そして硬直しながら館に帰還。
食事までちょっと相談…と、炭治郎の部屋に押し掛けようとしたら、善逸と宇髄も押し掛けて来た。
「お前…ありえなくね?
ほんっとうに真面目に学校と自宅の往復しかしてこなかったんだな…」
と、その宇髄に思い切り冷ややかな目で見られた。
宇髄のそういう言い方には慣れている…が、
「錆兎ってさ…意外に変なところで大ボケな一面があるよね…」
と、善逸までまさかのあきれ顔。
その上空気が読めない仲間の炭治郎にまで
「錆兎は頭良いのになんでそんな事わからないのかがわからないな…」
と、言われる始末だと、さすがに落ち込む。
ズ~ンと肩を落とす錆兎に、宇髄は
「お前…そこまで女心読めないとさすがに将来困らねえか?」
と追い打ちをかけた。
しかしそこで見かねた善逸が
「ようはね…」
と口を開きかけると、宇髄が即それをさえぎるように言った。
「惚れられたに決まってるだろっ!」
予想もしてなかった答えにぽか~んと顔をあげる錆兎。
「ありえんだろ…それ…」
「ありえんのはお前のそのおめでたい頭だろうがっ」
錆兎の発言に即、呆れた宇髄から容赦ない言葉が飛ぶ。
「…遊んでるタイプには見えないし…一目惚れされる要素はないし…かといって何か好意を持たれるような出来事があったわけでもない」
その錆兎の言葉に宇髄は眉間にしわを寄せてハ~っと息を吐き出した。
「女心の説明してやってくれ、我妻」
いきなりふられて動揺する善逸。
「え?俺ですか?!」
自分を指差して思わず敬語。
「俺が言っても信じねえだろうし、会長様には一般ピープルの共通認識というやつを叩き込んでやらねえと」
と、宇髄は頭をガリガリと書きながら言った。
そこで善逸はその宇髄の言葉を否定することなく、暗に肯定して苦笑を浮かべる。
そして口を開いた。
「えとね…錆兎が自分でどう思ってようと一般的にお前はイケメンなのっ。
だから一目惚れされてもおかしくないのね。
でもって…それまで男の人に優しくされた経験があまりない女の子とかだとさ、それでなくても異性にちょっと優しくされちゃったりしたらキュンってしちゃうもんなんだよっ。
普通でもそうなのに、相手イケメンだよっ?!
世の中プラスのことじゃなくてもマイナスのことでもイケメンなら許されるからねっ?!
でなきゃ『ただイケ(ただしイケメンに限る)』なんて言葉できないからねっ?!
おまけにお前、イケメンなだけじゃなくて高学歴高身長でお育ちが宜しくて将来性もあってとか、もうどんだけ盛ってるんだよってくらいの高スペック男だからねっ?
もう大事なことだから二度言うけど、お前が自分のことどう思っていようと世間ではお前はとんでもない高スペックイケメンなのっ!!
そんな奴に優しくされたらもうだいたいの女の子はコロっと落ちちゃうのっ!
だからお前にしたら普通に思ってた相手に歩調合わせたりとか腕貸したり…あと古手川さん達からかばったりとか、斉藤さんの事で助けてあげたりとか、泣いてる時にハンカチ貸してあげたりとか、もうすっごぃトキメキ行為だし、好意持たれない方がおかしいのっ!」
善逸が思わず力説してしまった後に、宇髄がしごく冷静に
「まあ…色々問題が起こって心細いと、特に異性に惹かれやすいしな。
心理学的観点から言うと、いわゆる不安定な所、不安定な状態では恋愛感情を抱きやすいという吊り橋効果というやつだ」
と付け足す。
「ああ、そういう意味でも錆兎に執着するよね。
俺は同性だから別に恋愛感情とかはないけど、最初の事件の時とかはもう錆兎にくっついてれば安全だし少しでも一緒に行動したいとか思ってたもん。
不安な時は安心安全の勇者様だし」
と、それに善逸が大真面目に頷いた。
そこで
「別に友人としての距離感なら優先順位はあるが普通程度に守るのは構わないんだが……
なんというか…雰囲気と言うか距離感が……」
と、錆兎が心底困惑した顔をすると、
「まあ…お前はそういう面では巧く立ち回れるとは思えねえしな…
しかたないからとりあえず俺が預かってやるよ。こっち寄こしていいぞ」
と、最終的に宇髄がそう請け負ってその件についてはとりあえず落ち着いた。
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