道場の端っこで小声で深刻な話をしていた二人は、そこで入り口のあたりにいつのまにか人ごみができているのに気づいて顔を見合わせ苦笑した。
「こんな時間でも沸いて出るんだな」
感心したように言う錆兎に善逸は笑いながらうなづく。
「きっちぃ…」
額に汗をにじませて宇髄がしびれる手を振ると、やはり汗だくの不死川が笑った。
「良い勝負だったぜェ。俺がここまで競ったのは錆兎くらいだァ」
「でも負けちゃ意味がない」
肩をすくめる宇髄。
最初の善逸の心配をよそに二人が笑いあいながら近づいてくると、入り口の女性陣が歓声をあげた。
「ああ?こんな時間でもおっかけられてんのか。
いずこでも権力者様は大モテか?大変だな本部長様も」
袖口で汗をぬぐってそちらに宇髄が目をやると、また歓声が大きくなる。
「いやお前の方がおっかけられてるんだろォ。
うそだと思うなら手でも振ってやれェ。
大騒ぎになるぞ」
と不死川が苦笑。
まさかやるまいと思っての発言だったのだが、
「ほぉぉ?」
と宇髄は興味深げに片方の眉をぴくりと上げて言うと、おもむろに入り口を振り返ってニッコリ笑って手を振った。
「きゃあああ!!!手を振ってくれたぁ~~!!!!」
「笑ってるわよぉ!!!素敵!!!!」
鍛錬場のある第7区全体に響き渡るような女性陣の歓声がおこる。
「…あいつは馬鹿か?…なにしてんだ」
錆兎が眉間に手をやって小さく首をふる。
「これだからイケメンはぁぁ~~!」
と善逸は叫ぶ。
「お前…本当にやるかァ?普通…」
不死川もあきれて額に手をやってため息をついた。
「お前がやれって言ったんだろ?不死川」
宇髄は悪びれず不死川に言った後、端っこで潜んでいた善逸に
「おい、善逸、タオル貸せ!
乱入者来ると思わなかったから早々にあがる予定でもってこなかった」
とさけぶ。
「お前ェ…なんて不用意な発言を…」
不死川が青くなった。
「ん?」
振り返った宇髄の表情もさすがに凍る。
「わ、私の使ってくださいっ!!」
「何言ってるのよ!私のよ!!」
「あんた達どきなさいよっ!宇髄様は私のタオルを使うのよっ!!!」
ドド~っとなだれ込んでくる女性陣にあっという間にとりかこまれ、周りで乱闘まがいの騒ぎが巻き起こった。
「お前…どう収拾するつもりだァ、これを」
不死川のこめかみに青筋が浮かぶ。
「すげえな…極東の女性陣よりずいぶん積極的だ」
即我に返ったらしい宇髄がいつもの飄々とした表情で片手で前髪をかきあげた。
その仕草にまたあがる歓声に苦笑しつつ、宇髄は素早く善逸にかけよると、その首にかかったタオルを取り上げて汗を拭き、それを女性陣の群れに投げ込んで見せる。
きゃあああぁあ~~!!!!!
あ~だ~しぃ~の~よぉぉぉおおお!!!!
どけぇぇえええ~!!!!!
とたんに起こる壮絶なタオルの取り合いに、普段は女の子大好きな善逸もさすがに怯えて宇髄にしがみつく。
それに巻き込まれはごめんだとばかりに早々に見物を切り上げて鍛錬室を出る錆兎にならって、宇髄も
──おら、この間に逃げんぞっ!
と善逸の首根っこを掴んで立ち上がらせると、その腕をとって逃亡した。
そうして唖然としている間に3人逃亡後の鍛錬室で我に返った女性陣に囲まれる不死川。
そこで彼も気づく。
自分だけ取り残されていることを…
──あの野郎っ!ぜってえに許さねえぇぇーーー!!!!
せっかくなんとか気持ちに折り合いをつけて和解しかけたところにこれで、色々な意味で女性陣にもみくちゃにされた不死川の再び燃え上がった怒りの絶叫が女性陣の嬌声に混じって鍛錬室に響くのだった。
今回は善逸関連で2ヶ所「とホップは叫ぶ」「ぜんいつの首根っこ」2個目が表現上のテクニックだったら読み取り不足ですみません_(_^_)_ご確認お願い致します。
返信削除ご指摘ありがとうございます。
削除修正しました😊
大変恐縮ですが「ホップ」残ってます( ;∀;)お暇な時にご確認お願い致します。(*- -)(*_ _)ペコリ
削除あらら…直したあとにセーブしないで閉じてしまったようです😅
削除今度こそ修正&セーブ&確認いたしました。
ありがとうございます。