少女で人生やり直し中_65_パパ上とGo!

結論から言うと、任務は炎柱煉獄杏寿郎の父で師範であった槇寿郎が出向いて解決した。

炭治郎も禰豆子も鬼殺隊に入ってからは杏寿郎の継子という立場ではあるものの、柱として忙しく飛び回る杏寿郎よりも第一線から一歩退いた槇寿郎に学ぶことの方が多かったため、その実力を知ってはいる。

だが、実戦時の槇寿郎を見るのは初めてで、その強さには本当に驚いてしまった。

己の弱さを痛感して限界を感じたため柱を引退したと聞いていたのだが、正直、炭治郎や禰豆子から見れば、どこが弱いのかわからない。

圧倒的な強さだけではなく、長い経験や知識から培われた判断力もすごい。
もうすごいという言葉しか出ない。
これこそが柱になれるほどの人材なのか…と、己との圧倒的な差に言葉もない。
これで弱すぎると言われたら、もう自分など童も同然だと炭治郎は思った。


最初は和やかに、いつものように少しくたびれた隠居柱と言う風に、初めての列車にはしゃぐ竈門兄妹や伊之助をなだめつつ、
──有事になるまではこれでも食って大人しくしていろ
と、善逸も加えて全員に美味しい牛めし弁当をごちそうしてくれる。

その後、敵に仕掛けられた罠を炭治郎と共に自力で破り、列車全体を取り込んだ下弦の壱にとどめを刺すべく、炭治郎達に指示をしつつ、列車の乗客に被害を出さぬよう尽力した。

結果、下弦は倒されて列車は止まる。

炭治郎達はボロボロだったが死人はなし。
炭治郎は腹に傷を負ったが、槇寿郎に呼吸で傷を軽減する法を教わってなんとかふさぐことができた。

そうして乗客も全員無事となって、ああ、義勇さんの言っていたように死人が出なくてよかった。
炎柱の煉獄さんはとても強く優秀な人だが父の槇寿郎さんはそれに加えて経験が豊富だったので死なずに済んだのかと、ホッと安堵したのだが、そう判断したのは早計だったらしい。

撤収しようか…と思ったところに離れたところからとんでもない相手が近づいてきた。
圧だけで普通の鬼ではないどころか、さきほどまで戦っていた下弦の壱より強者な気がする…と思っていたら、その鬼の目に浮かぶ参の文字。

ぞっとした。
これが義勇が言っていた杏寿郎の死の原因だったのだと瞬時に悟る。


──俺が出る。撤退を急げ!
と、厳しい顔でいったんは鞘に納めた刀を抜く槇寿郎。
──俺も行きますっ!
と、身を起こす炭治郎だが
──邪魔だっ!
と、即答されてしまう。

それでもさらに起きようとすると、
──待機っ!!
と、一喝。

そこで空気を読んだ善逸が
「ぜんっぜん役に立たない俺らが行っても足手まといになるだけだからっ!
むしろ一般の人たちを助けながら逃げた方が役にたつよ」
と、炭治郎の羽織の袖口を掴んで言った。


ここで杏寿郎の代わりに実質師範だった槇寿郎を失ってしまうのか…
自分は目の前に居て何もできないのか…
そう思うと、悔しい…という気持ちが胸いっぱいに広がった。



そんな炭治郎を振り向くことなく視線は前方の上弦の参に向けたまま、

「お前たちが居たからこそ乗客200名あまりを誰一人欠けることなく救うことができた。
炭治郎、お前が水柱邸で話したからこそ、俺は息子まで失わずに済んだし、鬼殺隊は未来を担う若い柱を失わずに済んだんだ。
お前が行動したことはすでに多くの者を救っている。
誇れ」

と、そんな無力感にさいなまれる炭治郎の気持ちすら察したように、槇寿郎はそう言って上弦の参の方へと足を踏み出した。






0 件のコメント :

コメントを投稿