青い大地の果てにあるものsbg_第43章_真菰ちゃんパンチの威力

──なあに?またなんか行違ってる?とりあえず喧嘩両成敗で両方に拳骨落とした方がいい?

素早さとフットワークの軽さでは定評のある古参組だが、今回は真菰の方が早かったようだ。
しかし辿り着くなり笑顔で鱗滝式脳筋解決法を提示する。

うわぁ~…と一気に苦笑いが広がる部内。

しかし真菰がそこで食べようと思っていたのだろうリンゴをグシャっと勢いで握りつぶしたところで、皆から笑顔が消えた。

これまずい…。
一番まずい相手を召喚しちゃった?
と、さすがに気づいた副部長が再度必死に携帯を鳴らす。

──で?より悪いのはどっち?一応あたし利き手は左手だから…多少強さに差はつくよっ

言われて不死川が即
──俺は悪くねえっ!!
と叫ぶと、義勇もやや遅れて
──先に喧嘩を売ってきたのは不死川の方だ
と主張した。

──ああ?先に売ってきたのはお前だろうがっ!!
──入ってくるなり保育園の子ども扱いした
──その前にうちの部内でてめえが俺に失礼な奴とか言い捨てて逃げやがっただろうがっ
──それは不死川が人をお嬢ちゃんとか馬鹿にしたからだろう?
──それはてめえがそんな恰好してっから…
──やっぱり馬鹿にしたんじゃないか
──ちげえよっ!本当に女と間違っただけだァ!!
──…お前の目は節穴か?
──てめえ、また喧嘩売ってんのかァ?!!

──スト~~ップ!!!

二人がだいぶエキサイトして周りが見えなくなってきているところで、真菰が停止をかけた。
…腹の底から出るデカい声で……

キ~ン!!と耳をつんざく大声に皆頭がぐわんぐわん揺れて無言になる。

そんな周りの反応を全く気にすることなく、真菰はむしろ──よしっ!と満足そうに頷いて、クルリと蜜璃を振り返った。

そして
「とりあえず…蜜璃ちゃん、擬音語も感想も要らない。
フリーダム本部のフロアに足を踏み入れてからあたしが来るまで物理的に何があったかを全て教えて」
と、うながした。

その後、そんなこんなで蜜璃から時系列に沿ってそれぞれの言動を聞き終わった真菰は、はぁぁ~とため息一つ。

それから気を取り直したように顔を上げ、笑顔で宣言する。
──これから真菰ちゃんが話し終わるまで口挟んだ人間は真菰ちゃんパンチだよっ☆

真菰ちゃんパンチ…つまり実質死刑…

さすがにブレイン本部長と共に部内の権力者である激怒の不死川も、空気を読む気は欠片もない絶賛おこ中の末っ子義勇もそれには大人しく頷いた。


──まずね、義勇君。君は女の子と間違われても仕方ない。
いきなり言われて義勇はぷくりと頬を膨らませるも、真菰ちゃんパンチ怖さに声は出さない。

その反応に真菰はよしよしと少し背伸びをして自分よりも背の高い義勇の頭をなでながら、
──言いつけ守って良い子だね。
と言ったあと、
──仕方ないって言うのは悪い意味で言ってるわけじゃないよ?
補足する。

「えっとね、一般的には君が今着てるのはレディースなわけね。
男の子が着ちゃいけないって法はないし着ても良いんだけど、女の子が着るって前提で作られているんだよ。
だから服を見てパッと見で、ああ、この服は女の子だなって認識しちゃうのが多数なの。
ただ確かにね、普通はね、違和感感じるんだよ。
女の子の服着てても、男の子っぽさが出るっていうか、さ。
でも義勇ちゃん、顔立ちもそんじょそこいらの女の子が太刀打ちできないレベルで可愛らしいし、身長も女の子の蜜璃ちゃんとほぼ一緒。
胸は…まあないけど、貧乳の子もいるしね。
だから今の君をみたら大抵の人間はめちゃくちゃ可愛いお嬢ちゃんって思うと思うよ?
と言うのが大前提。
今の君にお嬢さんって言ってくる奴がいたとしても怒らないでね?
それだけその洋服が似合ってるってことだと思っていいよ」

こちらもお姉さんオーラ満載の真菰に優しく言われて義勇は少し機嫌を直してコクコク頷く。

──だから俺は悪くねえ…
と、そこで油断をしたのかボソリと呟いた不死川の横を何かがすっ飛んで行って、後ろの壁に穴が開いた。

──次に言いつけ破ったら顔面に真菰ちゃんパンチね?
と良い笑顔で言う真菰に青ざめながら頷く不死川。

──じゃ、話進めるよ~!
と真菰はそこで何事もなかったかのようにまた続けた。









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