青い大地の果てにあるものsbg_第45章_お姉ちゃんが語るお兄ちゃんの気持ち

──じゃ、これで解決…かな?もう行って良い?私も帰ったばっかでちょっと休みたいんだけど…
と、不死川を見送って真菰が大あくびをする。

──ええ、真菰ちゃん、ソロ任務のお願い続きでごめんなさいね。ゆっくり休んで。

そう、真菰は義勇と蜜璃が出かけている最中にひょこっと現れたイヴィルを征伐するのに駆り出されて戻ったばかりだった。

全員で行くほどではない規模の敵が出ると、たいていはソロでも動ける真菰か錆兎が担当することになる。

錆兎と真菰は2対1か1.5対1くらいの割合でやっているので錆兎に比べれば若干少ないとは言え、それでもなかなかにヘビーなスケジュールだ。
カナエもそれをわかっているだけに非常に申し訳なさそうな様子を見せる。

──まあ…ね、新人との関係は最初が肝心だから今回は仕方ないね
と言いつつ、こちらも不死川に続いてブレイン本部から出て行く真菰。

それをさらに見送って、カナエはようやく義勇と蜜璃に向き合った。


友人というのは似てくるものなのか…あるいは似た者同士で友人になったのだろうか…。

──というわけで…義勇君も蜜璃ちゃんもお疲れ様。出動ありがとう
と実に慈愛に満ちた優しい笑顔で言う彼女に姉を思い出してほんわりする義勇。

書類を提出後、姉の蔦子に報告がてら送るからと改めて蜜璃と一緒に写真を撮られる。
そうして極東支部と同様にどこか優しい雰囲気のブレイン部員達に囲まれて記念写真も撮っていると、ぐぅぅ~~!!と盛大になる蜜璃のお腹。

「やだっ…恥ずかしいわ」
と両手を頬に当ててはにかむ蜜璃だが、誰一人からかう様子もなく、むしろカナエは
「頑張って戦ってきたんだもの。お腹もすくわよね。
これでお仕事の報告も蔦子ちゃんへの報告も終わりだから、蜜璃ちゃん、義勇君を食堂に案内してあげてくれる?
まだ行ったことないから」
と、フォローをいれてくれる。

「あ、はいっ!そうですねっ!!」
と、そのカナエの言葉に俄然元気になった蜜璃は
「本部の食堂はね、ご飯もデザートも種類がいっぱいで美味しいのよっ」
と飛び跳ねんばかりにはしゃいで義勇と手を繋いでブレイン本部をあとにして食堂へと足を向けた。

その後ろ姿にカナエが最後に
──真菰ちゃんが触れなかったから私から一つだけお願い
と声をかけるので二人して足を止めて振り向いてカナエに視線をむける。

その二人…というか、義勇にカナエは少し迷った末、さらりと綺麗な髪を揺らして小首をかしげて笑みを浮かべて言った。

「あのね、不死川君はたぶんすごく良いお兄ちゃんで、弟さんや妹さんのことは誰よりも大切に思っていたと思うのね。
だから仕方がないことなんだけど、その一人が宇髄君の攻撃で亡くなったのは本人的にはなかなか割り切るのが難しいの。
私だって妹のしのぶが同じように亡くなったら理屈ではわかっていても相手に普通に笑顔で接することができるかわからない。
たぶんね、蔦子ちゃんだってもし義勇君が同じように亡くなることがあったらそうだと思うわ。
逆に義勇君だって大切なお姉さんである蔦子ちゃんがそうやって味方の攻撃で亡くなったら割り切れないものがどうしても残るでしょう?
だから…なるべくだったら弟さんの話題は不用意に出さないようにしてね?
義勇君や宇髄君から見たら確かに任務だから仕方ないことだというのは、周りも本人もわかっているけど、どうしても傷つくし、辛い思いが消えないの。
八つ当たりをしちゃうこともあるかもしれないけど、その時は出来れば黙って受け流してあげてくれないかしら。
あとで私達に苦情を言って来てくれても良いから…」

カナエの言葉で姉の蔦子だったら…と自身の身に置き換えてみて初めて、義勇はそれが”仕方ないこと”ではないことに気づいた。
天元は文句を言われるたび反発をして、敢えて文句を言う側にキツイ言葉を返していたが、それが姉だったとすれば確かに傷つくし、天元を恨んでしまうだろう。

そう思ってしまえば、友人や家族を失くした相手に自分も随分とひどい言葉を投げかけてきた気がする。
仕方のない事だったとしてもせめて相手の気持ちに寄り添うべきだった。

気づいたその気持ちをそのまま口にすると、カナエは姉に似た慈愛に満ちた笑顔で
「そう思ってくれて嬉しいわ。
義勇君は優しい良い子ね」
と頭を撫でてくれたあと、
「引き留めてごめんなさいね?
じゃあ、蜜璃ちゃんに案内してもらって美味しいものをいっぱい食べていらっしゃい」
と手を振って送り出してくれた。








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