
肌もきめ細かくてうらやましいくらいだ。

まつげは濃くて長く、赤みがかった茶色の綺麗な切れ長の目は今はまぶたに覆われている。
その上には綺麗な形の眉。
鼻筋も通っていて、薄い形の良い唇は軽く閉じられていた。
確か年は善逸や錆兎と同い年の17のはずだが、錆兎ほど体格がいいわけではなくまだ少年ぽさを残していて、しかし善逸と比べるとスラっとしていて大人っぽく見える。
どちらにしても息をのむくらい綺麗な人だと思う。

しかし視覚的に満たされるものを見ていたとて腹はすくのである。

──う~ず~い~さあぁあ~~ん!!

しっかりと目が覚めた善逸は抱き枕から脱出しようと善逸は頑張ってみた。
そう、頑張ってみたのだが、同じ遠隔系ジャスティスとは思えないほどの力の強さで抱え込まれていて抜け出すことが出来ない。

そうして善逸がしばらくワタワタともがいていると実は起きていたのか頭上からクスクスと笑い声が聞こえる。

それにからかわれていたのか…と思うものの、他のように善逸を落としているとか言う空気は感じない。
なので怒ることもなく落ち込むこともなく、善逸はただ呆れたようにため息をついて
──遊んでないで起きようよ。腹減らない?
と言う。

そこまではまあいい。
なんだかわからないが昨夜に極々プライベートな話をしてくれたこととかもあって、知り合って日が浅いわりには随分と気を許してくれたんだろうなどと思ったわけなのだが、その後に振ってきた
──あ~…キスしてくれたら起きるわ。ほら、義勇、キス…
という言葉に善逸はピキ~ン!と固まった。

え?え?なに?なんなの?一体っ??
と、まあ思い切り動揺したわけなのだが、何故か口にした宇髄の方も硬直する。

そして
「…あ!」
と零すなり、ガバっといきなり宇髄が飛び起きた。

「わる…い。寝ぼけて間違った」
すご~いまずい事を口走ったという感じで片手で口を覆う宇髄の顔をのぞきこむと、少し赤くなって動揺している。

「いや、冗談だからっ、まじ」
あわてて起き上がると、宇髄は
「茶でもいれてくるわ」
と寝室を出て行った。

その場に残されて呆然とする善逸。

キスしてくれたら起きるって…キスして、義勇って…???
二人ともタイプは違うが一般レベルをはるかに突き抜けた美形で確かにお似合いだけど…もう絵に描いたようなカップルに見えるけど…えええ???

善逸が我に返って着替えて居間に行った時にはもういつもの宇髄だった。
飄々としたいつもの表情でコーヒーを淹れ、
「飲んだら食堂行くか」
と何事もなかったかのようにカップを差し出す。

「え…と、さっきのって…」
カップに顔をうずめながら上目遣いに宇髄を見上げる善逸に
「冗談っ♪」
と、にっこり笑うその様子は本当に冗談だったのかと思わせるくらい余裕だ。

やっぱり冗談だったのだろうか…。
善逸は釈然としないながらも宇髄に伴われて食堂に向かった。


朝っぱらから宇髄と一緒だからか、周りの女性陣の視線が痛い。
「おはようっ、宇髄さん、善逸!」
二人を見つけて炭治郎が大きく手を振った。
朝食をトレイに乗せてそちらに行くと、ジャスティスの面々がもう全員揃っている。

「なんだ、あのまま天元の部屋にでも泊まったのか?」
珍しく錆兎も声をかけてくる。

「ああ、タオルのお礼に招待を、な?」
ジャスティス5人が陣取るテーブルに善逸と並んで腰をかけて宇髄が言うと、義勇が善逸に声をかけてきた。
「じゃあ…朝大変だっただろう。善逸」
「義勇、余計な事言わんでいいっ」
義勇の言葉に宇髄が笑みも浮かべず珍しくぞんざいな口調でいう。

大変て…あれはやっぱり冗談じゃ…
善逸が複雑な表情を浮かべたのにきづいて、義勇は小さくため息をついた。

「天元…まさかまたあれを言ったとか言わないだろうな?」
「いや…すまん。寝ぼけてて…」
宇髄が珍しく神妙な顔で言うのに、善逸は真っ赤になる。

あれは…やっぱり冗談じゃなかったのかっ。

「なに?なんかあったのか?」
3人それぞれの反応に、炭治郎が身を乗り出してきいてくる。

「誤解しないで欲しい、善逸。
あれは…単に起こされないための嫌がらせだから」
「だから、あれって何です?」
さらに聞いてくる炭治郎に言って良いものかどうか迷う善逸。

「あの…本当にするの?」
赤い顔のままちらっと義勇に目をむけて言う善逸に義勇はブンブンと思い切り首を横に振った。

「するわけないだろうっ!相手が錆兎ならとにかくっ!」
「だから、気になりすぎなんですけどっ!いったいなにがどうなってるんですっ?!」
さきほどからスルーされている炭治郎がさらにさらにたたみ掛ける。

「確かに…気になるわね…」
それまで黙っていた蜜璃まで口を開いた。

「天元は…すご~~~く寝起きが悪くて、俺が朝起こそうとすると必ず『キスしてくれたら起きる』って言うんだ」
ハ~っと息をついて義勇が言うのに、善逸と蜜璃は
「「で…するの??」」
と、声を揃える。

「だから~。できないのわかってるから言うんだっ。
するなら別の台詞考える男だっ!」
義勇は赤くなって否定した。

「で、以前ちょっと任務の関係で他の女性とお泊りした時にやっぱりその台詞言って…翌日すごい事になったんだっ!」
「だから…あれは悪かったってっ」
宇髄がそっぽを向いて言う。

「悪かったじゃすまないだろうっ。
もう!キスしてくれたらって言うのは天元の勝手だけど、その前に俺の名前つけるのだけはやめてって言ったじゃないかっ」

「仕方ないじゃないかっ!こっちは寝ぼけてるんだからっ」
「仕方ないじゃすまないっ!それから一週間大変だったんだよっ?!
ブレインのお姉さん達からは変な目で見られるし、ライバル心に火がついたストーカー達の活動が激化するはで…」

「だからそれは、その後フリフリスカート2枚やその他の買い物の荷物持ち兼財布になることでチャラにしただろうがっ!」
「でもまた同じ事してるじゃないかっ!」
延々と続く口論に苦い笑いをもらす面々。

「なんというか…なんか誤解をうむような雰囲気はあるわね…」
「確かに…何も知らずに義勇から天元君の事『彼です』って紹介されたらあたしたぶん信じてるよ」
と頷き合う蜜璃と真菰。

「宇髄さんと義勇君、どちらも綺麗系だから違和感ないよね…」
と思わずそれに同意する善逸。

しかしそこで
「宇髄さんに対しての義勇さんの気持ちはわかりました。
でもそれは別にして『錆兎ならとにかく』…とか、聞き捨てならない言葉を聞いた気がしたんですけど…」
と炭治郎はジロリと錆兎に視線をむけた。

なんだか若干険しい視線を向けられて錆兎は
──俺は無罪だ。何もしてないぞ?
と両手を軽く挙げる。

それに対して義勇が
「錆兎がキスをしてくれるということじゃなくて、俺の方が錆兎にならしてもいいということだから」
とさらにフォローにもならないフォローをいれて、炭治郎を剣呑な顔にさせた。










2 件のコメント :

  1. 明けましておめでとうございます。今年も更新(人''▽`)ありがとう☆ございます💞年明けから2ヶ所誤変換と修正漏れの報告です。「少年ぽ差を残して」→少年ぽさを…「あのまま鉄線の部屋に」→あのまま宇髄の…かとご確認お願い致します(*- -)(*_ _)ペコリ

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    1. 明けましておめでとうございます。
      もう年明けから誤字絶好調ですね(ノ∀`)
      ご報告ありがとうございます。
      修正しました😀

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