──身内殺し野郎が暢気に女と歓談かァ?
後ろから降ってくる声に、蜜璃はヒィッと小さく悲鳴を上げる。
声の主は振り向かないでもわかる。
不死川実弥…本部のフリーダムのボス、本部長である。
まあそれでも任務後の報告に行ったりと顔を合わせることは少なくはないので声を聞けばすぐ彼だとわかってしまうのだが…。
不死川と極東ジャスティスの確執については蜜璃は何も聞いていないので、彼が不機嫌な原因は初対面のはずの宇髄ではなく、きっと自分が何かやらかしたのだと思って青ざめたのだが、言葉からするとそうではないらしい。
不死川のキツイ視線も蜜璃を通り越して宇髄に向けられていた。
一瞬ホッとする蜜璃だが、すぐハッとする。
ここで自分がターゲットじゃなかったからと言ってホッとなんてしてはいけない。
相手はそれでなくても本部に赴任したばかりで慣れていない同僚なのだ。
「な、何か誤解があるのかもしれないけど、いきなり喧嘩腰はいけないと思うわっ」
と間に入ろうとするが、当の宇髄からやんわりと視線で止められる。
「嬢ちゃん、ありがとな。
でも根性なし野郎の八つ当たりだから巻き込まれるこたぁねえぜ?」
「あぁ~~?!!だぁれが根性なしだぁ??!!!」
「お前、あれだろっ。去年死んだ不死川の兄貴っ」
「わかってんじゃねえかァ!!それでよくここに顔出せたもんだよなァ!ゴラァ!!」
え?え?なに?
二人知り合いなの??
なんでいきなり喧嘩なのっ?!!
オロオロとふたりを見る蜜璃。
どうしよう?!どうすればいいの?!!
と、普段なら何かトラブルが起きると間に入ってくれるカナエか錆兎か真菰がいないかとあたりを見回したが、こんな時に限って居ない。
──本部の人間まで殺しに来たのかよっ、あぁ”~~??
とエスカレートする不死川の言動に、ああ、これはわからないなりに放っておいてはいけないやつだと、蜜璃が意を決して口を開きかけた時……
──それは違うっ!それは言っちゃダメな奴だよっ、不死川さんっ!!
といきなり走り寄ってきて間に入ったのは、なんと普段ならトラブルから真っ先に逃げる、気の弱い善逸だった。
0 件のコメント :
コメントを投稿