ほとんど音もなく絨毯の上に崩れ落ちる小さな体。
あちこちで上がる悲鳴。
錆兎が手袋を手にはめながら駆け寄ってくる。
「宇髄もいったん離れてくれ。え~っと…炭治郎達の方へ。
でもって炭治郎はこっち!他の人間に近づくなっ!」
倒れる水野の体を調べながら錆兎が厳しい顔で言った。
「ちょ、どういうことだっ?!」
錆兎に詰め寄ろうとする面々を宇髄が制し、錆兎がやや青ざめた顔で
「今回の一件に関しては殺人犯が狙ってるのは多分宇髄だって事だ。
最初の短剣の際は対象として考えられるのは禰豆子と義勇と宇髄。
淡路さんのはわからんが、あるいは義勇かもしれない。
どちらにしても宇髄を中心とした高校生組だ。
誰が犯人かわからない以上、高校生組をまとめて保護しておくのが一番手っ取り早い」
「なん…で…」
「それがわかっていれば多分犯人もわかってて…こんな事になっていないと思う」
青ざめる善逸に錆兎は首を横に振ってため息をつく。
「毒物なのは確かだな。今飲んだジュースか…。
瓶かグラスどっちに入っていたかは調べないとわからんな」
「警察に報告1件追加だな。
会長様、加藤のコネ使っとけばいいんじゃね?あいつお前の事お気にだから。
警察来たから安全とは限らねえし、ある程度の自由欲しくないか?」
宇髄の言葉に錆兎はあまりOBに借りを作りたくはないのだが…と、少し苦い顔をして考え込んだ。
しかし結局
「そうだな。しかたないか」
と、自分の携帯を取り出した。
「夜分遅く申し訳ありません。鱗滝です」
別に電話なのだから姿が見える訳ではないが姿勢を正す錆兎に電話の向こうの相手はいつもの大らかな口調で
『お~!どうした?天才少年。元気か?』
と親しく声をかけてくる。
「はい。俺は元気なのですが…実はまた巻き込まれまして…」
どう切り出していいものかわからずため息まじりにいう錆兎の言葉に
『そいつぁ~すごいなっ!6回目かっ』
と、加藤は心底感心したように言った。
「ね、誰に電話かけてるの?」
不思議そうに聞く遥に、電話中の錆兎の代わりに宇髄が答える。
「加藤っていう本庁で警視やってるOB。
前に俺らが通っている海陽学園で起こった事件に巻込まれた時に知り合ったんだけどな。
会長様の事が大のお気に入りで警視庁に引っ張りたくて引っ張りたくて仕方ないという人物」
その言葉に一部青ざめて硬直、一部は
「おお~~~!!!」
と感嘆の声を上げた。
『で?どうした?手でも足りないのか?』
加藤は向こうから切り出してくれる。それに錆兎は、いえ、と口を開いた。
「そこまでは必要ないんですが、一応捜査の邪魔はしないように気をつけますので、捜査にいらした警察の方々に俺の身元の保証とある程度の行動の自由、あと捜査情報の提供をお願い出来ればと…。
もちろん情報漏洩には細心の注意を払いますし、加藤さんにはご迷惑をおかけしないようにします」
錆兎の言葉に電話の向こうで加藤は豪快に笑った。
『何を水臭い事をっ。
東京都内なら俺が言うまでもなく本庁内ではお前有名人だしな。
まあ一応連絡いれておいてやる。任せろ!』
そこで加藤に現場の報告をすると、錆兎はいったん電話を切った。
とんでもなく些細なところですが「藤のコネ使っとけば」→「加藤のコネ~」お名前が省略されちゃってますのでご確認ください<(_ _)>
返信削除ご報告ありがとうございます。
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