青い大地の果てにあるものsbg_第20章_極東コンビ歓送迎会にて

錆兎と義勇がそんな風に交流を深めていた初日…もちろん他のジャスティスや職員もそれぞれに過ごしていた。

その一人、ブレイン本部長、胡蝶カナエ。
彼女は歓送迎会の広間に入ってまず、背の高さも色合いも十分に目立つはずの宍色の頭が見えないことに少し不安な表情を浮かべる。
そしてキョロキョロと広場内を見回して、蜜璃と歓談中の親友、真菰の下へと駆け寄った。

「真菰ちゃん、錆兎君はどこかしら?」
前置きもなしに不安げなカナエの様子に真菰はコテンと小首をかしげる。

もちろん人の感情の機微に敏い彼女はカナエが言わんとすることはわかっていた。
そして──ちょっとカナエちゃんと話をしてくるねっ…と蜜璃に断ってカナエの腕をとると、その場を離れて広間の端へ。
その途中でテーブルに用意された飲み物のグラスを二つ手にして、一つをカナエに渡す。

そして
──心配しなくても大丈夫だよっ。
と、先に結論を言って安心させると、くいっとグラスの中身を飲み干した。

正直…ジャスティスはもちろんのこと、本部内でも一位二位を争うほどの卒のない真菰がそう言うのだったらそうなのだろう。

カナエも少し落ち着こうとグラスに口をつける。

そうして目で問いかけるカナエの視線に当然気づいている真菰はにこりと自らの視線をバルコニーの方へと向けて言った。

「えっとね、カナエちゃんの最優先事項は蔦子ちゃんの弟君の身の安全と健やかに過ごせる環境の整備だよね?」

そう始める真菰にカナエは驚いてしまう。
確かにカナエがわざわざ錆兎に口添えをしたのは、以前本部に少しだけ身を置いていた時に仲良くなった極東支部の蔦子の頼みだったからである。

噂にはふんわりとは聞いていたのだが、極東支部のジャスティスとフリーダム達の確執は根深い。
原因は義勇ではなく宇髄の方なのだが、義勇も兄弟同然に暮らしていた宇髄の側に立った発言をするので同様の視線を向けられている。

それでも宇髄の方はある程度世慣れたところがあって自分に降りかかってくる火の粉をある程度振り払うことは出来そうだが、義勇は本当に何も考えずに自分にとっての親しさであるとか好き嫌いであるとかで物を言っていて、その影響を全く考えていないので、保護者である蔦子がフォローをいれられない環境だとかなり困ったことになるだろう。

ということで、彼女は弟の行き先の鬼殺隊本部のブレイン本部長である友人に弟と…出来れば弟分もくれぐれもと頼んできたのである。

そこまでの事情はカナエは真菰に明かした覚えはない。
なのに何故知っている?

そのカナエの無言の問いには答えずに、真菰は話を進めていった。

「さっき義勇君らしき子がバルコニーに向かったんだけど、そっちにはその前に錆兎が待機してたから、たぶん錆兎がなんとかするはず。
というか、二人とも戻ってくる様子がないから、もしかしたらもう保護してるかも。
だから義勇君の方は任せておいて平気。
天元君の方は…まあ私が担当するかな。
錆兎じゃなきゃダメそうならとりあえず実弥君の方を遠ざけておいて、時間稼いで後日錆兎に間に入らせるからカナエちゃんは安心してブレイン本部長の仕事に戻ってて?」

ああ、持つべきものは察しが良くて頼れる頼もしい友人だ…とカナエは心から思う。
真菰に任せておけばすべてが滞りなく解決するだろう。

「ありがとう!本当に助かるわ」
と手を合わせて、カナエは本来の仕事の方へと戻っていった。

そう、この催しはそもそもがブレイン本部が仕切るものなので、そのトップであるカナエは大変多忙なのである。








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