青い大地の果てにあるものsbg_第21章_快食少女

カナエとどこかへ行ってしまった真菰を見送って、蜜璃は少し気まずい思いで一人でグラスを傾けている。

いつも一緒に居てくれるしのぶはブレインの本部長が実姉な関係でブレインの部員たちと親しいこともあって、今回主催で色々忙しい部員たちを手伝っているようだ。

小柄で容姿だけで食べていけそうなくらいの美少女で、見ているだけで楽しくなるようなしのぶはブレインのみならず、鬼殺隊本部の人気者だ。
おそらく鬼殺隊本部で彼女にしたい隊員の5指に入るのではないだろうか。

蜜璃もそんなしのぶのことは大好きなのだが、小柄な彼女と居ると少し上背がある自分はものすごい大女に見えるようだし、近接アタッカーにしては驚くほど少食な彼女と居ると、本来の近接アタッカーらしくよく食べる蜜璃は大食い女だ。

別に嫌われたりとかではないのだが、色々しのぶと比べられて笑われることが多い。

それでもしのぶが一緒に居ると、そういう揶揄をする人間を見つけては辛辣にやり込めたりするので、表向きは何か言われたりすることはないのだが、こうして一人で居ると遠巻きにしている他の隊員の視線が痛い気がした。

ぐぅぅ…と鳴るお腹。
でもここで哀れに啼くお腹の欲求を満たしてやれば、確実にまた指をさして笑われる。

いつも笑顔でやり過ごしている蜜璃ではあるが、乙女としてはそういう嘲笑に傷つかないわけでは決してないのである。

こういう時、善逸が居ると大皿にいっぱい料理をとって来て、
「俺、ここに来るまで貧乏であんま食べられなかったから、あるとついついいっぱい取っちゃうんだよねっ。
でもどう見てもひとりで食べきれないし、蜜璃ちゃん、食べてくれない?」
などと言って、さも自分が欲しくて取って来て食べきれなくて困っているから良ければ…という形で料理を勧めてくれるし、本部内でかなり影響力のあるエースの錆兎が傍に居る時にはそもそもがジャスティスである蜜璃を揶揄するような勇気のある行動を取る人間はいない。
傍に居るのが錆兎ではなく真菰でも同じような感じである。

最後の一人、炭治郎は勢いのある元気な少年で、声も大きく動作も大きいので、彼が居るとそもそもが彼の方に視線が行ってしまって蜜璃があまり目立たない。

そう、つまりはジャスティスの誰かが居てくれればあまり嫌な思いをすることなくこの切ない胃袋を満たせるのだが、その誰も居ない今、蜜璃は食べ物を求めてシクシクと痛む腹を抱えて立ちすくむしかないのである。

それでもそんな持ち主の思いを察してくれることなく、鳴り続ける腹。
それはそれで恥ずかしい気がして泣きそうになった。

そんな時である。

──一緒に食おうぜ!!
と、いきなりドン!!と置かれる大皿。

美味しそうなご馳走が山盛りで思わずゴクンと唾を飲み込むが、聞き覚えのない声に皿から視線を声の主に移すと、そこに立っているのはサラサラの銀髪の綺麗な少年だった。







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