人魚島殺人事件_28_夢の後始末

こうしてリビング組はダイニングに移動し、自室組も続々と降りてきてダイニングの席につく。
もちろんそこには斉藤の姿だけない。

自室のある2Fから義勇を伴って降りてきた錆兎は一つ空席になっている斉藤の席を凝視した。

「斉藤さん…探さなくていいのか?」
斉藤の席から視線を宇髄に移して聞く錆兎に宇髄が答える前に古手川が答えた。

「どうせすねてどこかに隠れているんだろう。
心配して探したりすると図に乗るタイプだ。
一食や二食抜いた所で死にやしないし、普段からダイエットと称して栄養補助食品とか持ち歩いてるから、案外どこかに隠れて食ってる可能性もある」
好意的見方とは言えないが、確かにパッと見そういう印象がなかったとは言えない。

「まあ…島だから勝手には帰れないし窓から抜け出たとかじゃない限り玄関からは出た様子がないから、建物内にいる事は確かだし、一応時間外でも簡単な物は用意できるだろ?」
と、最終的に宇髄が言うのを聞いて、錆兎は納得した。

とりあえずそれは一旦保留ということで、錆兎が義勇のために椅子を引き、義勇が座ると錆兎もその隣に座る。

「義勇ちゃん大丈夫?まだ顔色悪いけど…」
まだ若干顔色が悪い義勇の様子に綾瀬が声をかけてきた。

その言葉にはあまりコミュニケーションを取るのが得意ではない義勇の代わりに錆兎の方が
「はい。大丈夫です。ありがとうございます」
とニコっと微笑みながら答え、義勇はその隣でうんうんと子どものように頷いている。

話すのが得意ではないとは言っても、義勇からすると綾瀬は安心できる人物だ。
錆兎が彼女を警戒していないのがなんとなく感じ取れるからである。

錆兎は義勇が知っている中で最も賢いし義勇は彼がこの世で一番注意深く危機管理に優れた人間だと信じているので、その錆兎の判断が義勇の危険か安全かの判断基準となっているのだ。

自分達をのぞくとあとは炭治郎と禰豆子、善逸、それに宇髄は加害者にはならない人物ということで、そこに綾瀬も足して、あとはとりあえず様子見だ。

「錆兎…さっきはその…邪魔してごめんね?」
色々考え込んでいた錆兎に善逸が紅い顔で声をかけてくる。

まだ誤解してるな…と思うものの、そこでその誤解をしている原因を説明すると義勇が羞恥のあまり逃げ出しそうなので、
「気にするな」
とだけ答えておく。

「…邪魔…ねぇ…」
せっかくそれを軽く流そうとしているのに、そこで宇髄がニヤニヤと笑った。

まあ…おかしな想像するのはこいつくらいだろう、と、殴ろうか迷っていると、何故か結構大勢が赤面しているのに気付いて、内心焦る錆兎。

仕方なく
「善逸は…結構そそっかしいところがあるよな、そう言えば。」
と、そこでフォローをいれることにした。

「何かあったの?」
それに空気を読む綾瀬が乗ってくる。

「ああ、善逸がちょっとした勘違いを…。
義勇の様子見に行って、休むのに着物はしんどそうだったし、自分で脱げないというので帯を解くのとか手伝ってやってたんです。
その後に同じく様子を見に来た善逸がそれを見て誤解して飛び出した挙げ句に正面の空き部屋に逃げ込んだと思ったら、10分もしないうちに寝てるし。
で、宇髄が善逸を発掘して彼の部屋に返した…という出来事が…」

「あはは、面白いな、高校生組。
いかにも青少年って感じ。
でもそうね。
いくら恋人同士でもその状況でいきなり致さないわね。
まあ…それならそれで言えば脱ぐのも畳むのも手伝ってあげたのに。
一応着物の知識も多少はあるから。
そしたら我妻君が動揺して逃げる必要もなかったわね」
明るく笑う綾瀬。
釣られて一部を除いて他も笑う。

だがそこで
「あそこ…俺が仕入れてきた生地とかも色々置いてあるし、ボタンとかも変に落としたりすると割れる事あるし、ここ島だから足りなくなっても補充も効かないから、できれば不用意に入らないで欲しいんだけど。」
と、例外組の松坂が、若干表情を硬くして注意してきて、善逸は
「ごめんなさいっ!」
と、慌てて謝罪した。

「荷物置き場になってると思わなかったから。次から気をつけますっ!ホントにごめんなさい」

善逸の言葉に松坂はさらに
「何も…落としたりとか踏んだりとか…変わった事してないよな、我妻君?」
と、確認をいれる。

「…実は俺いつのまにか変な夢見ながら寝ちゃってたみたいで…たぶん何もいじってないと思うんだけど…」

「変な夢?」
松坂が眉をよせると、善逸がうなづいた。

「えと…壁にお化けが浮かび上がってて…なんかウ~ウ~呻いている夢」

「まさかそれでうなされて部屋で暴れたりしてないよな?!ちょっと見てくるわっ!」
善逸の言葉に松坂は青くなって席を立ち上がると、2階へとのぼって行った。

その松坂に青くなる善逸。

助けを求めるように宇髄を振り向くと、宇髄は
「大丈夫。俺様がお前発見した時には特に散らかしてる様子なかったし」
と笑顔でうなづく。

「マジで?良かった~」
善逸はその言葉に胸をなでおろした。

「ま、一応私達も色々余分に用意してきてるしね、大丈夫よ、我妻君」
綾瀬もそれに笑顔でフォローをいれる。

「まあ…一応素材管理任せてたし松坂も少し神経質になってるのかもな。
いいや、みんなとりあえず先食べようぜ」
最終的に宇髄がそう言って食事が始まった。







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