人魚島殺人事件_30_ディナータイム2

その後歓談をしつつも食事は進み、食卓にはデザートとコーヒーが並ぶが、二階に行ったきり松坂が戻ってこない。

そこで、
「松坂さん遅いな。ちょっと俺も様子見てくる」
と、成田が立ち上がった。

「あ、じゃあ俺も行こうか?」
高田が言うが、成田はそれを制した。
「いや、あんまりぞろぞろ行ってもなんだし。何かあったら連絡いれるからよろしく」
そう言って成田も上に消えて行く。

「まあ…あれか?逐一荷物を開いてチェックでもしてるのかもな。
ああ見えて意外に細かい性格だから、綾太郎は」
一瞬またシン…としたところで宇髄が口を開いた。

「あ~そうかもね。出ないとあの細かい作業できないわよ」
遥がヒラヒラ手を振った。

「私なんか大雑把ですむあたりのミシンしかかけてないけど、松坂君、細かい所全部受け持ってくれたしね」
「ああ、亡くなった綾太郎の親父さん歯科医だったしな。
几帳面なのは親ゆずりかもな」
「そうなんだ」
「そそ」
宇髄は言って食後のコーヒーをすすった。


「綾瀬…なんだ、そのもうコーヒーの痕跡を残していない飲み物は…」
古手川がやはりコーヒーをすすりながら、ほとんどミルクとしか思えないほどミルクで埋め尽くしたコーヒーを飲んでる綾瀬を見て気味悪そうに顔をしかめる。

「別に…どんな飲み方してもいいじゃないか…」
古手川の言葉に綾瀬がムッとしてそう答え、それをフォローするかのように宇髄が
「コーヒーと思うから違和感覚えるわけで…これはミルクと思えばまだいけんだろ。
あっちに比べれば…」
と、その綾瀬の隣でコーヒーの中に、ソーサーに乗った角砂糖を二つとも機嫌良く放り込んでいる義勇を指差す。

それに対して義勇本人ではなくそのさらに隣の錆兎が若干ムッとしたように
「それこそ…ひとがどんな飲み方しようと勝手なんじゃないか?」
と言い、当の義勇はさらに錆兎のソーサーに乗ってる角砂糖までもらって、カップにポトンポトン放り込んだ。

「おい!!!そこまで放り込んでどうするんだっ?!」
青くなる小手川。

「いえ、錆兎はコーヒーはブラック派だから…」
「だからって何も自分んとこに放り込まなくてもっ」
「あ~私はコーヒーは甘めが好きだから」

あの量のコーヒーに角砂糖二つでもとんでもない液体になっていそうなところに…4つかっ!

小手川ならずとも皆が青くなる中、しかし入れた当人は気にならないらしい。
…というか…さらにそこに大量のミルク…。

それ…すでに好きとか言わないんじゃないだろうか…。
はっきりコーヒーが好きじゃないと言った方が…とみんなが思う。


「あれに比べれば…コーヒーの痕跡残してると思わないか?」
と、宇髄に言われて、古手川は
「い…いや、あれはコーヒーとは言わない気が…」
とヒクヒクと引きつった顔でつぶやく。
小手川はもはや恐ろしい物でも見る様な目で、それを当たり前に飲み干している義勇を凝視する。

まあ宇髄は一応この家のホストということで
「義勇…紅茶派だったか?
周りじゅう珈琲派だったからついコーヒー用意させてしまったけど紅茶が良ければ用意させるぞ?」
と、気を使って呼び鈴に手を伸ばすが、それに対して義勇は
「ううん。別にコーヒーは普通に好きだけど?」
とフルフルと首を横に振った。

義勇の言葉とその目の前のコーヒーと呼んで良いか悩む液体に、ほんとかよ…と一同思ったのは言うまでもない。

「みんなもどうしても食べれない物とか、アレルギーとかあったら言っといてくれ」
と宇髄はついでに一応、と、全員に声をかける。

「天元もアレルギーあるしな」
と、そこに松坂の声。
ちょうど成田と共に帰ってきたらしい。

「あ、おかえり。
うん、まあ俺はほら、自分の別荘だし使用人も皆知ってるから勝手に省くが、みんなは言われないとわからねえから」
と言い、二人の分の食事を温め直させる。

そして
「随分おそかったな」
という宇髄の言葉に、松坂は少し疲れた顔で
「うん、一応な、全部チェックしてきちまった。
神経質すぎってわかってんだけどな。
どうもいまさら変われない」
と返して食事にむかった。







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