青い大地の果てにあるものsbg_第41章_フリーダム本部で売る喧嘩

「おおおーーーー??!!!」

蜜璃と義勇がピンクとブルーという色違いの可愛らしいワンピースに身を包んで、仲良く手をつなぎながら帰還報告にフリーダム本部に入ると、黒一色の制服に身を包んだフリーダムの部員がいっせいに歓声をあげて立ち上がった。

「…あれって…蜜璃ちゃん?いつもよりちっちゃくね?」
「なんだかいつもより可愛い気がする」
「なんだよ、お前、しのぶちゃん派で蜜璃ちゃんはないって言ってただろっ!」
「そういうお前こそ真菰ちゃん派だったじゃねえかっ!!」
「いやいや、蜜璃ちゃんは普段から可愛かったっ!俺は知ってたっ」
「つか、隣の子もめっちゃ可愛いっ!」
「なにこれ目の保養すぎっ!癒されるっ!」


「お前ら...恥ずかしいからやめろ...」
男所帯の面々の悲しいくらいあからさまな態度に、部長の不死川は顔をしかめて眉間に手をやる。

「もう少し休んでいらしてはいかがですか?今お茶いれますからっ!」
椅子を持って走ってくる者、給湯室に走る者。
部内は一気に浮き足立っていた。

そんな面々に
「てめえらァっいい加減にしやがれっ!!
ジャスティスは忙しいんだから、引き留めてやんなっ!!」
と、不死川はゴン、ゴン、ゴンと拳骨を落としていく

今日の不死川の怒りは自分に向いているわけではない。
そうはわかっているのだが、不死川にいつも怒られている身としては、今日も絶好調の彼の怒鳴り声についつい少し距離を取ってしまう蜜璃。

(…書類…出さないのか?)
と、義勇が不思議に思って小声で聞くと、
(…えっと…なんか怒っているみたいだから…不死川さん。
雷親父っぽいところも素敵できゅん!とするポイントではあるんだけど、怒られるとやっぱり怖いのよね…)
と少し困ったように笑う。

(ふ~ん?別に俺や蜜璃に怒ってるわけじゃないみたいだけど…)

フリーダム界隈から悪意を持たれるのは不本意ながら慣れている義勇は蜜璃の手から書類をとってテチテチと不死川の所まで行くと
──これ…
とそれを突き出した。

それを見て蜜璃は、ああっ!と思う。

そして、(…せめてこれをお願いしますって言わなきゃ、義勇君っ)…と心の中で思いながらハラハラと見守るが、態度に関してはうるさいが言葉遣いに関してはこだわりのない男なのだろう。
不死川は当たり前に
「あ~、ご苦労さん。怪我とかしなかったかァ?お嬢ちゃん。
軽くでも攻撃くらったりしてたら医療部に行って手当してもらっておけよォ?」
と義勇の頭をポンポンと軽く撫でた。


その様子に蜜璃はほぉぉ~~っと安堵の息を吐き出す。
…が、安心するのはまだ早かったようだ。

不死川の返しに義勇がぷくぅ~~っと頬を膨らませた。
そして言う。

──お嬢ちゃんじゃない。失礼な奴だな。
──は??

いきなりかまされてぽか~んと呆ける不死川。
周りも驚いて固まった。

唯一蜜璃がフォローに走るために動こうとするが、義勇は
──もういい。忙しいから行く。
と固まっている不死川達を放置で今度は蜜璃の方へとテチテチと戻って来て、
──蜜璃、行こう。次はブレインだよね?
と蜜璃の手を握ってブレイン本部の方へと引っぱっていく。

──え?え?でも……

蜜璃はオロオロとフリーダム本部の部室を振り返りつつも、ここで自分が戻って適切なフォローをいれられるかと言うと無理そうなので、あとで真菰あたりに事情を報告しておこうと、今は義勇に引っ張られるままブレイン本部を目指すことにした。








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