人魚島殺人事件_37_溺れた人物は…

「大丈夫かっ?!我妻っ!!」

とりあえず宇髄はすぐ降りてきた。
そして廊下にへたり込んだままの善逸の腕を取って立ち上がらせる。

「俺は大丈夫…だけど……」
声が震える。

長身、細身、長い黒髪…。
その特徴に当てはまるのは一人だけだ。
そして…その一人を誰よりも大切に思っているであろう錆兎がこの状況を見たらどう思うのだろうか…
そう考えると悲しさと恐ろしさでどうにかなりそうだ。

他の…綾瀬、松坂、成田、高田も、皆一様に顔を青くしたまま硬直している。

しかしながら驚いたことにそんな善逸の心配は何故か杞憂に終わった。
宇髄に続いて二階から駆け下りてきた錆兎の左手は何故か隣にいる義勇の右手をしっかりと握っている。

え?ええ??と驚く善逸。

そんな彼の驚きなど気にすることなく、錆兎はプールの方へと目を向けると、
「誰も現場には近づいてないな?」
と、自分に電話をしてきた炭治郎に確認を取って、ポケットからビニールの手袋を取り出した。

「ここで待ってろ。様子見てくる」
と義勇を炭治郎に預けて言う錆兎に
「一人じゃ危ないよ」
と、高田が言うが、いたずらの可能性も否めない。
また、本当の遺体だとしたら犯人が近くに潜んでいる可能性もある。

後者なら他のフォローをいれる余裕はないし、一人の方がまだ安全だと錆兎が説明をすると、他のメンバーは不可解な顔をするが、宇髄が

「こいつ…親警察関係者で、護身術完璧なだけじゃなくて、何度も事件に巻き込まれて慣れてるから…」
と言うと、驚きはするが納得して見送ってくれた。


そんなやりとりにも構わずに、錆兎は窓から外に出ると芝生の上に飛び降り、すぐ目の前のプールへと足を運ぶ。

プール中央にゆったりとしたブルーの上着を着た人間が浮いている。
その顔はマスクに覆われていてわからないが、髪は少し長めの漆黒で身長は義勇くらい。
ずっと一緒にいた錆兎でなければ、一瞬義勇かと勘違いしそうだ。
髪型は違うが身長からすると斉藤か淡路あたりか…。

「とりあえず…このままだと誰だかもどんな状態だかもわからないな。引き上げるか」
錆兎は一人そう言って上着を脱ぎ、携帯と共にプールサイドのテーブルに置くと、プールに飛び込む。
そして水の上に浮く人物を抱えてまた泳いでプールサイドに戻り、それを引き上げた。

錆兎はプールから上がると、上着のポケットから手袋をだす。

それを手袋をはめながら
「最近…遠出すると事件に出会わないで終わる気がしなくなってきたな」
とやはり最近多くなってきた大きすぎる独り言を言って、仮面を取った。

「淡路さん…」
長めの漆黒の髪はカツラだった。
脈と呼吸を調べたが死亡している。

「宇髄、警察に連絡を」
叫ぶ錆兎の言葉に宇髄が警察に連絡をする。

「離島だから到着まで1時間くらいかかるってよ」
宇髄が通報を終えると、遺体を調べていた錆兎は
「とりあえず遺体を保存するためシート用意するように言ってくれ」
と宇髄に言った。
それに対して宇髄は呼び鈴を鳴らしてメイドに用意してくれるよう依頼する。







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