青い大地の果てにあるものsbg_第53章_慢心は危険

「久々の少人数での錆兎兄さんと一緒の戦闘…楽しみですっ」
車の中で浮かれるしのぶにため息まじりの錆兎。

「お前は気楽でいいなぁ…」
「え~。だって楽しみなんですもん」
二人のやりとりに宇髄は笑った。

「まあ…錆兎、死なせたらごめんてことで」
「お前もなぁ…」
「ん~、でも、いつもは戦闘の時は結構フリーダムの犠牲だしてたしな?」

「ええ??」
しのぶが驚きの声をあげる。

「だってさ、範囲攻撃は能力発動まで時間かかるし、その間敵防いでおいてもらわないと発動中断しちまうしな。
かといって近接だけで倒すのは無理だしさ」

「まあ…唯一の攻撃手段が遠距離だとそうなるな、どうしても。
善逸にしたって瞬殺できる単体の敵以外はソロで殺るのは無理だしな。
で?ぶっちゃけどのくらいの時間敵ひきつけておけばいいんだ?」
錆兎の言葉に宇髄は考え込む。

「ん~。10秒…くらい持たせてもらえればありがたいか。
無理なら多少こっちに向かうリスクもあるけど5秒。
それがぎりぎりだと思う」

「10秒か…まあ…最高20秒までならなんとかするから、確実にしとめろ」
錆兎の言葉に宇髄はピュ~っと口笛を吹いた。

「20秒ってすごいな」
「俺は本来防御手段を持たない攻撃特化だからそのくらいが限界だが、炭治郎なら1分くらいは持たせるぞ、たぶん」

「ふ~ん…さすが本部は人材豊富だな。
つか、攻撃特化型でそれだけ持つって普通にすごくね?」

「同じタイプの真菰もおそらくそんな感じだと思うが?すごいのか?
比べようにも、しのぶと蜜璃は肉体が武器みたいなものだし、炭治郎は火力がない代わりに防御が高い盾タイプ、善逸は一撃強いが殴られたら終わる遠距離だしな。
他に知っているあたりだと、北欧支部の煉獄っていうベテランジャスティスが同じようなタイプなんだが、1回しか一緒に戦った事がないからどうなのかはわからん」

「俺さ、人材が人材なんで極東離れた事なかったから疎いんだけど、あとの4人てどんなんだか知ってる?」
宇髄の言葉に錆兎は記憶の糸をさぐる。

「確か…北欧支部にはあと一人人形使いの爺さんがいたな。それから…曲刀使いの男がいる。あと2個は確か今は空席だったような…」

「ふ~ん…じゃあ今10人か。炭治郎はバランス型と言いつつ実は防御特化だろ。
実は今いる中では錆兎と真菰が一番バランス型っぽい気が…」
宇髄は腕組みをしつつ外に目を向けた。

「まあ…そう言えばそうだが、盾タイプも他にいないからな。
善逸みたいに殴られたら終わる奴なんかと組ませると強いぞ、なかなか。
俺は…実質遊撃部隊みたいな位置が多い、今回みたいに」

「錆兎兄さんはいっつもちゃっちゃと自分の担当終わらせてみんなの所回ってきてくれますよねっ」
しのぶが他にはめったに見せない満面の笑みで言う。

「兄さんが居るとやっぱり気が楽っていうか、安心ですっ」
「んじゃ、これからヘルプやめておくか」
「なんでですかっ?!」
錆兎の言葉にしのぶがぷうっとふくれた。

普段は実年齢よりも理知的で落ち着いていると言われているしのぶだが、姉のカナエや錆兎と居ると年相応の少女の顔になる。
普段は綺麗という表現が似合う少女だが、今のクルクルとよく動く表情はどこか幼くて可愛らしい。

だがそのあたりに釣られることもなく、錆兎は容赦ない言葉を口にした。

「慢心や油断は隙を生むし、それに慣れるとソロで死ぬ」
「確かにな」
その錆兎の言葉に宇髄はクスっと笑いをもらす。

「錆兎、相変わらず…いい奴すぎんだろ」
「なんだそれは?」
「いやいや、適当に甘い事言っておけば心証いいのに、わざわざ憎まれ役買って出るとこが。
そのくせそういう場面になったら絶対に助けずにはいられないだろ」
「いや、見捨てる」
「嘘つけっ」
「ああもう勝手に言ってろっ。お前がそういうことになったら情け容赦なく見捨ててやるっ」
ムスっという錆兎の言葉に宇髄はさらにクスクス笑い出した。








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