青い大地の果てにあるものsbg_第54章_天元の戦闘

「…そろそろだな。この辺で車降りるぞ」
錆兎が車を止めてドアを開ける。

「天元…感知できるか?」
全員出ると、錆兎は宇髄に聞いた。

基本的には遠距離型の人間が一番感知能力に優れている。
宇髄がいない時は敵の位置を測るのは善逸の仕事だった。

「ん…直立歩行型なんだな、トカゲ。
500mくらい先から20mくらいの範囲に10~20匹。大きさはたぶん1.5mくらいか。
そのさらに5mくらい先に人影、これがイヴィル」

「で?…天元の力の効果範囲は?」
「ん~~~10mってとこ?」
「じゃあ、ここからまっすぐ510mにつっこむ。
その地点を中心に範囲頼む。
しのぶはトカゲの感知範囲外から迂回してイヴィルに向かえ」

「了解ですっ」
錆兎の言葉に敬礼するしのぶ。
しかし宇髄はそれに対し眉をひそめて言う。

「あのさぁ…いまさら言いにくいんだけど…
俺の攻撃って敵味方関係なくくらうぜ?
まともに食らったら錆兎でもやばいと思うんだけど。
…発動地点もう少しずらそう」

「ああ、まあそのあたりはなんとかするから気にするな。
お前は確実にしとめるために攻撃にだけ集中しろ」

「いや、まぢやばいって。
極東のフリーダムが毎回結構死んでるのって敵にってのもあるけど、俺の範囲くらうの前提で足止めしてたからって言うのもあるんだぜ?」
「大丈夫だし、時間がないから行くぞ」
「いや、ちょっと待った!」
踏み込みかける錆兎の腕を宇髄がつかむ。

「悪い…ちと1分でいい。心の準備させてくれ」
宇髄が言うのに、錆兎は小さく息を吐いた。
「…準備できたら言え」
錆兎が言うと、宇髄はその腕を放して右手を胸にあてて目をつぶる。

「おっけー、大丈夫」
しばらくして宇髄はそう言って
「発動…」
とジュエルに手を当てて唱えた。
それを合図に錆兎もしのぶも能力を発動させる。

「じゃあ、行くぞ。」
錆兎がタッっと駆け出しながら刀に手をかざし
「朧っ!」
と唱えると、何本もの刀がグルリと錆兎の周りを取り囲んだ。

そのまま一気に跳躍して宇髄の位置から丁度510mの位置に着地する。
その瞬間、突如現れた敵にトカゲが殺到した。

四方から向けられる攻撃を錆兎はできるだけ避け、避け切れない分は周りを取り囲んだ刀に吸収させる。
吸収した分、1本、2本と周りを取り囲む刀が減っていくが、錆兎は時間を数えつつその場にとどまって宇髄の攻撃を待った。

錆兎が駆け出した瞬間、宇髄は左手に持ったウォンドを前方に向け、スッと右手をその上にかざした。

「万物を氷つかせる冷気よ、今刃となって我が敵を滅せよ!氷撃!」
宇髄の声に応じて杖の先から白い冷気が渦となって前方に走る。

途中の大気をも凍りつかせて白い風は一直線に錆兎のいる地点に走ると、その場でパァ~ッと円状に広がり、まるでドミノ倒しのようにトカゲは中心に近い位置から円の端に向かって順番にピキピキっと固まった後、ガラガラっと崩れ落ちた。

宇髄はその様子を息をのんで見守る。
白い冷気の霧が晴れると、そこには粉々になった氷がキラキラ光っていた。
しばらくその場に立ち止まったまま宇髄はその中に目をこらす。


「一撃でこれですか。すごいですよねぇ…」
宇髄がその場で硬直していると、しのぶが宇髄の目の前にストンとジャンプしてきた。

「この前のミミズも宇髄さんがいたら一瞬でしたね、きっと」
と、心底感心したように光り輝く氷の砂を眺めている。

「こんなにすごい攻撃、私初めてみました」
そんな無邪気な様子のしのぶに宇髄は苦い笑いを浮かべた。

「まあ…俺の力は犠牲つきだから」
「ああ、さっきのフリーダムの話ですか?
でももうその心配もありませんし無問題ですよね」
しのぶがそう言った瞬間、二人の前にキキ~っと車が止まる。

「さっさと乗れ!」
と、中から錆兎が声をかけると、
「は~いっ」
と、しのぶがドアを開けて乗り込んだ。

「あ…え~っと…」
宇髄はその場で頭に左手をやる。
「どうした?」
その場に立ち竦む宇髄に錆兎はいぶかしげな顔をした。

「いや…お前何してたわけ?」
その言葉に錆兎は複雑な表情のまま宇髄に視線を向ける。

「なんだ?お前は喧嘩を売ってるのか?」
「いや…そうじゃなくて…今までどこにいたんだよ?」

「あ?」
錆兎は眉をひそめ、ああ、と合点がいったように口を開いた。

「天元の攻撃が来るの確認して、そのまま上飛んだ勢いでしのぶのフォローに入って、イヴィル倒してすぐ車を取りに行った」
「そう…だったのか」

「いいから早く乗れ!俺はちゃっちゃと帰りたい」
ぼ~っとする宇髄を錆兎がせかすと、
「ああ。悪い」
と宇髄も車に乗り込んだ。











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