声をかけた相手はもう一人の極東ジャスティス…宇髄だった。
彼はそんな錆兎の問いにこちらもしのぶと同様、平静を装いながらもどこか嬉しさのにじむ様子で
──…良いのかよ?
と聞いてくる。
──何が?
と、宇髄のその言葉に錆兎はきょとんと眼を丸くした。
──??…別に構わんが??隠すようなことでもないだろう?
──…そうかよっ…
と返す時にはもう完全に口角が上がっている。
ああ、宇髄が知り合いのようなのに自分から錆兎について言及しなかったのはもしかしてフリーダムに嫌われている自分と知合いだと錆兎に迷惑をかけるからだったのか?…とそのやりとりを見て善逸は秘かに思った。
…が、それはすぐ誤解だとわかる。
まず最初に真菰が
「錆兎の口ぶりからそうかな?とは思ったけど、やっぱり知り合いだったんだ。
で?どういう関係?」
とみんなが気になっている点を口にすると、錆兎は
「あ~…親戚?」
と言い、宇髄はその言葉に首を横に振って
「親族ではあるけど、身分が違う。
うちの一族の絶対者な頭」
と言って、
「違うだろ。
“元”跡取りなだけだ」
と錆兎にため息をつかせた。
「簡単に言うと田舎の里全体が親族って言う一族で、遠い先祖が武家なのもあって上下関係に厳しくて上の言うことは絶対なんだ。
で、俺は宗家の長子で跡取りだったんだが、ジャスティスに選ばれて里を出たから今では弟が跡取りをやってるはずだ」
と、錆兎はさらに説明を付け加える。
「ふ~ん?
今は実家関係からすると一般人?」
「ま、そういうことだな」
と言う真菰の質問に頷く錆兎だが、一方の宇髄はそれに首を横に振った。
「こいつカリスマ過ぎて、分家の次代の跡取り達が他のお館様を頂く気はねえってことで今絶賛家出状態。
あ、俺の兄貴もだけどな…。
おっかけようとしたら里に帰れって拒否られたけど弟に仕える気はねえって今里離れてる」
「マジかっ?
じゃあ今鉄線どうなってんだ?」
「親父が現役だから無問題じゃね?
俺もジャスティスに召喚されたからあとは知らね」
ローカルネタについていけない一同。
そんな中でかろうじて話題にしがみつく真菰が聞く。
「え~っと鉄線って?」
「ああ、元々が某武家の末裔の隠れ里だから苗字を名乗る習慣がなくてな。
一族は家を家紋で呼んでるんだ。
本家が檜、諜報中心に動くのが鉄線。戦闘集団の河骨。
俺は檜で天元は鉄線な。
でもまあ俺に関して言うなら、本家の嫡男って特別な存在過ぎたから、継げないってわかった時点でなるべく実家とは距離を置いてやらないと後を託される弟が大変だろ?
だからもう全部かなぐり捨てる意味でこっちに来た時に世話になった鱗滝さんの苗字を名乗らせてもらうことにしたんだ。
宇髄もそんなとこだろ?」
「いや?俺は鬼殺隊に入った当初は鉄線名乗ってたんだが、しばらくしてちょっと色々あって里に戻った時に本家と揉めて、それから母方の遠縁の宇髄姓を名乗ってる」
「…貴兎と揉めたのか?」
「あの馬鹿様すっげえむかつくわ。
お前の方が数倍マシ」
「…いつくらいの事なのかは知らんが、あいつもいきなり跡取りにされて混乱していたんだと思う…」
「いや、そういう問題じゃねえよ。
ほんっとに器じゃねえ、あいつは」
どんどんローカル化していく話題に周りが付いてこられないことに気づいたらしい。
そこで錆兎が
「というわけで、とりあえず俺の親戚ってことで認知しておいてくれ」
とその話題を切り上げた。
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