青い大地の果てにあるものsbg_第32章_義勇合流

そうしてそのまましのぶが当たり前に善逸の正面に座ると、続いて目にクマを作った炭治郎がそれでもしっかり朝食を抱えてやってきた。

正直…暴走して止めに入った真菰に殴られて目に青あざか、あるいは見つからずに一晩探して目にクマかどちらかだろうと予想していた善逸は、後者であることにホッとしながら
「昨日は結局見つかんなかったんだ?」
と苦笑しながら炭治郎のために自分の隣の椅子を引いてやる。
善逸の言葉に炭治郎はうつむいた。

「昨日からずっと探してるんですけど見つからなくて…
こうしてる間にも義勇さんに何かあったらと思うと…」

深刻な顔の炭治郎に今度は宇髄が
「まあ…最悪の事態にはなってないから大丈夫」
とあっさり言い切る。

「なんでそんな事言い切れるんですかっ?!」
宇髄の言葉に声を荒げる炭治郎に宇髄は
「ほらあっち。
砂ちゃんがここにいるって事は砂ちゃんには捕まってないらしいし」
と、カフェテリアの隅っこの方で食事を取っているらしい砂田を指差した。

「なるほど~。さすが宇髄さん、賢いね」
と感心したように頷く善逸。

「だろ?まあ…砂ちゃんなら部屋で待ち伏せくらいはしてただろうから、部屋には戻らなかったみたいだけどな。
真菰は錆兎が一緒みたいなこと言ってたし、そうじゃなくても凍死するような気温でもないから、どっかで適当に時間つぶしてんじゃね?」

「宇髄さん、冷たすぎですっ!
義勇さんのこと心配じゃないんですかっ!」
のんきな口調の宇髄に炭治郎は詰め寄ったが、善逸がまあまあと間に入った。

その時である。

「あ、天元っ!」
小さな声と共に小柄な人影が手を振りながら近づいてくる。

いや、小柄に見えるのは隣に立つのがガタイのいい男だからだろう。
実際は蜜璃と同じくらいかもしれない。

少し跳ねた黒髪に真っ白な肌。
潤んだ様に見える澄んだ大きな瞳は綺麗な青色で、唇は紅をさしたわけでもないのに淡いピンク色だ。
顔だけで食っていける…と称される胡蝶しのぶと同じくらいには綺麗な顔立ちだが、彼女よりはどこか繊細で不安げなオーラをまとっていて、庇護欲をそそる。

(…誰だ?なんか可愛いな、おい…)
などと食堂にいる男どもがざわついたが、その隣に居るのがジャスティス最強と言われる男なので気軽にちょっかいをかける勇気のある輩はいなかった。

そんな中でその人物…冨岡義勇は宇髄のいるテーブルまで歩いてくる。

「ああ、義勇。昨日ぶりだなっ。丁度噂してたんだぜ?」
とにやりと笑って言う宇髄に義勇は
「噂?」
と不思議そうに首をかしげた。

すると絹糸のような細く綺麗な黒髪がサラっと揺れる。
長い睫に縁取られたリスを思わせるようなクルリと大きい瞳が宇髄の周りの面々に向けられた。

「義勇ちゃん、相変わらず可愛いね…」
「すごく…すごく綺麗な人ですねっ」
「見るからにヒーラーというか…戦闘に不向きな感じですね」
それぞれに感想を述べる善逸と炭治郎としのぶ。

宇髄は
「ホラ、本部のジャスティスの面々。お前昨日歓迎会パスしたからな、今挨拶しときな」
と義勇を促した。

促されて義勇はちょっと心細げな表情で隣に立つ錆兎を見上げる。

そして錆兎に
「ああ、俺もよく知っている仲間達だから緊張しないでもいい」
と言われてコクンと頷くと、
「あ…あの…極東支部から来ました、冨岡義勇…です」
と、それだけ言うとペコリと頭を下げた。








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