青い大地の果てにあるものsbg_第33章_長子と末っ子

(あの子が…極東から来た新人の子?)
(めっちゃ可愛くないかっ?!)
(…えっ?…でも極東のジャスティスって確か二人とも……
目の前の面々のみならず、かなりの数の人間がこちらを注目している。

「もうちっとちゃんと自己紹介できないのかねぇ…」
あきれたように言って見上げる宇髄の言葉に
「だって…他に何を言えばいい?」
と困ったように右手のこぶしを口元にやる。
その仕草にまた萌えまくる周りの面々。

「じゅ…充分ですからっ!もう姿見せていただけただけで充分ですっ!」
炭治郎がガタっと立ち上がって言った。
その言葉にやっぱり関係ない周りの男たちがウンウンとうなづく。

「んで?お前昨日どこにいたんだよ?
こっちの坊ちゃんは昨日から夜通し探しててくれたらしいぜ?」
宇髄は炭治郎を指差して言った。

「あ…そうだったんだ。心配かけてごめん」
義勇はペコンとお辞儀をする。

「いえ、とんでもない。ご無事で良かったです。」
「んで?」
炭治郎の言葉にこの話題は終わりとばかりに、宇髄は先をうながした。

「え?」
「だから、どこにいたん?ちゃんと着替えてるって事は野宿じゃないよな?」
「あ、そのことか…。うん。ちゃんと部屋で寝た」
「部屋って…自分のじゃないよな?砂ちゃんいただろ」
「うん。えとね…錆兎の部屋」

ピキ…ンと空気が凍った。
(…何故いきなり錆兎兄さんの部屋…?)
(…錆兎に限ってそんな事あるわけが…)
しのぶと炭治郎はそれぞれ硬直したままボソボソと呟いている。

彼らの周りの面々も硬直したまま噂しあって、カフェテリアは雑然とした空気に包まれた。
そんな中ただ一人、なんとなく事情を察しながらも念のためと宇髄が頬杖をついて義勇を見上げる。

「お前相変わらず省略しすぎだろ。
ちゃんとどういう経緯で知り合ったどういう関係の相手か言えよ」
「えと…あのね、本部のジャスティスで…すごく強くてね…」

(…知りたいのはそういうことじゃなくって……っ)
色々勘違いしている周りの面々がざわめきたつ。

「えっと…?」
義勇が困ったように錆兎を見上げた。

周りの視線もいっせいに彼に向けられる。
もしかしたら何かの間違いかも…と誰もが一瞬考えた可能性が覆された。

両手におそらく自分の分と義勇の分の朝食のトレイを持って立つ錆兎は
「…脱走中にバルコニーから落ちかけていたのを助けてそのまま部屋に送っていったら極東のブレイン支部長が居てな。
一人は怖いと泣かれて部屋に連れ帰る羽目に陥った」
と小さくため息をついて言う。

その少し困ったような錆兎の表情とは対照的に、どこかどややっ!とした得意げな顔でうんうんと頷く義勇。

そして
「あ、トレイありがとうっ。
えっと紹介するね。こっちが噂の天元。極東支部唯一の実戦力だったジャスティス。
でね、天元、こっちが錆兎っ」
と満面の笑みだ。

紹介されて二人はお互い一瞬意味ありげな視線で相手を見て沈黙するが、やがて宇髄が口を開いた。
「昨日会えなかった最後のジャスティスだよな?」
「ああ。錆兎だ。よろしくな」
宇髄の言葉にうなづいて、錆兎は少し頭をさげる。
「こちらこそ」
宇髄もそれを見て少し頭をさげた。

その思っていたのとは少し違う展開に善逸は首をかしげる。
宇髄の様子だとてっきり二人は知り合いだと思っていたのだが……

「で?」
と宇髄とと錆兎のやりとりが終わった後、唐突に炭治郎が口を開いた。

「錆兎は義勇さんとどういう関係なんです?」
「は??」
真剣な顔で聞いてくる炭治郎に錆兎はぽか~んと口を開けて呆ける。

「普通…いきなり自室に連れ帰ったりしませんよね?
妙齢の異性を自室に泊まらせると言うのは…」
と続く炭治郎の言葉に宇髄がプッと噴出した。

「あ~!ちげえよっ!こいつこんな顔してるけど男…」
「将来を誓い合った仲だからいいんだっ!!」
そこで訂正に入る宇髄の声に義勇の声が重なった。

そして炭治郎の耳に入ったのは義勇の方の声らしい。

「しょ、将来っ?!!」
とびっくり眼になる炭治郎。

「え?いつ??」
と、当の錆兎も驚いて目を丸くする。

そんな反応も全く気にすることなく、義勇は
「昨日の夜っ!ずっとそばに居てくれるって言ったっ!」
とぷくりと頬を膨らませる。

そこは譲れないっ!断固としてそうしてもらうのだという末っ子の強固な意志に、ジャスティスとしての力は最強でも長子な男が敵うはずがない。

はいはい、と、降参しながら、義勇のために椅子を引いてやって、自分もその隣に腰を下ろした。









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