青い大地の果てにあるものsbg_第35章_構いたい者、構われたい者

──…というわけで…炭治郎とか炭治郎とか炭治郎とか一部納得できない面々もいるみたいだから…

二人がルンタッタと駐車場のある第八区に向かうのを見送って、真菰が
──あんたなんでいきなり初対面の義勇君を部屋に泊めることになったの?
と実に良い笑顔で錆兎に言った。

ああ、それかぁ…そうだよなぁ…と頭を掻きつつため息をつく錆兎。
おそらく少しばかり話を脱線させ気味な義勇を外に出して、さらについていこうとした炭治郎を引き留めたのは、そういう意図もあるのだろう。

まあ…鬼殺隊は圧倒的に男女比は男に傾いていて、ゆえに同性に恋情を持ったりする人間も少なくはない。

そういう意味では少数派とは言えないものの、なんとなく恋愛対象は異性であろうと思われる炭治郎が何故義勇に執着しているように見えるのかが不思議ではあるのだが、まあ、極東組に関してはまだ互いに人間性その他を把握していないのだから、情報は共有しておいて悪くはないだろう。

なので
──あ~…なんというか…なぁ…
と少しばかり悩みながらも昨夜バルコニーに出て義勇を見つけてからのことを順を追って話し始めた。

そうして全て話し終えると、
「…っていうわけでなんだか懐かれたみたいで…
まあカナエに頼まれているということもあるし、戦闘的にもたぶん真っ先に特攻する俺と真菰が一番ヒーラーが必要になるからな。
しばらく俺が面倒をみようかと…」
と今後の方針を口にすることで締めくくる。

それに
「…俺もバルコニーに出ていれば良かったです…。
ヒーラーって言う意味だと一番攻撃受ける盾の俺が一番必要じゃないですか?」
と炭治郎が少し納得がいかないといった風に言うが、その言葉に関しては真菰が
「炭治郎は本業盾だから丈夫で攻撃に耐えられるようにできてるからね。
あたしたちはほら、本来はアタッカーで盾じゃないけど敵を引き受けなきゃいけないことが多いから、大丈夫じゃないアタッカー優先だよ」
と容赦なく斬り捨てた。

錆兎は状況によっては交渉の余地があるが真菰の言葉は常に決定事項だと言うのは本部のジャスティス周りの暗黙の了解なので、炭治郎も引き下がるしかない。

目に見えて肩を落とす炭治郎の様子に、彼を新人時代から面倒をみていて弟分のように可愛がってきた錆兎は少し可哀そうになったのか、
「まあ俺も真菰も古参で一番色々頼まれるから忙しい。
一人を構ってばかりもいられないから戦闘時以外には早く本部に慣れるように面倒をみてやれ」
と、ぽんぽんと頭に手をやりながら、苦笑した。

そんな炭治郎と錆兎に何故か不満げに膨れるしのぶ。

それに気づいた真菰がアイコンタクトを送ると、錆兎はちらりとそちらに視線を向けて、
「あ~…姉がブレイン本部長で色々融通利かせたい時に話を通しやすいしな。
しのぶも頼むな?」
と、しのぶの頭もぽんぽんと軽く叩く。

──…錆兎兄さんがそう言うなら…仕方ないですねっ
と、渋々と言った感じで…でも構われたことでどこか嬉しそうな表情を隠しきれないしのぶの反応に、とてつもない数の彼女のファンの男たちが羨望のまなざしを錆兎に送った。

そんな周りの反応にも慣れたものでそちらは微塵も気にする様子もないが、もう一人どこか面白くなさそうな顔をしている人物には気づいて苦笑する。

そして
──あ”?なんだよ?
と、どこか年相応な顔をした相手のやや棘のある言葉に、ただ笑みを浮かべて
──久しいな。元気だったか?
と声をかけた。







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