鬼殺隊本部は奥の第一区から出入り口のある第八区まである。
ジャスティス達は任務から戻るとまず諜報部フリーダムにその旨を報告後、報告書を科学部ブレインに提出して任務完遂となるので、一行はまずフリーダムへ向かった。
と、そこで一行を迎えるのは就任したての若い本部長、不死川実弥。
錆兎とはいちフリーダム部員だった頃からの友人だ。
言葉も態度も粗暴で顔を横断する大きな傷が特徴的な強面の男だが、その反面、情に厚くて面倒見が良い親分肌な性格で、女性には縁がないが男所帯のフリーダムの中で圧倒的な信頼と好意を勝ち取っている。
フットワークも軽く活動的。
ついこの前までは錆兎達ジャスティスと一緒に戦場を駆け抜けていたが、本部長に就任してからはめっきり外に出してもらえなくなったのが少し物足りないらしい。
「全くだな。本当に最近少しばかり人使い荒すぎだ」
とぶぜんとした顔で言う錆兎に
「それなァ…。
でも最近書類を積み上げられてる俺からするとちぃっとばかり羨ましくはあるけどなァ。俺もイヴィルを倒せる能力があるんなら代わってやりてえくらいだ。戦場でてえぜぇ」
と苦笑交じりに言う。
そうして錆兎の愚痴に愚痴で返したところで、
「何言うてはるんですっ!
ボスが出て何かあったら大変やないですかっ!やめて下さいね?!」
と部下に怒られた。
「ほんとうに不自由な身分になっちまったなァ…。
ジャスティスに同行して武器ふるってた頃が懐かしいぜ、マジ」
と言いながら、早くたまった書類に判をとせっつかれて奥へと引きずって行かれる不死川を見送って、一行はそのまま事務方のブレイン用の報告書を提出するためにブレイン本部へと足を向けた。
「みんな、おつかれさま」
と、まず出迎えるのは絶世の美女。
こちらも最近就任したブレイン本部長だ。
面差しはしのぶに似ているがキリリとしたしのぶよりも、彼女、カナエの方がどこかおっとりぽわわんと柔らかな雰囲気である。
色白で柔和な顔立ちのこの本部長に
「姉さん!何も言わないでミミズはやめてよ、ミミズはっ!大変だったのよっ!」
と訴えるしのぶ。
しかし彼女はケンケンと小型犬のように吠えるこの妹に
「あらあらあら…。
でも言っても言わなくても仕事だしね。
方針決めるのは錆兎君と真菰ちゃんだから二人が知ってればいいんじゃない?」
と、柔和そのものな笑顔で、しかしなかなかキツイことを言う。
優し気ではあって、実際日常生活では優しいが、仕事となるとさりげなくそんじょそこいらの男よりもシビアだったりするのが怖い。
内容を聞けば和やかとは言い難いそんなやりとりだが、遠目で見れば美人姉妹なので眼福だということで、皆遠巻きに二人のやりとりを眺めていた。
そんななかで姉妹双方とそれなりに付き合いが長く性格も熟知している錆兎は面倒ごとに巻き込まれないうちにとちゃっちゃと報告書を書き上げ、それを係に渡す。
すると妹の苦情をのらりくらりと交わしていたカナエはそれでもそちらにも意識を向けていたらしい。
「報告書は受け取ったから、全員医療室でチェック受けたら解散ね」
と言いつつ、ちらりと錆兎と真菰に目を向けた。
そして
「2人はちょっと来てね。話があるの」
とにっこり。
ああ、この笑顔が怖い…。
これは面倒ごとに巻き込まれるな…と思いつつも自分たちに拒否権は与えられない。
「「了解」」
と錆兎はなんとなく話の内容は予測できる気はするのだが諦めて小さくうなづいた。
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