青い大地の果てにあるものsbg_第40章_熊からShopを守る方法

こうして楽しくお茶をしながら4人で洋服談義。

──お姉さん、スタイルめっちゃいいよね。
──うんうん。スリム系が似合う服もあるけど、やっぱり凹凸あると可愛いの多いよね。
──わかる!胸下切り替えのデザインとかは胸ないとなんか違う。
──あ~、お兄さん、そういう時はパッドいれんの、パッド。
──でもズレたら最悪だよね~。自前、いいなぁ~

と少年二人と少し胸が控えめな少女が揃って羨望の眼差しを送ってくる。

これまで華奢な真菰やしのぶと比べられてあまり良い思い出のない体型の話で、そんな風に言ってもらえるとすごく嬉しいがなんだか照れてしまう。

ありがとう!とだけ言っておけばいいのだが、どうしても──でも…大女だから可愛げがないでしょう?とマイナスなことを付け足してしまう蜜璃に少女は──なんで??とまるで突拍子もない発言を聞いたように驚いてみせた。

──少しでも大きい方がね、大好きなD-shopの服を着られる面積も見せられる面積も増えるんだよ?!!

と、少女のその言葉に蜜璃の方がびっくりだが、彼女の隣の少年の方はそれを当たり前だというように大きく頷く。

さらにまあ少年の方が少しばかり精神年齢が大人なのだろう。

「お姉さん、背が高いだけじゃなくてすごく均整が取れてて綺麗な体型だからね。
言うほど大きくは感じないよ?
もしかして普段小さい人と一緒に居たりするんじゃない?」
と、客観的な観点から蜜璃の現状を見事に当てて見せた。

おぉ~!と感心する蜜璃。
コンプレックスがサラサラと砂のように崩れ落ちて消えていく。


今日は思い切ってここまで足を運んで良かった!
と蜜璃がしみじみと思った。

しかしそんな会話をしながら何故かひな鳥のようにア~ンと口を開けて待っている義勇の小さな口に自分のパフェのアイスをすくったスプーンを運んでやっていると、正面に座っている少年少女の後方からこちらにむかって大勢の人間が悲鳴をあげて逃げてくるのに気づいて立ち上がる。

それに他の3人が驚いたように蜜璃の視線の先を追った。
思わず駆け出しかける蜜璃だが義勇はその腕をとって制止をかけ、携帯を操作する。


──天元…こっち、何か起こってる。

かける相手は当然のように長年二人でやってきた相方だ。
かけられた天元の方もこちらにかけてくるつもりだったようである。

「あ~今こっちからもかけるつもりだった。
ちょい大型の熊が一体そっちに向かってるらしいぜ?
他に敵影はないらしいから、たぶん敵の実験体とかが何かの拍子に逃げ出して暴走してるとかっぽい。
蜜璃は普段ソロやんないらしいから、一応なるべく被害が出なさそうな方向に誘導しつつ、応援を待てってさ」

応援…来るまでにはおそらく数十分かかるだろう。
しかしショップから200mくらい離れた噴水広場のあたりに3mくらいはある熊が現れる。

…このままじゃ…shopが……
4人全員が同時に呟いた。

そして蜜璃が
──応援…間に合いそうにないわよねっ!
と意を決したようにそう言って
──美・愛・優しさを司るローズクォーツ、力を貸してっ!モディフィケーション!
と両手を広げ、ピンク色の光に包まれた。

綺麗なピンク色のジュエルが形を変えたナックルが装備された手をジッと見て、よしっ!と自分を奮い立たせるように気合を入れる。

それを見てそれに呼応するように義勇も
──慈しみの愛で包み込もう…宝玉サファイア、モディフィケーション
と胸元のペンダントに手を添えると、青色の宝石は光を放ち、珠となって義勇の手の平に収まった。

そんな二人に少年少女が驚いて固まり、次の瞬間、
「お姉さん達、もしかして正義の味方とか?!
D-shopの服着た魔法少女?!!カッコ可愛いっ!!」
とキラキラした目ではしゃぎだす。

その言葉に覚悟が決まったのか蜜璃が
──D-shopだけは犠牲にさせないわっ!!
とキッと前方に強い視線を向け、義勇は
──大丈夫…俺、フォローだけは最強だから蜜璃に怪我はさせない
と静かにキレイな笑みを浮かべる。

そして義勇がそのまま
──神秘の力よ…光の加護を
と手を胸の前にやり、祈るようにつぶやくと宝玉から白く輝く光が飛び出し、それは防御をあげる光のヴェールとなって蜜璃を覆う。

続いて
──神秘の力よ…風の加護を
と唱えると緑の光が蜜璃の体を軽くすばやくする。

最後に
──神秘の力よ…炎の加護を
との義勇の声に、蜜璃のナックルが赤く燃え上がった。

もちろん本人に熱さはない。

蜜璃はその間もの珍しそうにピョンピョン飛び跳ねたりしていたが、必要な強化が終わると、
──よ~しっ勝てる気がしてきたわっ!」
と両手を上にあげて軽くジャンプしたあと、
「んじゃ、行ってくるわねっ!」
言い置いて熊に向かって跳躍した。


一体とは言ってもかなり大型の魔導生物。
普段だとしのぶか炭治郎と二人で倒すくらいの敵だ。

ソロでこれを殺れるのはおそらく錆兎か真菰…それに感知される前に先制攻撃できた時の善逸くらいだろうと蜜璃は思った。

しかしまあ…後ろには治癒系ジャスティスの義勇が控えているわけだし、怪我を瞬時に治し続けてもらえたらそのうち倒せるか、最悪応援がかけつけてくれるはず。
でも…せっかくお揃いで買ったワンピースがダメになっちゃうかしら…などと考えながら、蜜璃は敵と対峙した。

敵は跳躍する蜜璃に向かって噴水わきにあった植木鉢をなげつけてくる。
普段なら軽く避けるところなのだが、蜜璃はふと後ろの義勇や少年少女の位置が気になって一瞬反応が遅れた。

(やばっ!)
衝撃を避けるように思わず手で体をかばうが、衝撃はこない。
風圧すら感じさせずに、植木鉢は光のヴェールに阻まれてストンとその場に落下して割れた。

「あら?」
一瞬驚いてそれに気をとられるが、すぐ蜜璃は敵に神経を集中させる。

敵はするどい爪が伸びた手を振り回して蜜璃を捕らえようとするが、その敵の動きがやけに遅く感じた。
余裕で敵の顔の前に飛び込むと、とりあえず動きを止めようとその眉間に軽くパンチをいれる。

「あらら?」
軽く...だったはずなのだが、拳は熊の眉間深くめり込み、血飛沫をあげながら熊の巨体がゆっくり後ろに倒れた。

即死...だった。

ストン!と地面に着地して、敵が確かに死んでいるのを確認すると、本部に連絡を入れる。

「もしもし、カナエさんですか?終わりました。応援大丈夫です」
「え?終わった??」
電話の向こうでカナエが珍しく間の抜けた声をだした。

「ええ。今敵の死亡を確認しました」
「嘘...まさか一人で倒した...とか言わないわよね?」
恐る恐る、と言った感じで聞いてくるカナエに蜜璃は答える。

「正確には義勇君の支援つきですけど…。戦闘したのはあたし一人です」

電話の向こうでカナエが一瞬絶句する。

「というわけでこれから報告に戻ります。魔物の清掃だけお願いします」
言葉のないカナエにそう宣言して、蜜璃は電話を切った。

そして能力を解除したあと、自分の身の回りを確認してにんまりとする。

「良かった~、服も無事だわっ」
蜜璃がぴょんぴょんと軽い足取りでやはり能力を解いた義勇達の元に戻ると、義勇と少年少女の3人が
「お帰りなさいっ。お疲れ様」
と笑顔で迎えた。

「じゃあ…名残惜しいけど、お仕事の報告しないとだから…」
とその後、蜜璃と義勇は少年少女と分かれた。
そして時間が出来たらまたここに来ようと楽しく話しながら帰路についたのだった。










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