青い大地の果てにあるものsbg_第50章_吹き飛ばしたい

──………このままじゃダメだっ!俺も鍛えないとっ!!
ふわふわの衣装を着た二人の笑顔でほんわりとした空気が漂う食堂の片隅で、炭治郎は拳を握り締めて言った。

その唐突な発言に隣で食後のお茶をすすっていた善逸は
──え?なに?今の状況にそんなこと感じる何かがある??
と首をかしげる。

──あるだろうっ!俺は皆を守るタンクなんだぞっ!
と返ってくる言葉。

──うん…それは知ってるけどさ。…あの笑顔を守りたいとかそういう系?
──それもあるけどっ!!俺じゃ防げても吹き飛ばせないっ!
──あ~、そっちっ?!
──当然だろうっ!!

善逸はそこでようやく炭治郎の言葉の意味を察した。
どうやら義勇と蜜璃が笑顔でランチを満喫できている現在の前に起こった出来事について言っているらしい。

男所帯で華が限りなくない鬼殺隊の中でもさらに男率の高いフリーダムの面々を中心に、可愛らしい格好で寄り添っている蜜璃と義勇の隣の席を得ようと争いが起こった時に、どうやら義勇に助けを求めて呼びだされたらしい錆兎がそのほとんどを剣圧で吹き飛ばしてことを収めたのだ。

確かにあれは炭治郎では…というか、おそらく真菰と錆兎以外では無理である。
炭治郎は確かに強いがアタッカーの彼らとは強さのベクトルが違う。

炭治郎は味方を背に守って盾で攻撃を防ぐが、自身の攻撃で相手を叩き伏せ…あるいは跳ね飛ばすことで攻撃が来ないようにするのが彼らの守り方だ。

彼らの場合、本来は守るための行動ではないため、相手の方が強ければ当然守るという能力についてはないも等しい状態になるし、そうでなくとも打ち漏らしがあれば自分も後ろにかばっている相手も怪我を負う。
その点炭治郎は後ろに守る相手の代わりに自分が盾で攻撃を受けるので守ると言うことには特化しているが、逆に彼らと違って炭治郎だけでは敵は減らない。

それを善逸が口にすると、炭治郎は
──盾でも鍛えれば吹き飛ばせるんじゃないか?
と、トンデモ理論を展開し始める。

「いやいや無理でしょっ!
あれはリーチの長い武器を振りまわした風圧でやってることだから…。
盾は表面積はでかいけどリーチ短いしそれこそ盾の端を持って団扇みたいにあおぐでもしないと無理だけど、そんなことしたら盾の意味がなくなるよっ」
「それでも…思い切り振りまわせば…」
「無理だってっ!」
「いや、どんなことでも鍛錬して努力すればなんとかなるって言ってたっ!」
「…誰が…?」
「錆兎と真菰っ!!」
「…うっわぁ……」

もうあの脳筋コンビニ聞けば何を聞いてもそういう答えが返ってきそうで善逸はひきつった笑みを浮かべる。


──ということで行くぞっ!!
一瞬の沈黙を納得とみなしたのか、炭治郎がガタっと立ち上がる。
…どこへ?…ということはわかっているような気もするが聞きたくない。

善逸はその代わり
──俺は関係なくない?
と言うが、炭治郎は何を言うっ?!という顔をして
──善逸も非常時のために少し鍛えた方がいいぞっ!一緒に鍛錬しようっ!!
と有無を言わさず善逸の腕をとって立ち上がらせた。

こうなるともう炭治郎のことを止めるすべはない。
善逸は諦めて適当なところで抜けようと食べ終わった食器のトレイを手に大人しく炭治郎に引きずられていった。







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