人魚島殺人事件_38_名探偵の独り言

「じゃ、戻る前にいったん情報整理するか」
プールサイドの椅子に腰をかける錆兎に
「着替えないでいいのか?」
とやれることを終えた宇髄離れた廊下から声をかけるが、
「とりあえず…戻ると色々聞かれるんだろ?どうせ。
与える情報と隠す情報の整理をしてからにする」
と、苦笑する錆兎に走り寄ってきて、部屋からもってきたらしいミネラルウォータのペットボトルを投げてよこす。
そして、自分も錆兎の横に座った。

錆兎はさんきゅと礼を述べると、
「ちょっと大きな独り言だから、ひっかかる事があってもスルーしてくれ」
と、キュっとキャップを開けて水を一口口に含んでから、少し考え込んだ。


「とりあえず…死亡したのは淡路さん。
死亡原因は外傷もないし溺死と思われる。
他殺か自殺か事故死かは今の時点では判断つきかねるな。
気になるところは…死亡時の服装か。
このブルーの上着は撮影用衣装?あとはマスクとカツラだな。
何故こんな物身につけた状態で死んでいたのか…」

「これ、サイズからすると義勇用のだよな?」
宇髄の言葉に錆兎がうなづいた。

「カツラも…そうなんだが…まるで義勇にみせかけるためみたいな格好だよな。
…仮面で顔隠して」

「で?お前の意見としては?どういう事だと思う?」
「わかるか。これだけで」
錆兎はム~っと考え込んだ。

「しっかりしろよ、名探偵」
「ちょっと黙っててくれ、今情報整理してるから」
錆兎は最初からの情報を並べてみた。

「危害…という意味では前回禰豆子にガラスの短剣落とした奴がいたよな。
あれは禰豆子にじゃなく、もしかして義勇を狙っていたのか?
それとも??
まあどちらにしても水野さんの所に斉藤さんの携帯から来たメールによるとその犯人は斉藤さん。
でも肝心の斉藤さんは行方不明…と」

「犯人斉藤説?」

「いや…犯人は斉藤さんじゃない気がする…。少なくとも今回の殺人については。
前回の短剣も…実はお前も斎藤さんだと思ってるんだよな?」
錆兎はそこで宇髄に振った。

「違うのか?」
「あ~、まあなぁ。確証ないんだけどな」

「どういうことだ?」
そこで宇髄が聞くと、錆兎はちょっと考えをまとめるように黙り込んだ。

「え~っと…つまりだ…、松坂さんはオレンジ色の何か見たって言ってただろ。
それで皆が斉藤さんの上着を連想したと思うんだが、もしそれが本当に斉藤さんの上着だったとしたら、斉藤さんに罪を着せたい誰かなのかなと…」
宇髄の不思議そうな様子に、錆兎が続ける。

「最初に全員がリビング集まっていた時って斉藤さん上着脱いでいたんだ。
それから外に一旦出たとかじゃない限り斉藤さんが本当に部屋から何か落とそうとするためだけならわざわざ上着をまた着たりしないと思うんだよな」
「あ~、なるほどな」
宇髄は納得した。

「まあじゃあそれはおいておいて、今回のはどう見る?」
宇髄が少し難しい顔で錆兎に視線を送った。

「犯人が誰かというのはおいておいて、犯人の意図として考えられるのは2通り。
一つは犯人は淡路さんを殺したくて殺した。
もう一つのパターンは、犯人が殺したかったのは実は義勇。
で、何故か義勇に変装したような淡路さんを間違って殺した」

「後者は…無理がないか?
確かに遠目には似てるし夜なら間違う事あるかもだが…プール突き落としたくらいじゃ死なねえのわかるだろ。
かといって睡眠薬なんて飲ましたら運ぶ時に義勇じゃないってわかるだろうし」
錆兎の言葉に宇髄が意義を唱えた。

「ん~、でもな、淡路さんのこの格好ってなんか気にならないか?」
錆兎が言うと、
「まあな~」
と宇髄も眉間にしわを寄せる。

「とりあえず…俺達6人以外には今回はまだ事故死か他殺かわからないって事で情報流すのはやめておこう。基本的には警察に任せるって感じで」
錆兎は最終的にそう言った。

「一応…今集まってるメンバー以外も起こした方がいいか?」
宇髄がそこで聞く。

「ん~そうだな…警察来たらどうせ事情聴取だろうし。起きてた方がいいかもな」
そう言いつつ錆兎は立ち上がった。
それに釣られるように宇髄も立ち上がり、淡路の遺体をそこに残して館に戻る。

廊下に戻ると、そこには高田と綾瀬と成田、水野と善逸、炭治郎、義勇が待っていた。

「あれ?綾太郎は?」
宇髄が松坂がいない事に気付いて聞くと、成田が
「ああ、他起こしてくるって2Fに行ってる」
と、答える。

「で?どうだったの?」
善逸の言葉に宇髄はチラリと錆兎に目をやり、錆兎がうなづくとまた善逸に視線を戻す。
「ああ、淡路さんが…な、死んでた。溺死らしい」
宇髄の言葉にみなが小さく悲鳴を漏らした。

「光…確かに泳げないんだけど…どうして…」
水野が真っ青な顔で大きな目をさらに大きく見開いて言う。
「あ~行きの船でそんな事言ってたね…」
高田がやはり青い顔でうなづいた。

という事は…後から来た自分達5人以外は全員その事を知っていたということか…。
と、錆兎と宇髄は互いにアイコンタクトを送る。

そこで遠目に淡路の遺体を凝視していた善逸がハッと何か思い出したように錆兎の袖をひっぱった。
ツンツンとシャツの袖を引っ張られて、錆兎は善逸に視線を向ける。

「…あのね…今回の事に関係あるかわかんないんだけど、ちょっと思い出したんで、お前にだけ話したい事が…」
善逸がコソっと錆兎にささやいた。
「わかった」
錆兎も小声で返すと、宇髄を手招きで呼び寄せる。

そして
「わるい、俺は少し確認したい事があるから義勇を頼む」
と言って手をあげた。

「了解。んじゃ、全員リビングだな」
宇髄が了承と共にそう言うと、全員がリビングへと移動して行く。








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