ともあれ、その時はこうして二人で錆兎の部屋へ。
一応男女の部屋は東西にそれぞれ固まっているものの、所詮全員で12名しかいない
なのでジャスティスの居住区はそう広くもない。
5分も歩かないうちに錆兎の部屋の前につき、錆兎はポケットから鍵を取り出した。
「散らかっているが、入ってくれ」
と義勇を中に促す。
「お邪魔します…」
ペコリとドアの所で一礼して居間まで進むと、義勇は少し辺りをみまわした。
全体的にシックなモノトーンの部屋で足の部分が黒いガラステーブルの上には部屋を出るまで読んでいたのであろう雑誌とかすかにコーヒーの残る黒いカップが無造作におかれている。
壁際には黒いゴミ箱とマガジンラック。
その横に大きな本棚がある他はほとんど物がない。
「支度してくるからここで待ってろ」
と寝室に消えた錆兎を待つ間、義勇はカップを片付けようと飲みかけのコーヒーのカップを持ってキッチンに向かった。
キッチンの方も電気ポットとコーヒーメーカーがあるくらいで鍋釜の類は見当たらない。
おそらくお湯を沸かすくらいしか使ってないであろうキッチンでカップを洗ってカップとグラスしかない食器棚に戻すと、
「ああ、洗っておいてくれたのか、すまないな」
と戻ってきたらしい錆兎がキッチンの入り口で声をかけてきた。
「あ、勝手にごめんね」
と言うと錆兎は軽く首を横に振る。
「別に見られて困るものもないから。
寝に帰るだけの部屋だし。
それより…シャワー使うなら先に使え。
タオルも置いてあるから」
言って親指でバスルームを指差した。
シャワーを浴び、寝巻きがわりのチュニックとショートパンツに着替えて義勇が居間に戻ると、パジャマの上にガウンを羽織った錆兎が
「俺はここのソファで寝るからベッド使えよ」
と寝室を指差す。
「え…でも…俺の都合で押しかけてきちゃったんだし、俺がソファで寝るよ」
天元の部屋に押しかけた時は一緒に寝てたのだが、さすがにそれはまずいのか…とあらためて気づき、義勇はあわてて顔の前で手を振った。
しかし錆兎は
「…どこの世界に自分は人一倍頑丈なのに後衛ヒーラーを椅子に寝かせて自分がベッドで寝る近接がいるんだよ。
いいからベッド使え」
と苦笑する。
ああ、少し無骨で、でも頼もしくて安心するこういう感じ…。
なんだか亡き父を思い出す。
そこで遠慮したところでやりとりが長引くだけだと言うのは経験上わかるので、
「ありがと。ごめんね。遠慮なくお借りします」
と、ペコリと頭を下げて義勇は寝室を使わせてもらうことにした。
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